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開会式の話

「……なーんにもなかったですね」


 そう言って肩を落とすアイビー。

マントが湿っていることもあって重そうだ。


「そう悲観するなよ、何も無かったということがわかったんだ……あえて言うなら『何も無いがあった』それでいいだろう」


 そう言っているが、どこか納得いかない様子だ。

まだ、この階層までのワープポイントは開通していない。


 というか、以前に話に聞いたが、恐らくここに通すことはできないだろうとの事だ。


 階段が地上に見当たらない以上、おそらく水中からしか行けないが、なんでもその魔法具は水に弱いらしい。


 迷宮の中の水にも弱いことは判明していることから、おそらくこの61〜からはいちいちこの足で上がらなくては行けない。


 帰りの分の体力や、その道を覚えておかないと、罪悪餓死とかも有り得る。


 非常に恐ろしい話だが、ここに来る人達がまぁいない。


 大体が俺たちか、カノさんか、アーガンさん達だけだ。

今や迷宮探索の三強に数えられるこの三パーティーはいずれも強さは折り紙付き、故にそこまで心配はいらないだろう。


 上にあがり、ギルドへ向かうと、ギルシュさんから呼び出しがあった。


「やぁ、済まないね急に呼び出して」


 少しご機嫌そうな顔だ、笑みがこぼれている。


「嬉しそうですね、なんですか?給料上がりました?」


「それもいいけどね、娯楽島、ついに完成したんだってさ」


 娯楽島……そういえば、昔にその招待券を貰った気がするな。


「あぁ、あの時貰ったあれですか?

凄いですね、もうできたんですか?」


 そういうとよりいっそう嬉しそうな顔をして


「あぁ、魔族との合同作業が幸をなして、予定よりも何倍も早く作り上げることに成功したらしい。

このプロジェクトが成功した暁には、我々と魔族の距離が縮まるといいんだがなぁ」


 かなりの平和主義者のギルシュさんは、いつぞやの貴族暗殺事件の際は肝を冷やしたと後日俺に明かしてくれていた。


 確かあの時は事情聴取のアリバイ整理のためにギルドに騎士の人達が来て、その後日に俺に教えてくれていたな。


 しかし、数日前に聞かされた魔王様への奇襲の話を聞き、少しばかり警戒を強めようと思い、最近迷宮へ潜る頻度を気持ち抑えている。


 それにしても、娯楽島、できたのか。


「娯楽島って名前なんですか?」


 ふとアイビーが声をかけた。

その質問に、ギルシュさんは向き直って


「あぁ、実は娯楽島って言うのは企画段階の名前で、今は名前が決まってね、名を『トライシオン島』」


 意味は分からないがきっといい意味だろう。


「トライシオン島ですか」


 復唱して、頭の中に叩き込む。


「あぁ、そしてだね、今日君をここへ呼んだ理由は、そのトライシオン島で行われる最初の娯楽、それに参加しないか?」


 最初の娯楽ゥ?


「なんですかそれ?」


「簡単な話だ、2対2のトーナメント戦。

参加条件は、君が持っているチケット、あと一人好き人を選んで優勝をめざせ!って感じ」


「へえ!……面白そうですね。

どうする?アイビー、一緒にでる?」


 そう聞くと、即答するかと思っていたが、意外にも悩んで、結果は


「いいえ、大丈夫です、私は少し観客席から見ておこうと思います」


 更に意外なことに参加はしないそうだ。


「お、そうか……なら、ヤツでも誘おうか?」


 ヤツとはラジアンのこと。

しかしここで関係を露呈させるのは不味いかと考えて、頭の中でバツ印を書き込む。


 となれば……まぁ、考えるのはあとにしよう。


「参加、俺もしたいです、是非やらせてください」


「あぁわかった。

当日参加制だからその日まで好きにしておくといいよ。

始まるのは7日後……まぁ、そのチケットがあれば乗れる宿泊船に乗る時間も含めてあと『5日』だ」


「分かりました、どこから船って乗れますか?」


「それはね……あぁ、まぁこのパンフレットを渡すから、それを読んでみてくれるといい」


 そう言って椅子を立ち、机の棚から1枚パンフレットを取り出して手渡してくれる。


「ありがとうございます」


「あぁ、質問はあるかい?」


「いえ、ないですありがとうございます」


「あぁ、ゆっくりとするといい。

僕も娯楽島に行くつもりだからね」


「さようなら!」


 元気なアイビーはそう言って俺の後ろを着いてくる。



 そうかぁ、初めの娯楽か……


「2対2……トーナメント……上手く戦えるかな」


 一体誰が俺と戦うのか……そして、どんな敵がまちかまえているのか。


 少し……かなり楽しみだ。


 ソファーに腰掛けて、ニヤリと笑った。


『ドンドンッ!』と、扉の音が鳴って肩が跳ねる。


 力強く叩く……怒りと言うよりも焦りを感じた。

何事かと少し急かされながらも玄関に向かう。


 アイビーが何事かと後ろから様子を伺っている。


 扉に手をかけ、開く

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