凄い、変な人
「……茶を持ってきた………」
そう言いながら、私が家事を終え、風呂から上がると、彼は私にお茶を……カタバミティーを持ってきます。
「……あ、どうもありがとうございます」
1口いただく……うーん、やはりこの味だ……どうやってこんなに美味しく入れられるのか……?
「……手紙がかけたのなら、僕に渡すといい……手紙を送る方法など、山ほどある」
そう言われたので手紙を渡すと
彼にしては珍しく指笛をし、1羽の鴉を呼びました。
瓶に詰めた私の手紙をその鴉が足で掴むと、飛び立って行った。
「あ、あの鴉は?」
「……僕のペット………使い魔の一体」
今ペットって言いましたよね?
「……目的地へ、確実に届けてくれるさ」
だといいですけど……あんな使い魔?までいるなんて、凄い人だ。
「……作戦会議をしようか……ラヴハート」
そう言って椅子に座り、もう夕方なのに薄暗い部屋に蝋燭の灯りを灯す。
「……はい」
私も少し緊張してしまう。
「……まずは………君は何が出来る?」
この質問は、答えられる。
「私は主に固有スキルで『…………………』ことが出来ます」
そういうと、やはり無表情のままに
「そうか……他は?」
と言葉を続けた。
アル様にも、誰にも話していない私の秘密をそうもあっさり……
「あとは『…………』が可能です」
「面白い………いや、変な武器を………扱うんだな」
「……それは自覚しています」
「………それで、どうやって………軍団を絶滅させるのだ?」
「そこで、手伝っていただきたいのです」
「……ほう?」
何を?と言った感じだ。
「まずは……私の固有スキルを喰らってみてください、これで死んだらあなたはそこまでの男ということになります……」
そういうと
「わかった、やってみせろ」
へ?い、いいのだろうか……本当に死ぬ気がするけど……
「行きますよ……?『……』」
発動する……同時に彼の目が私から離れる。
「雨のような矢玉に屈しなさい……!」
そう言って、完全なものとした瞬間……
「……なるほど、なかなかどうしてこれは厄介」
数秒で私とまた視線を合わせる。
……1秒……いや、2秒で私の固有スキルを破った……!?
「……こ、これは……ええっと……」
「……安心しろ………ラヴハート、君の固有スキルは強い………」
そういうが……たった今自信が消え失せたのです……
『当たれば勝ち確定』そんな最強なはずなのに。
当たったはずなのに……まるで意味が無い。
「……なるほど、例えばこれを魔法で僕に飛ばさせて確実に当てたい……と言ったところか?」
反省会を開いていると、それを割いて私の心を見透かしてきた。
「……は、はい……ですがそんなことは可能なのでしょうか?」
そういうと、彼はこくりと頷き
「朝飯前だ……無論可能だ」
ダメ元……と言うよりもマチア様には『無理だ』と言われたことをこの男は安安とこなすのか……?
「マチアには無理だろう………が、僕にはできる」
「な、何故でしょう?」
「……魔女だから」
ま、魔女?
男なのに……魔女?
「……男でも、僕は確かに魔女なんだよ………」
へ、変な人だな……そう思った。
「……なら………当日は………2人で行こう……そして………早く終われば仮面の男………ペルソナの手伝いに行こう」
「はい……あの」
「?…………どうした?」
ふと、子供のような疑問が湧いた。
「……『六罪』の中で、順位をつけるとするなら……誰が強いのでしょうか?」
「……ルロック ラグラン。
あやつこそが最弱であるはず………だが、1番は……僕か……ペルソナ」
「アルグロウド様は?」
ドラゴン、1番強い種族のはず。
「1番強い種だからか?」
こくりと頷き返す。
「……その理論で………1位を決定するなら……ペルソナが1番だ」
「魔族がですか?」
「………」
無言を回答とした。
そして、手元のカタバミをかじる。
りんごといい、カタバミといい、酸っぱい物が好きなのだろうか?
しかし、このザン様がそういうのなら、恐らく間違いないのだろう。
「……私は果たして、どれほどの強さを持っているのでしょうか?」
そういうと彼は意外に考え込んで
「………わからんな………皆、未知数である………それ故に強く………そして何を隠し持っているかわからん」
なるほど……彼も今の今まで私の固有スキルを知らなかったように……か。
「故に、分からない……私は、今の皆さんと出会えて……少し、喜んでいる私が、います」
鼻で笑われると思ったが、彼は
「……僕もだ」
そう言ってくれた。
「なら、笑ってくださいよ」
そういうも
「君も笑っていないじゃないか」
そう言われてしまった。
凄い人なのは重々承知ではありますが、それ故か変な人でもあります。




