悪夢となる
「悪夢?悪夢ねぇ!?」
そう叫びながら、グンと距離を詰めて走る。
凄い速度での踏み込み、距離がすぐになくなり、炎剣を振るう。
だが今の俺にはそんなもの効くわけが無い。
正確なその剣術が、本来の力の10分の1も操りきれないそのミランの剣技は、攻撃をたたき落とし、そのままに流れるように、さも当然のように敵の体に切り傷をつける。
「っぅ!?なんだよなんだよなんだよ!?当たらねぇし当てられる!?」
しかし焦りはなく、笑顔が顔から一切消えない。
「ははっ!お前のその治癒能力も!いずれ限界があるんだろ!?」
「忘れたか!?俺の固有スキルは!限界を!突破するんだ!」
その再生に限度なんて1つもない。
貫かれたその炎のトゲも、次第になれて身体の中に飲み込む。
「何時まで持つ!?」
剣で何度切りつけようとも、まるで意味をなしていないのか?
こいつはずっと笑って余裕そうだ。
剣を空中で離し、魔法を……魔術をひとつ唱える。
「『悪夢魔術』〈火竜人の腕〉」
赤い鱗に覆われた、バケモノじみた腕力、硬度とを兼ね備えた本物に限りなく近い火竜の腕。
この絶対防御はいつになったら解けるのかはわからんが……しかしそれでもひとつ分かる、あいつに入ったサクラの打撃は相当きいていた。
「その腕はっ!」
「正解だァ!!」
振り下ろす、力一杯振るうとそれは炎をそこから削り飛ばした。
「「はぁ!?」」
俺も驚くほどの効果、これは一体何事か!?
「っんだよそれ!?鎧が……っふ!?」
何が何だかわからんががら空きの胴体にハウルをぶち込む。
「っが……っくそ、まじでなんで俺の絶対防御が!?」
「それに関してはよくわからん、サクラの腕ってそんな力あるのかな?」
以前に一度強く繋がった時、六十層でのあの戦いの時、俺の人生で初めて竜を体内に取り込んだ。
その時のヒントが、今俺を助けてくれているのかも?
「だがなァ!?」
身体をぐんと曲げて俺の手からハウルを奪い取る。
「俺はまだ死んでねぇぜ!!?
お前ばっかボコボコにやりやがって!俺の火力は今フルボルテージを優に超えているぜ!?」
火力がぐんと上がった。
身体の周りの大気がぐにゃぐにゃに曲がり始める。
そして会場の地面が少し溶け始める。
「どんな火力だよ……!?」
「ヴォルカン!行くぜぇ!こっからは!《完全燃焼》だ!」
フロウの嵐を纏う物に近いその宣言とともに、火力がまた更に上がり始めた。
「一発で消し炭になればお前でも死ぬだろう!?カルカトス!」
「……あぁ、さすがにな……」
冷や汗、確かに俺は今焦っている。
あんなの当たれば誰でも死ぬだろ!?
……いや待て落ち着け、奴の火力をあえて白魔法を使ったバフで強化して、自爆させれば……いやそうなると俺も巻き込まれて負けるか?
下手するとサクラの方にも影響……サクラ?
さっきあいつは体から蒸気をあげていた。
おそらくファイロの熱に当てられたのもあるだろうが、同時に神速で体温が上がっているんじゃないか?
ひとつ、大きく息を吸う。
肺の中にまで暑っつい空気が入り込む。
「サクラ グランドォ!!」
サクラの方を向くと、あいつもあいつで結構苦戦して体がボロボロだが、ストックはもうない。
嵐纏の防御力に苦しめられているのだろう。
勇者ってのは守るのが得意みたいだな。
「っ!?なんた!?カルカトス アクナイト!?」
「お互いボロボロだなぁ!?」
背中を向けるとそこにポスっと背中が合わさる。
「お互い様だ、それに相手ももうボロボロだ
それに貴様その腕は私のものじゃないか?あの時ぱくったな?」
「人聞きの悪い……つーかこの腕やばいな、威力。
でもお互い決定打にかけている、違うか?」
多分助走つけて本気で突き刺しに行けばサクラは打ち破れるだろうが、それをしようにも助走をつけることを許さないだろう。
俺は俺で捨て身じゃないとあんな炎に飛び込めない。
「貴様その笑みは……まさかあれをやる気か?」
「あぁ!今剣聖に勝ちたいわけじゃない!!剣は確かに強いが!それよりももっと強いのがある!違うか!?」
そういうと、サクラはニヤリと笑う。
向こうは向こうでこちらを警戒しながら、会話をする。
「ファイロ、その身体の剣は?」
「ぶっ刺された!お前こそどうした!?風が弱々しいなぁ!?」
「相手が強いんです、あの腕、私の防御をゴソッと削ります」
「あぁたしかにな、さてどうする、向こうはなにか隠し球がありそうだ」
「無論、受けてより強い一撃で叩き伏せましょう!」
「乗った、いい作戦だ!」
「本気で行こう《桜爆花》成功させよう……『悪夢魔術』!」
「……わかっている、いきなり頼ることになるとはな!『桜魔法』」
「それチェリーマジックとかの方が良くね?」
「……今度それは決める!行くぞ!」
高密度の暴力的な魔力の塊。
2人で勝つことになりそうだ、一本の桜の木。
俺は見た事がないが、サクラが想像で補って近づいていく。
そのままの形を俺が形成させて、そしてその中に白魔法を混ぜこみ、お互いの力をどんどんと強くしながら攻撃を準備する。
「満開だ!今ここでこの戦いは終わらせる!!」
俺とサクラの膨大な魔力がそのまま降り注ぐ。
桜の花びらが地面に落ちた時、そこを中心に起きる大爆発。
サクラの父が使っていた魔法を頑張って再現したと言っていた。
ただの爆発魔法に俺たち2人の力を足し合わせる。
桜色の煙が晴れた時、誰も目の前に立ってはいなかった。
「っははっ!!勝ったぞ!カルカトス!」
「……っぐへぇ……」
「か、かるかとす!?」
固有スキルで全力を出しすぎた、スキルをきったらもう身体がピクリとも動かない。
「運んでくれ、相棒」
「……仕方の無いやつだ」
悪態は付きつつも嬉しそうに笑いながら俺に肩を貸して腕を掲げる。
勝者は俺達ふたりだ!




