表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
お皿が割れるみたいな?
280/499

魔女の茶会【グエル】

「……カルカトスさん、本当にありがとうございます」


「いいって、あなたが持ってる方がきっとあいつも喜ぶよ」


 師匠の遺品を預かり……帽子と杖を持つ。

杖が……こんなに重く感じるのは気のせいか、意志の重さか、本当に重いのかは今の私では判断しかねる。


 でもいつか、重さを感じなくなったら、力が強くなったか、心が成長した証……この重みは私に成長を与えてくれる。


「今日魔女の茶会があるんですね」


「……えぇ、そういうことですね」


 行ってきますって言って、この街を離れる。

とある印がついたタイルを踏んで、魔力を込める。

魔女の持つ杖……それは特別製。

コンッと地面をつくと、淡く光り、私は消える。


「……あ!キタキタ!!久しぶり!グエルちゃん!ディンの事は残念だったね……」


 そう言って声をかけるのは水の……『蒼白の魔女』『スパニー ジェル』青い髪とおっとりした性格。


「ジェルさん……久しぶりですね、今日は私もこっちの席に失礼しますね」


「グエル!!!元気だったか!?」


 この明るく元気な女性は火の……『爆炎の魔女』『エングリュー フレイローズ』赤い髪のハイテンション。


「ローズさん!お久しぶりですね!」


「虚無の魔女にしては随分とお元気ですね」


 落ち着いている静かなこの人は光の……『極光の魔女』『クレセント メラキ』金髪で、冷静沈着。


「やっ、元気そうでなにより〜」


 おおらかな女性は風の……『疾風の魔女』『ウィンドフォール シュッペル』深緑の髪で、自由人。


「……お久しぶりね」


 ニコリと笑うこの人は雷の……『紫電の魔女』『サンガド バリッサ』濃い紫の髪で、大人な人だ。


「はい!皆さんどうもお久しぶりですね!お茶会……楽しみましょうね」


 そんなことを言いながら椅子に座る。

円形のテーブルに沿っておかれた椅子に座る。

私の目の前に……対角線側はいつも居ない、黒の魔女。


「黒の魔女は今日も来てないんですね」


 そうつぶやくと


「だね〜、もういっその事君になって欲しいぐらいさ……3代ぐらい前から来てないから存在自体知らない説も、途絶えた説もあるよ〜」


 3代ぐらい前から……そんなに来てなかったんですか。


「正確には……193年と4ヶ月ね」


 メラキさん細すぎて怖い……


 そんな話をしたり、お互いの近況報告をしたり、色々してると、ふと、おかしな気配がして振り向いた。

他の人たちも、本能的に……恐怖心が、好奇心を塗りつぶして振り替えさせた。


 そこには黒いボロボロのローブ、美しく細く長く伸びた手足が、黒のズボンとシャツにあっていて、どうにも美しく、手持ちのリンゴを1口齧った姿は……不思議と死を彷彿とさせた。


 そんな美しい……男が、突如現れた……杖も持たずに、だ。


「あ、あなたは……誰?」


 ここにいる魔女がみな、これ以上動けないのだ。

この突然の人物の襲来に体が萎縮しきっている。


 口を開き、声を発する。


「……僕は…………魔女………『黒の魔女』………『アングラ ザントリル リーパー』」


 声がどうにも耳に、恐ろしい程に抵抗を許さないほどに、聞き惚れてしまいそうな綺麗な声。


「お、男の人だよね?」


「………そうだけど……魔女…………だ」


 明らかに私よりも若く見えるその男は、その目が異常に冷たくて、恐ろしかった。


「……茶会に来たのは久方ぶりだ………実に193年と4ヶ月、1週間と3日、1時間15分、6秒ぶり……だ」


 淡々と、正確に男が……リーパーが言葉を続ける。

メラキさんの正確な時間表記よりも恐ろしい、絶対的な時間感覚。


「……君は………黒魔法使いかい?………珍しい」


 そう言って、あっという間にこちらへ詰め寄ってきていた。

気がついた時には目の前に、驚く暇さえなかった。


 その瞬間、私が距離を詰められたと同時に、多方向から魔法が飛んでくる。


「…………流石に……代が変われど…………流石だな」


 そう言って両手を広げると、魔法が全て霧散した。


「は?」


 誰の言葉か分からないが、圧倒的にレベルが違う……だって『何をしたのかさえ分からない』のだから。


「……君、名前………名前は?」


「わ、私ですか?」


「………そう……名前」


「グエル……です」


「………グエル………まずは……魔法を……咄嗟に使え」


「あっ」


 あのタイミングで、私だけが反応できていなかった。


「……食器を……落としたら…………間に合わないってわかってても………手は出る……それぐらい……反射的に………間に合うかどうかは……別だ………」


 こ、この人は……何者なんだろう?


「君達も………いい魔法……だけど、焦りすぎ…………綻びだらけだ………お茶会……結界があるから……敵が……来ないのは分かる………警戒は、それでも怠るな………全員……殺せたぞ?」


 その言葉に……ゾクッときた。

背筋を冷たい氷が這ったようなありえない感覚。

そうとしか形容できないほどの恐ろしさ。


「……久しぶりの茶会………僕も……1杯頂きたいね」


 そう言って、私の正面に座る。

そのまま茶会は続いた。



「……あの、アングラさん」


「……リーパーで……構わない…………どうしたんだい……グエル」


 まるで眠たいのかと思う程の言葉と言葉の間、何故だろう。


「私に、黒魔法を……教えてください」


「……君に……?………いいよ、おいで………今すぐ……教えよう」


 この男から学べるものは……きっと私を急成長させるだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ