順調な探索と出会い
「……よし、まぁまぁ敵も強くなってきたし、そろそろ気を引き締め直さないとな」
今いる場所は『第5層』初心者1人にしては中々に荷の重い事もあるのだが……中々に順調なのだ。
「しっかし『クドクヘビ』賢いねぇ」
エンが感心したようにそう言う。
「あぁ、確かにね、1回噛んだら、後は死ぬまで逃げ続ける……あの性質は厄介だね」
まぁ、噛まれたことは無いけどね。
「……さーて、気合いをあっ!?」
地面をガクンと踏み抜き、横の壁が開き、手錠が飛んでくる。
その手錠は吸い込まれるように俺の手にかかり、両手を不自由にされる。
「……これが罠……なーんか気持ち悪いな……あぁ、そういう事ね」
ステータスにはこう書かれていた。
状態 呪いLv2 無関心
「はー……体が重い」
「だ、大丈夫!?」
「うーん……1回地上に戻ろうか、教会ら辺に行こう」
「う、うん」
その帰りに、何度か敵と出会ったが……まぁ、足は自由だからか意外と苦労はしなかった。
「……教会、どっちだっけ?」
「うーん……あ、南の方だね」
「了解、ありがと」
脚を引きずりながら、街を歩く様はまるで奴隷か囚人だ。
「……いらっしゃい……手錠?呪いでしょうか?」
暖かい光を連想させる金髪、透明感のある青い目をした白いローブの女性が少し暇でボーッとしていたのか、少し遅れて俺と目が合う。
「あ、はい、解呪、お願いします」
「はい、かしこまりました……この呪いは……弱体化の呪い……ふむふむ、でしたら
『身を縛る鎖、健やかなる身を返したまえ……ホーリー』……どうでしょうか?」
そう、彼女が質問すると同時に、パキンと音を立てながら手錠が消滅する。
体の調子を確認するべく、手をグーパーさせ確認する。
『ホーリー』白魔法の基礎中の基礎……詠唱があるのは、緊迫した戦場ではないから、確実性を求めてのことだろう。
「……治ってます!ありがとうございます……少ないですが、どうぞ」
財布から金貨を1枚取り出し、彼女に渡そうとする……が。
その手を止め彼女が真剣な顔で
「いえ、結構です、私は別にお金のためにこの仕事をしている訳ではありません……申し訳ありませんがお気持ちだけ……というのはダメでしょうか?」
申し訳なさそうな顔をして、少し恥ずかしかったのか、はにかむ様に笑う彼女……『綺麗だな』と、そう思った。
「……なるほどなるほど……僕も配慮が足りませんでしたね……あなたなら良い白魔道士になれるでしょうね……また、ここに来ても?」
そういうと、彼女が少し意外そうな顔をしたあと。
「毎日、お昼を過ぎた辺りからは修行のため基本ここにいます……その時でしたら、どうぞ」
と、ニコリと微笑みながらそう言った。
「……ありがとうございます……あ、そういえばお名前は?」
「名前を知りたがるなんて珍しい人ですね……『シア』と言います……貴方は?」
「カルカトスって名前です……また来ますね、シアさん」
「えぇ、お気をつけて」
「いい人だったねー」
ニコニコと笑うエン。
『そうだな、本当にいい人と言うやつだね』
「お金のためじゃない!……か……かっこいいね!」
『そうだね、今後もお世話になりそうだし……いい人と会えた、あの罠にかかったのはラッキーと捉えようか』
「それでいいんじゃないのー?一期一会、会えただけで奇跡なんだよ」
「いいこと言うね」
ボソリと口に出してそう呟いた。
【詠唱】
遥か古の賢者、エルナ カーラが言った。
『魔法とはイメージ、詠唱なんかをしてイメージを言葉にするんだ、そうすればきっとその思いは魔法になる』
詠唱とは、魔法の形を変えるもの。




