便利なダンジョン
「5層も突破……いいペースだ」
ダンジョンの階段付近にギルドカードを当てる……少し光り、『ネルカートのダンジョン 進行度6層』と書き込まれた。
この階段には『記録石』と呼ばれる石が存在する。
冒険者が仕事を受けた時に、ギルドカードを紙に押し付けると印が着く、それと同じような仕組みだ。
この記録石は現在踏破された『25層』までの階段に存在する。
現在、まだまだ不明な点が多いこのダンジョン、ある程度の階層を踏破したことを上に伝えると、ちょっとしたご褒美が貰えたりする。
「……このシステム、便利だよねぇー」
『そうだね、これのおかげで、色んな人が俺を認めてくれたりもするしね』
「そうだね、頑張れ!」
「あぁ、頑張るよ」
そういえばギルドカードで思い出した、ステータスに新しい項目が追加された。
それは『魔力』という項目だ。
MPに似ているが、少し違う。
MPは容量のようなもので、魔力は少ないMPでどれだけ強い魔法を使えるか……そんな感じのものだ。
ざっくり言うと魔法の威力を示すものだ。
「……魔力は192あるんだけどな……如何せん魔法が使えん!」
「そう嘆かない……カルが頑張ってるのは私たちが知ってるから、いつか報われるよ」
「……そうだな、嘆いても結果は変わらない……よし、ササッと今日の宿代を稼ごう!」
最近はお金に余裕ができてきたものだ……前までその日暮らしだった俺には感涙ものだ。
「日頃からお世話になっているシアさんに、なにかプレゼントしよっかな?」
「おぉー!いい考えだと思うよ!カル!ナーイス!」
あの日以来にも、しょっちゅう罠にかかり困ったことにお世話になっている。
最近ではすっかり常連だ……彼女相手でなければとっくに破産していたかもしれない……怖っ!
と言っても……未だに彼女は金を求めない理由を教えてはくれない……まぁ、無理に聞くことも無い、まだであって数日なんだから。
「何にしよっかな……同じ女の子のエン!何がいいかな?」
「……うーん、シアさん、髪の毛長いし、髪止めとか?」
「なーるほど……いい案だ!ありがとう!」
「どういたしまして……にしても最近は動きがどんどん良くなるねぇ」
「あぁ!最近なら簡単な罠なら見抜けるし、かかっても避けたり弾けたりするものだよ……いやぁ、落ち着いて対応する、それができるようになってよかったよかった」
「って言ってもよくかかってるよねー」
「戦闘終わった直後にくるの、どうかと思う」
「……あれは災難だったね」
『クライバット』という、これまた毒のあるコウモリと戦っている事だった。
「このコウモリは……あれだ!噛まれたら涙腺崩壊する奴だ!」
「涙が流れるんだっけ?そんなに痛いの?」
「いや、毒の影響で神経が狂って涙が滝のように流れるんだよね
後は幻覚とかを見せる毒も使えるね」
なんて話をしながら戦っていると、後ろからそのコウモリに噛まれてしまった。
「2匹目っ!?まずいっ!」
なんて焦っていると……ほらきた!涙!
「……わわっ!?本当に泣いてる!」
「ササッと斬ってやる!」
「そっちじゃない!左!幻覚受けてる!」
「エン!伏せて!」
「はーい!」
コウモリの声の聞こえる高さに大きく剣を凪ぐ……手応え2つ。
「よーし!大丈夫?エン!」
「カルこそ……大丈夫?」
「あぁ!大丈ぶぅえ!?」
また、罠にかかってしまった……今思えばあの時の俺はかなり焦っていた。
「うわぁ!?わな!?」
「か、カル!?」
また、大きく転ぶ……ガチャンと嫌な音……
「いてっ!?」
この感じ……鎖!?ってか体重っ!?左腕が動かしにくいし!
「落ち着いてっ!」
ガツンと頭を叩かれた……が、その痛みで少し落ち着きがもどってきた。
「……涙、まだ出るんだけど……」
「……解毒剤、持ってきてなかったっけ?」
「……あ」
「……用意周到なのに変なところでミスするね」
「念の為2つ持ってきてたのに……」
そのあとは解毒剤を飲んで教会に行ったものだ




