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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、戦いの中で生まれる者だ
321/499

王様殺し

「それじゃ、行ってきます、魔王様」


「僕も、行って参ります魔王様」


「うん、2人とも頑張ってね、本当に、無事で帰ってきてね」


「カル!頑張ってね!」


「あぁ!」


「カルカトス!私以外に負けちゃダメだよ!

ナルヴァーも!ミリアの分まで頑張らないと!」


「お前にも負ける気はねーよ」


「はい、もちろんです」


「2人とも、頑張ってください、期待しています」


 ディスターヴさんからも激励の言葉。


「はい、任せてください」


「必ずやご期待に添える結果を……!」



 人化の魔法を解いて、黒竜に戻る。

そして、身体を下げて、乗りやすくしてくれる。


「やっぱり英雄には竜がいてくれないとなー、あいつもナルヴァーぐらい話が分かればいいんだがな」


 そう言いながらバカドラの顔を思い浮かべる。


「しっかり掴まっていてくださいね!最高速度で向かいます!」


 計画はこうだ

1.高速飛行であっという間に寝るカートへひとっ飛び〜!

2.そのまま地面に大激突!

3.そこから俺とバトルするふり!

4.弾き飛ばしてもらって王様をころーす!

5.ナルヴァーに飛び乗って無事帰還!


 ナルヴァーは絵が下手なせいで緊張感の湧かない絵が付いていた。


「っうおぉお!?」


 予想の3倍ぐらい早い速度で飛んでいく。

こいつラジアンとかサクラよりも早いんじゃねぇか!?


 わずか数時間で海を越えた先の大地が見えた。

そして、予定通り、地面に大激突!


 爆音、地響き、木をメキメキと突き破りながら大地に降り立つ。

大きなものを引き摺った後が後ろにできている。


 既に発動しておいた固有スキルで、限界以上の動体視力にものを言わせて、ある程度攻撃を避けたあと、騎士たちが集まってきたところで、俺は尻尾で弾き飛ばされる。


「ここは任せたぞ」


「御意に」


 剣で受け止めながら腹部に伸びる竜の尾という鞭から命を守る。

その威力は予想以上で吸い込まれるように王城へ飛んでいき、上手く突っ込めた。


「なっ!何事だっ!?」


 王直属護衛兵とでも言おう人物が、俺の元へ警戒しながらやってくる。


 土煙が晴れて、俺だということを理解すると、ホッとした顔で


「あなたでしたか……」


 その次の言葉は『黒髪赤目とは紛らわしい』といった、硬っ苦しい差別的思考が俺を刺してきた。


「あぁ、ネルカートの街のハズレに黒竜がやってきて……応戦してたが俺も吹き飛ばされたって感じです」


 王は……いるな……


 今剣は抜いている。

限界速度で一気に首に剣を突き刺して護衛兵の息を止める。


 それに驚くよりも先に、俺は簡単な光魔法を放つ。

異次元の速度と、馬鹿げた威力。


 フレイのアレとは比べ物にならないほど弱いが、確かに辺りの敵を蹂躙した。


 王は何も口を開く暇さえなく、殺した。

あとは王子や王女、妃とかも殺して……兵士たちもまとめて殺しに行くとしようか


 血だらけの王座から走り出して下に行こうとした瞬間、視界の端で大地がトゲとなって竜を突き刺した。


「っ!?あれは……いや違う!?」


 最強の勇者、ピュー フォルテの魔法かと思ったが、あれは大人数で行った魔法攻撃だと、俺の感が知らせてくれる。


 もしかすると……これは……読まれていた?

情報がまたも筒抜け……誰かがこちら側と繋がっていたのか?


 だとすればまずい……ナルヴァーが危なすぎる。

しかもこのことなら……もしかするとあの王さえも影武者かもしれない。


 いや違う。

王を殺せという命令よりも、みな生きていて欲しいという魔王様のお願いの方が、俺にとっては何倍も大事だ!


「ナルヴァー……ちょっと耐えててくれよ!」


 固有スキルの音符が反撃を開始し始める。

こうなったらナルヴァーの足元を俺が一掃するしかないか!?


 足を限界までぐるぐる回して走れ!

地面が粉々になるほどに強く踏み込んで、街の中を爆走する。


「ナルヴァー!読まれていたかもしれん!今は一時、退散だ!」


 そう言いながら『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』で体をいくつも繋げて、巨大な圧倒的な質量で、押しつぶす。


 そして、俺がそこから取り外されれば煙になって消えていく。

これも長年の研究の成果と言えるかもしれない。


「煙幕に紛れて!逃げるぞ!ナルヴァー!」


「王は殺せましたか!?」


「一応な!でも多分影武者だと思う!」


 そして、今回の奇襲は一部の人間にしか知られていない。

じゃないと護衛兵があそこまで無防備に寄っては来ないはずだ。


「……っ!かしこまりました!乗ってください!」


「あぁ!ひとまず退散だ!」


 その時、地上を見下ろしたとき、様々な顔が見えた。

見覚えのある顔ぶれたち。


 優秀な冒険者たちの顔が、俺を見つめて、皆一様に『何故?』と言った顔をしていた。


 俺はその顔を直視出来ず、そして俺の逃走を彼らは追い討ちできなかった。


 おそらくは、俺と同じ理由でだろう。

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