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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
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英雄と英雄竜

「……っし!少し暗いのが不安だが、気合い入れて行くかっ!」


 頬を叩き、気合を入れて潜ろうとした時


『まって!』


 制止の声が心の中の英雄が、私の動きをピタリと止めさせた。

らしくない。


「な、何だ急に!驚いたぞ」


『ごめん、けどさ、ちゃんと確認しよ?ね!?』


「確認って言っても明かりがないんじゃなぁ」


 なんて言うと、半分怒り、もう半分は呆れの声で


『聖魔法は、光魔法のなんだった?』


「?完全上位互換……あっ」


『……ずっと黙って見てたけど、危なっかしすぎてついつい声が出たよ……』


 そうか、明かり程度簡単に作れるんだった。

未だに自分がそんなにもすごい魔法が使えるという自覚が持てない。


「聖魔法……あぁ……〈導きの光(サーチライト)〉とかか?」


『それはただの光源魔法の名前……ははっ、まぁサクラ、君らしいと言えばらしいね』


 光の玉が、私の意志通りに水の中を明るく照らす。

すると、あの淡い光の正体が、見えてきた。


 小さな光を釣竿の要領で垂らし、大きな口を開く巨大な紅い魚?


「っ!?」


『ほらー!見た方が良かったじゃん!』


 さすがに英雄か、助言には従った方がいいのかもな。


 そして、明るくなった六十九層の中に、下開きの扉を見つけた。

性格にはドアの持ち手だけ。


 なかなかえぐい仕掛けだ、相当この階層を作るのは楽しかっただろう。


「……スキル『神速』っ!」


 飛び上がり、天井を強く蹴って水の中に飛び込む。

そして、目掛けていたその先の扉まであと少しのところまで来たところで、大きな魚がこちらへ寄ってきた。


『目を瞑って!』


 その言葉に従い、目を閉じる。

目を瞑っていても十分に感じる強烈な光と、爆発音。


『光魔法の……なんだった?』


 目を開くと、そこはもう真っ暗で、濁っていた。

しかし激しい破壊跡が残っていた。


 なんて恐ろしいんだ聖魔法。

そう思いながら手探りで見つけた!

下向きの扉の取っ手を強く引いて、明るい光に目眩がしたが、そのまま飛び込む。


 ビシャっと、髪の毛に含んだ水、服に染み込んだ水が音を立てて私の体から落ちた。


 上を見上げればやはり浮いている。


 そして、前方を向きなおれば、いつからだろうか?1人の女性が立っていた。


 女である私から見ても、十分に美しい……いや、絶世の美女と言って差し支えないだろう。

そして、立ち姿や足腰、腕の辺りを見れば、ただの見間麗しいだけの女性でなく、確かに英雄と呼ばれるものがある。


 紫色の長い髪、オレンジ色の瞳、一般的な服を着ていて、防御力とかは対してなさそうなその格好だが、隙は無い。


「初めまして!あなたがカルカ……と……す」


 目を見開いてオレンジの目が私を捉えた時、違う人物の名を叫ぶ。


 おい!フレイ!守護者って言うのは私たちの攻略を見てるんじゃないのか!?


『見てる事見てない子もいるの!この子は見ないで付いた人に敬意を払いたいとか言ってたよ!』


 私にとって最高峰の無礼をしているわけたが、その顔に悪意などの類はなく、ただただ申し訳なさそうに右往左往させたあと


「ごめん!サクラだってね!いやー、てっきりカルカトスばっかりが迷宮に潜っていたから、カルカトスだと思ってたんだけどなぁ……おっかしいなぁ……まぁいいか、私は守護者!君は探求者!つまり私達は……戦う!」


「待ってくれ!」


 剣を地面に落とし、両手を広げ、前に向けて戦いを望まないことを伝える。

この人は、予想していた物の五十倍ぐらいいい人だ。


「……え、えぇ!?待つって何を!?お腹でも痛い!?それとも怪我が癒えてないとか!?」


 あの性格の悪いトラップやギミックの数々で勝手に悪い人だと思っていたが、予想よりもいい人すぎて確かに腹を壊しそうだ。


「いや、違う!私がここに来た理由は、守護者と戦うためではない、私『サクラ グランド』は、我が血族の名に近う、私は嘘を貴様につかない!」


「おぉ!?なになになに!?戦いに来たわけじゃないし、誇りある血族に誓ってまで私と話がしたいの?」


 愛らしい顔が、両手をブンブンさせて訳が分からないと慌てている。


「ええっと……地上のことは分からないんだよな?」


「『うん、そうだね』」


 おぉ、フレイまで、どうもありがとう


「実はだな、今戦争が起ころうとしていてな、それでカルカトスが魔族側についたり、あとは、ソウルドが壊滅したりして、何にしても大変な状況なんだ、つまり、私たちを助けて欲しいんだ」


「……戦争……か」


 少し悲しそうな顔をしたあと、顔を猫や犬のようにブルブルと振り


「いいよ!……って言いたいところなんだけどさ、私も守護者なの、挑戦者になんの取引もなくOKしてあげられるような優しい仕事じゃないの、英雄として、よりも先に守護者として、あなたに向き合わないといけないの」


 真面目な顔でそう語り始めた。


「なら、何をすれば、私を認めてくれる?」


「私は今から3つの壁をあなたの目の前に用意します、あなたはその壁を全て破って、私のところにおいで、私にタッチして?

そうしたら、あなたは私と戦う資格がある、同時に、認めるに値すると、私が確信できるの」


「……わかった、なら!早速始めよう!仲間を上に置いているんだ!時間はかけられん!」


「仲間思いのいい子だね、それじゃ、行こうか《秩序を壊す紫水晶(ブレイククリスタル)》」


 その言葉と共に、私の目の前に蒼い水晶の壁が出来上がった。


「なるほど、ここまで来たのがまぐれかどうか、確かめようって訳か」


 受けて立つ……名も知らぬ英雄よ!


『あー!!そっか、あの子自己紹介する前に試練与えてた!?』

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