道の先【カルカトス】
「……それじゃ、寝ようか」
アイビーはサクラに任せて、明日のことも考えると、早めに寝ておきたい。
久しぶりに自室に上がって、布団の上で眠りにつく。
色々俺でも疲れていたらしく、意外と簡単に眠りに……
「カルカトス!起きてる!?」
ビクッと体が跳ねた。
突然、俺のギルドカードから声が響く。
緊迫した、ただならぬ様子の声の主は、ラジアン。
「ら、ラジアン?なんだよ、起きてるけど」
これは、魔王様にお願いしてできるようにしてもらった連絡方法。
ギルドカードの機能を応用したものらしく、緊急の場合は問答無用で声が相手に届く。
「それが、み、ミリアちゃん、見てない?」
ミリア?あの子がいないのか?
「いや、来てないけど?
って言うか俺今ヘルヴェティアいないよ、ネルカートにいる」
以前にみんなに家の場所とかは教えておいた家にいる。
「違うの、ヘルヴェティアにいないし、連絡しても応答しないの」
「誰が声掛けた?」
「ルロック、ルロック ラグランよ」
あの人は確か、人と心で会話できる固有スキルだったっけ?
俺の部下にも似たようなのがいるけど、あれは会話できないからなぁ。
「それで俺か、少し探そうか?」
「それが、置き手紙にカルカトス先輩のところに行くって書いてあって」
「……目見えないよね?それに前魔王様も奇襲を受けてたし……もしかしてさ」
「……うん、そうかもしれないって、話が上がってたんだ、もしカルカトスのところにいなかったら……どこに行っちゃったのかな……」
お互い言葉に詰まっていると、第三者の声が聞こえる。
声の主はラジアンの方にいる。
「カルカトス、聞こえますか」
「あ、魔王ちゃん」
ラジアンの反応通り、魔王様の声。
「はい、聞こえますよ」
「あなたは明日ネルカートを離れるそうですね、娯楽島に行くそうですね。
でしたらあなたにではなく、あなたのところにいるアイビーにお願いします」
なるほど、確かにそれはいいかもしれない。
「分かりました、それじゃ、アイビーに頼んでおきます」
「えぇ、頼みました、彼女がいなくなるとかなり困りますので」
それじゃ、明日の朝にアイビーに行っておこう。
明日やろう、明日明日。
眠りについて、定刻通りに目を覚まし、下に降りると、アイビーが。
サクラはトイレに行っているらしいから、昨晩の話を軽く済ませ、頼んだと伝える。
「任せてください、と言っても……見つけられるかなぁ」
まぁ、俺の読みだとここら辺にいないだろうな、生きてるといいんだけど……
「おぉ、カルカトス、貴様も起きたか」
「……っふ……ぶっははっ!?おまっ!?おまえ……なんだその髪の毛……あーはっははっ、腹いて……」
すげぇ、ソファーで寝てたからか知らんが芸術的な寝癖がついてる……!
「わ、笑うなぁ!洗面所を借りるぞ」
そう言ってズカズカと歩いていくがドアの縁に炎のように立ち上った髪の毛が当たってまた『ピンっ』と跳ねた。
「……っふふ………おい、サクラ!」
「あぁ!?」
「……早く顔洗えよ、飯作るからよ」
そう言うと、目を丸くして、ニカッと笑い
「あぁ、頼んだ」
朝食を作り、夕方に向けて物品の調整、シアに会いに行って、そして2人で家の裏へ行った。
「久しぶりだな、お前ら」
仲間の元へ、逢いに行く。
あいにくまだまだそちらへ行く気はございませんが、どーぞまぁ、見ていてくださいな。
「デクター、私はお前を認めていた。
お前たちのリーダーは、私がちゃんと面倒を見てやる」
俺はお前の下なのネ
「ナプラ、君も強かったのになぁ、あいつが強すぎたせいだ、サクラは、頑張ってるよ」
夕方に、蒼然の頃に、船が着く。
豪華客船、そう言って差し支えないその巨大な船は、船着き場に着く。
その巨大な船は、沢山の小さな小舟を引き連れて、現れた。
軽く説明されたその話だと、巨大な船の方は、食事だったりパーティーの会場にしたり、そして、小舟の方は1組につき1隻与えられ、各々過ごすらしい。
楽しみだ、この船から次に降りるのは、娯楽島、名声を、この手に。
「カルカトス、ぼさっとするな、さっさとこーい」
「……あ、あぁ!今行く!」
呆然と眺めていた船から目を逸らし、小走りにサクラに追いつく。
「ここが私たちの使う船か」
「あぁ、真ん中の船行くか?」
「まぁ、見るぐらいにしようか。
たしかここにはルームサービスもあるだろう?
それを使えばいちいち行く必要もない。
私は立ち食いだとか、パーティーだとかの雰囲気が性にあわない」
「確かに、合わなさそうだ」
なんて話をしていると、船が動き、体が揺れる。
「お、動いたぞ!」
「だな、あとはゆっくり揺られるだけだ」
気の向くまま、波のゆくままに。




