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現代最強ハルマ バルバ

「ハルマ バルバァ!!」


「おうおう!?サクラいきなり叫ぶなぁ!?」


 それはさすがに俺も想定外だぞ!?

訓練所の前でいきなり叫び出すサクラを抑え、扉がゆっくりと開く。


 男が出てきた。

短く切られた青の髪にスッとした同じく青の鋭い瞳。

若い男であるが、その面持ちと腰に剣を差す上等な装飾の施された剣から出世頭とでも言おうか、伸び盛りの男だな。


「いらっしゃいませ、ようこそ『お待ちしておりました』剣聖様はまだ来ておりません、どうぞ中でお待ちくださいませ」


「っはい?」


 走る違和感。


「なんだカルカトス、貴様準備がやはりいいでは無いか、待たせる訳にもいかん、ゆくぞ」


 いや待て、お待ちしておりました?

待たせるも何も、俺は『何も言っていない』


 突然の押しかけに過ぎない。


 強いて言うなら、以前の生誕祭の後『僕になにか手伝うことがあればいつでも言ってくれ、君は僕のお気に入りたんだから』と言っていただけだ。


「私も以前に話されたぞ『助けがいるなら言ってくれ』と言ったことを言っていたな?貴様もその話しがあったわけか」


 そう言ってこちらに耳打ちをする。

確かに大きな声でそういうのは少しはばかられる雰囲気だ。


「「「「セイッ!ハッ!ハアッ!」」」」


 気合を入れて、皆同じ掛け声でひとつの乱れもなく方にハマった動きを繰り返す。


「おふたりはお客様です、そうお気になさらず」


 そう言ってくれているが、俺としては客になった覚えは1ミリたりともない。


「そうだ、剣聖様はいつも昼頃からこちらにやってきます。

どうです?それまでこちらの訓練場を回ってみるのは?」


 そう言ってこちらに提案してくれる。


「細かいことを聞くようで申し訳ないけど、お昼っていつ?」


「はい、おおよそ13〜14時までにはいらっしゃられます」


「それまで何してるんだ……?」


 サクラがそう呟いたのを聞き逃さず


「基本はご自宅にいらっしゃいます。

休日は家庭菜園のトマトを様子見たり、料理を楽しむお方ですよ」


「「へぇ……」」


 なんか意外だな。


「そういった庶民的な視線をもちあわせていらっしゃるおかげで、剣聖様の元にお仕えされるメイドや執事の方はのびのびとしたいい職場だと評されていらっしゃったのを記憶しています」


「なるほど……うんありがとう、現在時刻は……12時か……うん、ならお言葉に甘えて回らせていただく、サクラは?」


「構わん!もとよりこの大陸随一と評されるこの国の兵は『雑兵』と評するものは愚者でもいないと言われるほどの手練の集まりと聞く。

この目でしかと試させてもおうか」


 そういうと、ニコリと笑い


「かしこまりました、ではこちらへどうぞ」


 彼は笑う時目が細くなるんだな。

歩き回って、その騎士たちの動きを見つめる。


 体を鍛えるものや、木刀での模擬戦に勤しむものなど。

歩き回る際に剣聖が元は平民の出であることを聞いたりして、驚いたりもした。


「その時にこいつが穴開けちまって、あそこの水が出なくなっちまったんですよ!」


 昼休憩に、俺達も混ぜてもらい、まだ食べていなかった昼食をとりながら、騎士の人たちと雑談する。


「へぇ!?え?じゃああそこ壊れたまんま?」


「いやー、その後こいつ必死で勉強して直してきたんですよ」


「結構難しくて難儀しました……!」


「はははっ!なかなかに面白い責任の取り方だな、金を支払い修理屋に頼むのが定石であるというのに」


 確かにそうだ、そう思いまた笑う。

意外とあの環境あってか堅苦しいイメージだったが、みな面白い人達だ。


 なんて話をしたりして回っていると、俺とサクラが同時に足を止めた。


「……どうされました?」


「おいカルカトス……!!」


「……この圧は……」


 急に、蛇に睨まれたカエルのように動けなくなってしまった。


「!これは剣聖様、こんにちは……あれ?ちょっといつもと違いますか?」


「「っ!」」


 背後に迫る足音、そして、笑みを向ける男の視線の先には、いるんだろう、剣聖が。


「やぁこんにちは……なに、今日は少し嬉しくてね、ついついコンディションが勝手に仕上がってしまったんだ……待たせて悪かったね、カルカトスくん、サクラさん」


 肩に手を置かれた途端に、身体の自由が帰ってきた。

なにかの魔法やスキルの類か……?


 同時にバッと振り返り、思わず臨戦態勢。

くすんだ栗色の髪と、宝石のような赤い瞳。


 ニコニコとした親しみやすいその笑顔と、兼ね備えた美貌が心を解くことを強制する。


「やっぱり来たか、あの島の話を聞いた時、君たちが来ると思ったよ、前に聞いたんだ、チケットを持っているって。

それで、君が組むならきっとサクラさんしかいないだろうってね。

そして、きっと僕に指南を受けに来てくれるって事も、わかってたさ」


 先見の明に優れている……では済まない気がするぞ?

何かしらの要因が関係していると考えようか。


「率直に言います。

俺達に戦いを教えてください、2人で戦う、その相手にハルマ バルバ……剣聖以上の適任者はいません」


「確かに、僕はいつもこの国にいるからね、どこにいるか分からないフォルテさん達ミスリル冒険者よりもよっぽど会いやすい」


 いや、確かにそれもあるが、最強の生物を議論する時、いつも名の上がるこの男。


 やれ『竜を殺した』やれ『海外で名を挙げた』やれ『人生無敗』それらの要因が、彼を最強だと言わしめる。


「剣聖よ……私からもお願いする。私たちと戦ってくれ」


「お客様の頼みは聞かなくちゃね、それにコンディションが整っているんだ……直ぐにやろう、直すのは早い方がいい、4日以内に君たちを鍛えあげよう」


 そう言って、ついてこいと背中で語りながら訓練場へ足を運ぶ

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