絶体絶命
「……クソっ!」
『魔法が使えたら』今ほどそう思ったことは無い
『今魔法が使えたら』
『近距離から燃やしてしまえ!』
『水を放出して、とりあえず距離を』
『風の刃で距離を取って戦え!』
『その傷を白魔法で治すべきだ』
『目には目を、状態異常には黒魔法で状態異常を!』
「……ないものねだりはしても無駄だっ!」
霞みかけた視界に赤い炎が……エン?
いや違う……あれは松明か!
「そうだっ!」
剣でもう片方を弾き飛ばし、もう一度飛んでくるその瞬間……松明を剣で切り落とし、剣を体と狼の間に挟み込ませる。
空いた手で松明を掴み……目に押し込むっ!
「キャウンッ!!」
「……ッグあぁ!」
もう片方の頭も離れたが……その勢いで大きく出血してしまう……しまった……
「カル!血!血が!沢山出てるよ!?大丈夫なの!?」
「……多分アウト……だから早く!ぽ、ポーションをっ!」
剣をさやに収め、転がり、のたうち回る狼を目に押えながら、2本飲み干す……今のたうち回っている間に刺すことが出来たら……いや、先に無理に動いて死ぬのがオチだ。
そうして自分を納得させて……よし、傷はまぁまぁ塞がった。
「……もう、立ち上がっているか……」
息を荒くしながらこちらを睨みつける3つの視線。
「……もう、こっちも長くは持たないんでね!」
剣を構える……そして、同時に距離が詰まった。
「カル!」
後ろから俺を心配してか、エンが声をあげる……もう、振り返れない!
「うおぉっ!」
柄にもなく大声を上げ、気合を入れ、地面を強く打つ。
その勢いで、大きく上へ飛び……剣から手を離し宙に浮き上がる。
大きく飛び上がった俺を、狼は今、見えていない。
「喰らえっ!」
体をひねり……傷が開き、血が吹き出す……それももう構わない!
思いっきり、篭手を片方の頭に打ち込む。
そして、地面に刺した剣を引き抜き、もう片方の首を落とす……
「……よ、よし……やったぞぉ!」
ヘルハウンドの体は光の粒となり、消えていく。
篭手の着いた左手を大きく掲げ、勝利を宣言する。
「カル!早くポーション飲んで!」
「っと、そうだったね」
残りのポーションを2つ飲み、教会で残りの傷は治してもらう。
「だ、大丈夫ですか!?
怪我なら……『照る陽光、撫でるそよ風……ヒール』……ど、どうです!?」
「……うん、傷はいくつか治まったよ……ありがとう……助かっ……た……」
「カルカトスさん!?」
血の流しすぎだ……バタリと教会で倒れる。
【状態】
出血多量 達成感 気絶 無関心
【今日の成果】
第10階魔石(5つ) 第9階魔石(3つ) 第7階魔石(1つ)




