黒魔法の極地
「……まずは自己紹介………かな?………『黒の魔女』『アングラ ザントリル リーパー』………年齢………204歳……多分………最高齢」
「に、にひゃく!?」
「……茶会は……193年ぶりと………言ったはず………193年前……僕は……11歳……体の年齢は………18、肉体の………強い頃」
「……そんなこと言ってましたね………それで、こんな森で何を教えてくれるんですか?」
そういうと、リンゴを齧り、飲み込んだ後、細く長い指を3本立てて言う。
「1つ、反射的な魔法の使用
2つ、黒魔法……まぁ、黒魔法について
3つ、魔力感知の制度」
「……な、なるほど」
本当に基礎の基礎から黒魔法を学ぶのはこれが初めてだ。
「……1からいこう、まずは全力で…………僕を……殴れ」
「へ?」
「……いいから……棒で…………叩くもいい……掌でわかる………棒術………使えるね」
ば、バレてる……少しの会話だけで相手の手を分かるのか……あの時も黒魔法使いだと一目でバレた……虚無の魔女の席に座っていたのにだ。
「い、行きますよ!?」
この、細い体は女性としては羨ましいけど、叩くと折れそうだ。
「……来いと………言っている」
ブンッと風を斬る音、首を狙った、へし折るほどの勢いの一撃。
それは、ペチンとだけ音が鳴っただけだった。
そして、私の棒が……地面に、杖が地面に落ちた。
私は膝をつき、動けなくなる。
「か………っか……な、何を……!?」
「……これが……『反射的な魔法の使用』……だ」
「……っはぁ……あ、身体が……」
楽になってきた……
「……いいか?………まず、まず杖をふりかぶる………その瞬間、弱体化の魔法を……僕はかけた……無詠唱。
肌に杖が当たる………魔法を伝道させて、弱体化をさらに強める……そして、膝をつかせた」
「す、凄い……無詠唱であそこまでの弱体化魔法」
そう感心していると指を刺され、言葉を続ける
「咄嗟に〈抵抗〉しろ、常に糸を張り巡らせろ、それで初めて……三流だ」
「さ、三流……」
「……もっとも、僕は1人でも戦えるように、こんな戦い方だ……この方法を………極めれば………見ておくといい」
そう言ってクルッと振り返り、木の前に立つ。
「今から僕は………一撃でこの大木をへし折り、そして、こちら側に倒れてくる……木を………流す」
「……へ?」
不可能だと言えないほどにこのリーパーという男の力は本物だ。
軽く拳を握り、木に向けてコツンと当てる。
その瞬間、木に大穴が開き、こちら側へ倒れてくる。
「リーパーさん!?こっちに倒れてっ!?」
「……予測通り……」
パンっと掌で弾く。
木がまるで玉を弾いたように吹き飛ぶ。
口が自然と開き、唖然となる。
「な、何を……!?」
「……衝撃の瞬間に魔力をぶつける……虚空魔法も同じ原理……僕は弱体化の魔法で木を脆くしてある」
「……流石の私でも分かります……それだけじゃないですよね?」
そういうと、言い当てて見せたにもかかわらず、無表情のままでこちらを見て
「そうだな、嘘をついた…………正確には……『自分に黒魔法をかけた』」
「………はぁ!?」
こ、この男は何を言っているんですか!?
白魔法と勘違いでもしているのですか!?
「……なんだい………その顔は………黒魔法も………使いようさ………体感したらいい……〈軽身化〉……〈重身化〉……どうだい?」
たんたんと告げられるその魔法名は、相手の身体を軽くさせて『受け』を成立させなくさせるデバフ魔法。
もう片方は相手の身体を重くさせ、動きを鈍くさせるデバフ魔法。
しかし、私の体にかけられているのは……なんだこれは……身体が軽いけど……手足は非常に重い……
「こ、これって……!?」
「……局所的な黒魔法……デバフも……裏がえればバフになる………殴る瞬間まで身体は軽く、故に早く
足元は常に重く、踏み込みは故に深く
当たる瞬間、拳は何よりも重く、故に破壊力」
そう説明されても……その局所的な黒魔法ができる時点でおかしいのだ。
完全に極限の域に達している。
「い、一体どうやってこんな事を……!?」
「おすすめしない………僕は………ただただ貪欲だっただけ」
「?ど、どういう意味ですか?」
「……時期に………分かる。
特訓法もな………さぁ、立派な魔女に………育ててあげよう」
恐ろしいが………とてつもなく頼りになる。




