〈ネルカートのダンジョン第7層〉中ボス
「……よし、7層到達」
各層が広いために、かなり時間を食われる。
「ポーションの残りは?」
「後4つ、かなり節約できているよ」
「……7層に……いく?」
「あぁ、行こう!」
事前にヴェーラさんには教えて貰っている中ボス。
「出来れば出会いたくないものだね」
「だね、1人だから……かなり危険だと思うよ」
「だよね……よし、ヴェーラさんと会えたら中ボスと戦おうか」
「それがいいと思うよ」
拝啓数分前の自分へ
俺は今どこにいると思う?
「グルル……ガウッ!」
「……嘘だろ……!」
「ど、どうする!?」
正解は……中ボスの目の前でした。
「……まだ、死にたくねぇなぁ!」
その中ボスの姿は……頭が2つある黒い狼。
めちゃくちゃに強くて大きい白い狼なら知っているが……こっちは命がかかっているスレスレの戦いなんだ……!
「ど、どうするの!?カル!」
「あれは……ヘルハウンドだと思う……頭ふたつある黒い狼……呪いを使う奴だ……片方の頭が呪術を、もう片方が狼としての近接戦をしてくる」
「倒し方は!?」
「首を落とす……こいつらは並の敵じゃない、心臓を突いても、ミスをすればそのまま噛まれて共倒れだ……」
「絶対にしくじれないって事だね」
「……まぁ、そういうことだ」
剣を抜き、真っ直ぐに構える。
逃げない……なんてかっこいいことは言えない、逃げ切れないから、戦うんだ。
狼の速度は、よく知っている……無論師匠程ではないだろうが……それでも人が勝てる足ではない。
「……来たよっ!」
一足飛びで、あっという間に距離を詰める狼。
「早いなっ!やっぱりっ!」
剣を振っても、身のこなしや、牙で受け止められる……
そうやって、攻めあぐねていると……右の頭に黒いモヤがかかり……
「アオーーーーン!!」
「っぐ!?」
大きく遠吠えをあげると同時に、体が動かなくなった……
いや、一瞬で硬直は収まったが……これは避けきれない……!
「くそっ!」
剣で片方を抑えるが……もう片方が横腹に食らいつく。
「っうぅ……ふーっ!ふーっ!」
やばいやばいやばいやばいやばい!
痛すぎる!言葉が出ねぇ!……血がやばい!
ダンジョン入って最大の重傷!……ポーションで治るか?
いやこの傷は無理か!?
というかいつまで食いついてんだよ!もう片方を押えながらじゃキツすぎる……!
そんな言葉が頭をよぎり、そして、過ぎ去っていく。
「あぐっ……ク……ソッ、何……かぁ!」
何か、作戦を考えろ!俺!




