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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
お皿が割れるみたいな?
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VS魔王【ザントリル】

「……さて…………やろうか」


 両掌を前に向け、ロックオン……


「あなたたちの目的はなんなんですか……!」


 あちらも拳を向けて、ロックオン。


「ただの………ほんのお遊びさ」


 踏み込む。距離をゼロにする。

相手は徒手空拳、それも魔王が使う体術。

近接戦闘のスペシャリスト。

魔界からの一子相伝的な未知の武術かもしれない。


 そんな風に不確定要素しかない。

故に『僕は距離を詰める』なぜなら『魔法使いだから』


「っな!?」


 ほら、驚いた……所詮魔王といえども幼子、場数の差が勝敗をわけ……


「……魔王よ……貴様……!!」


 明らかに最高速度で距離を詰めて頭を蹴り飛ばした……はずなのに


「……驚いた『フリ』ですよ」


 冷たい笑みを浮かべて、刃片手にこちらを見すえる。


 足が『切り飛ばされた』ブラフをはられていた……?


 この状況を打破するには、仲間だと勘違いしているラグランを起こして、増援を呼ぶこと。

であるにもかかわらず、その最前の一手の架け橋となるラグランを救うために使ったのは『己の四肢』


 奇襲への咄嗟の反応は『魔法』

そして、ひたすら包み隠していたその剣。

何よりも、オートガードの僕の魔法を貫いてきたという事実。


「幼くとも、魔王は魔王…………か」


「魔界を背負っていますからね」


 そう言った瞬間、爆撃音と砂埃が立ち上る。

アルグロウドが突っ込んできた。

そして、赤い鮮血が舞い上がる。


「……っが……え?あぁ……!?」


「……カスりましたね、そして、ペルソナを前に私を狙う余裕があるとは……!」


 砂埃が止むと、そこには首が半分ちぎれ掛けのアルグロウド、そして、そんな重傷に対し、魔王の受けた傷は肩のあたりの肉が少し食われた程度……


「アルグロウド……下がっていろ」


 素直に下がり、距離を離して飛び立つ。


「魔王様、我はあいつを追います」


 ペルソナが去っていく。

ラグランを連れて、戦線離脱も兼ねているらしく、仮面に乗せて静かに運ぼうとしている。


 そして、意識がないが、意思疎通の可能らしいラグランは


『ペルソナ様に運ばれます。

それで戦線離脱と致します、アルグロウド様の傷を癒すのが最優先です』


 いい案だ、ペルソナの立場は変わらず、むしろラグランを助けたファインプレーヤー。

それがバレないように、魔王は張り切るだろうな。


「魔王よ………足を切り飛ばした程度で、僕に勝ったとでも?」


「……ただの人間相手なら、それで良かったんですけどね」


 アルグロウドが追撃を受けないように、魔法でトラップをしかけまくり、そのおかげで今は優位に立てている。


 砂埃の煙幕が、上手く作用した訳だ。

そして、僕は治癒の魔法で足をくっつける。


「そう、ただの人間なら………な」


 フードを脱ぎ、使い魔に渡す。


「如何様にして倒して見せようか…………魔王」


「私があなたたちに負けるとでも?」


 いや、これは僕との一騎打ちだ。

ほかの全員は……入れない。


 片手を真っ直ぐ構え、魔法を『発動』する。

トラップの一斉解放。


 本来なら、1つでも引っかかるとドミノ倒しのように連鎖が続き、手が付けられない、それを、一気にだ。


 炎、水、風、光も闇も、自然も土も、雷も、氷も、その魔法の罠が、襲いかかる。


「……あなた『賢者』か『魔女』ではありませんか?」


 しかし、平然とした声が、質問をなげかけてくる。


「魔女だ……男ではあるが、その手の質問は聞きあきた」


「なるほど……通りで魔王のバリアを抜けれるわけです」


 魔王のバリア?なんだそれは?ダサい名前だ、略称が総称の類だろうか?


……いや、いつぞやの書物で見たことがある……


「『魔王には最高職しか傷を与えられない』か?」


 そういうと、流石に驚いた顔で目を見開く。


「ご存知でしたか?勉強熱心なのですね」


「これも夢のためだ」


 両手を真っ直ぐに向けて、僕は呟く。


「『固有スキル』【杞憂説(ノシーボ)】」


 僕の、固有スキル。


「……もう、使ってきますか」


「……『五月蝿い』『そこを動くな』」


 声を発すると、魔王の喉は震えない。足は動かない。


「『喰らえ』僕の持つ()()()()〈白夜一閃〉」


 黒い線が、世界を上と下で分断する。

栓を抜いた風呂のように、そこに吸い込まれていく。

そこから、最高圧縮された僕の黒魔()が、敵を裂く。


「……これは……撤退ですね」


「っな!?」


 ふ、普通に話している……固有スキルを………弾いてきたか……!?


 そして『撤退』の言葉通り、どこかへ消えた……?

これは……点と点での移動だ。


「……逃げられたな………不味いな」


 そう呟くと、それを耳に入れたラヴハートがやってきて


「何がですか?魔王を退けるほどの力を単体で有しているだなんて、心強いですよ」


「こちら側の……主に僕とラヴハートの能力がただただ漏洩しただけ。

それに対して、向こうはほんの少しの剣術……いや、無造作に剣を振ったのと、闇魔法の概要、それだけだ。

やつの『根本的な強さ』それは、魔王の勝負感……バトルセンスが飛び抜けて高いこと、それしかわからなかった。

……情報だけ抜き取られ………僕は何も得られなかった」


 完敗だ……流石にまだ魔王に勝てるほどじゃないな。

しかしそれは今だけだ。

弱者は弱者なりに創意工夫で敵を乗り越える。


 次は完勝する

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