ありがとうと忘れてた
「どうも」
何度も開いたこの協会の戸を開く。
「こんにちは、カルカトスさん」
「はい、こんにちは」
「今日は……解呪じゃないですね?怪我しましたか?」
「今日は……いつも助けて貰ってますので、ちょっとしたプレゼントを」
紙袋を渡す。
「ぷ、ぷれぜんと、ですか?」
「はい、どうぞ」
虚をつかれた様な顔をしている。
「……開けてもいいですか?」
「えぇ、どうぞ」
「……これは……ヘアクリップ……でしたっけ?
あぁ、今日はメモリーズの日でしたね!」
「えぇ、良かったら、付けてみてください」
「えぇ、是非」
髪をかきあげ、1つにくくる……うん、思った通り、とても似合っている。
「ど、どうでしょうか?似合ってますか?」
「えぇ、似合ってますよ」
「そうですか……ふふっ、ありがとうございます」
少し頬を赤く染め、微笑みながら礼を言ってくれる……苦労したかいがあったものだ。
「……な、なんでそんなにマジマジと見るんですか!?」
「いえ、綺麗だな……って思ったものですから」
「き、綺麗だなんて……お世辞はやめてください……」
「そんな事ないですよ、本心です」
「……貴方は人を扱うのが上手いですね」
頬を膨らませ、そう言う。
「そうですかね?」
「えぇ、仮面を付けて、髪も見えない……ミステリアスなのに、意外と紳士的なのがなんとも気を引かせますからね」
「そういうものなんですか……」
「まぁ、そういうものなんですよ」
仮面越しに額をツンとつつかれた。
「……ふふっ、本当に、ありがとうございますね」
「いえ、こちらこそいつもありがとうございます」
そのあと、少し雑談をして、教会を出る。
最近知ったのだが、教会と言うのはこの街にかなりある……色んな神様を信仰しているのが理由らしい。
だからか、冒険者も色々なところに別れるので、思ったよりも仕事は少ないらしい。
あの日、初めてあった日も、掃除が終わり、雲の流れを見ることしかやることが無かったらしい。
「喜んでもらえて良かったねー!」
『あぁ、エンも、ありがとうな』
「いいってことよっ!……ところで、アルトリート様やシルフィールさんへのプレゼントは?」
「忘れてたっ!!」
それが耳に届くと同時にノータイムで走り出していた。
その後、いい感じのネックレスとクシを見つけたので、それにしておいた……危ない危ない。
エンに感謝しなくては……
【宗教】
主に『陽光の神 コウラス』『夜の神 アズナス』『炎の神 ヒノコ』『水の神 ラミー』『自然の神 ウェルズ』そして『運命の神 シーアス』
これらが世界的に信仰されている神々だ。




