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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
お皿が割れるみたいな?
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今より更に

「……さて、と」


 そう言って、自分の部屋の扉を開き、棚の中の手記を取り出す。

ありとあらゆる変化先を記した、悪夢魔術の……言わば魔術書。


 開きパラパラとめくる。

その度に、全てが頭の中で記憶されていることを再確認する。

俺は、大きくわけて3人いた。

1人目は、この俺、精霊たちに拾われた俺。

2人目は、あの私、封印を重ねた、かりそめ。

3人目は、昔の俺、失って、手に入れていた。


 それらの記憶を引き継ぎ、1人目の俺がいる。

そんな中の誰かが書いた手記を取り出し、1階に降りる。

目の前にいるのは3人目の俺に極めて近い『アイビー アクナイト』それは、間違いなく俺よりも格上の存在だった。


 俺に近づけたはずが、俺を大きく引き離して強い存在になっている。


「?カルさん?その本は?」


 上がる前との俺の相違点を見つけ、質問する。


「これかい?これはアイビーへのプレゼントさ」


 そういうと不思議そうな顔。


「プレゼント?仮面もローブも剣もくれたのに、まだなにか私に?」


 全てが収納されている小さな箱にちらりと視線を向け、そう言った。


「これは君が読むことで、さらに価値を増すのさ」


 そう言って手渡すと、またもや不思議そうな顔をして受け取る。


「読んでみても?」


 そう聞いたアイビーに当然だと言わんばかりに頷いてみせる。

パラパラとめくる姿はさっきまでの俺と違って、1ページ1ページ慎重にめくる。


「……こ、これって……〈悪夢魔術(ナイトメア マジック)〉の説明書……?」


 アイビーの目には『説明書』に見えたらしい。

面白い表現だと思いながら、ニコリと笑いながら頷く。


「まぁ、そんな感じ

他にも、こんなふうにしたらいいって思うやつや、想像上の生き物を作る時のコツとか?」


「……こ、これ私が貰っても?」


 いいの?って、聞かれてもなぁ……


「まぁ、あげるよ、俺以外に使える人はいないからね、燻らせておくのは勿体ないじゃん?」


「……そ、それはそうですけど……ありがとうございます、大切にします」


 そう言ってパンっと閉じて胸に当ててそう言った。

立ち上がっている彼女の上背は俺に近しい。

俺は170後半はあったはずだから、女性の人間の中ではなかなかに大きい部類だろう。


 新しいおもちゃ……と言うよりは、贈り物を送られた用で、嬉しいけれど、少し開くのが勿体ないらしい。


「……あ、そうだ、アイビーまた魔界に行こうか、一緒に俺と働いてくれるのなら……ありがたいな」


 そういうと、目をキラキラさせて、嬉しそうな顔でこっちを見て


「いいんですか!?」


 と言っている。


「あぁ、無条件で合格さ、一緒に来たら歓迎されること間違いなしだ」


「!えへへっ、嬉しいです……!」


 嬉しそうに頬を赤らめ、それを隠そうと両手で覆い、目はこちらへじっと。

うん、いい顔だ。

打算的な彼女はそんな顔をすると俺に好かれることを知っているのだろうな。


 好みを知ってか、本能的に察しているのか、どちらにせよ、完璧な好みの顔だ。

……生まれつきこの顔なのかが怪しいほどだが、運命のイタズラということにしておこう。


「……あ!行く前に、1つお願いしてもいいですか!?」


 お、珍しくアイビーの方からお願いが。


「なんだ?なんでもいいぞ」


「また、シュプ フングの研究所に一緒に行きましょう」


「………」


 またその名前を聞くことになるとは思っていなかったが、なにか意味があっての事なのだろう。


「いいよ、行こうか、何しに行くかだけ聞いてもいい?」


「……私とカルさんの出自と、シュプ フングの研究成果、そしてそれらの抹消に」


「……あぁ、なるほど、いいよ、乗った」


「……それと、私の……この体質にも」


 そう言って、シャツをたくし上げ、へその少し上、みぞおち辺りにある黒い印を見せる。


「……それって?」


「私は精霊に憑かれていました。

その頃に着いていた印が今でも取れないんです……理由は、分からないけれど、言えることは、これのせいで私は血を吐いたりしていました。

身体の中のカルさんの臓器を拒絶して、私の命をか細いものにした、その元が」


「……ちょっと触っていい?」


 こくりと頷き、それを確認し、指で触れる。

その瞬間、ぴくりと反応したが、あえて無視して、繋がりを得ようとする。


 精霊……いや、これは呪いか?

と言うよりも……なんだろう、不安になるほどにどす黒い何かが渦巻くこの感覚。

夜に風が窓を叩いた時のように、嫌になる。


『呪いだね、おすすめの方法があるけどどう?』


 そんな声が頭の中に響いた。

驚いて目を見開いて、ビクッとしてしまった。


「んなっ!?」


「カルさん?」


『おやおや、ヤラシイことしてたのならごめんなさいねー、おすすめは、アライトの輝石でもあげるといいよ、あの人は呪いのプロだから』


「……アイビー」


 言葉を続けようとしたら、アイビーが割り込む。


「その顔は何かを思いついた顔ですね、ならお願いします」


「っえ?いいのか?」


「はい、構いません、カルさんの思いついたことなら、きっとそれがいいですから」


「……一応言おう、輝石を取り込んでもらう。

それは、命を落とす確率さえかなりある」


「カルさんはしたことがありますか?」


「……2回ぐらい」


 そういうと、クスッと笑って、頷く。


「カルさん……なら、私はいいですよ、私のこれを治してくれるのなら、なんだってしますよ」


「……わかった、なら、この輝石を飲み込んでくれ」


「はい、わかりました」


 輝石を両手で包み、そして、胸元に当てる。

淡い光が当たりをつつみ、そして、アイビーが目を開いた。

結構自由にしてるフレイでしたとさ。

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