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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄トハ、覚悟ト勇気ニ溢レル者ダ
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彼の優しさ【アイビー】

「……んぅあ……っは!」


 ガバッと、体にかかっている毛布を反射的に跳ね除ける。

ここは……これは……家のソファー……?


「ん、起きたか?」


 いい匂いがする方を見る。声の主がやはりいる。

カルさんがご飯を作っている。ぐぅーっとお腹が鳴った。


「ははっ、やっぱりご飯つくってたら目を覚ましたか」


 ニヤリと、してやったり顔でお玉をこちらに向ける。


「うっ、くぅ……」


 否定できないですぅ……


「ははっ、そういうところ抜けてるよなぁ〜」


 ニコニコと笑いながらこちらへよってきて頭をポンポンとされる。

されるがままに頭を差し出し、受け入れる。


「ご飯にしよっか、元気いっぱいになるようにお肉いっぱい用意したぞ」


 レバー肉……こっちはハラミ……あ、カルビもある……それとスープ……美味しそう……


「焼肉ですか……!」


「寝起きにはヘビーだったか?」


「いえいえ!?むしろ……食欲が増してきました……!」


 その反応に安堵した顔、そしてカルさんが沢山私にくれるからその分をパクパクと食べる。


「ペロリと行ったな……追加焼こうか?」


「い、いえいえだぃ……」


 ぐぅーっとお腹は正直だった。

その音が聞こえたらしく、ニヤリと笑いながら


「もうちょっと用意しよう」


 そう言って席を立って行く音が聞こえた。

恥ずかしすぎて、本当に席を立ったかは俯いてたせいで分からなかった。


 追加のお肉も大量にいただき、お腹いっぱい幸せな気持ちになれた。


「洗い物しとくからお風呂入っておきな」


 そう言っていつも通りお風呂へ入るように言うカルさん。


「はーい……」


 お腹いっぱいで膨らんだお腹、重い腰を上げて洗面所へ、服を脱いでお風呂に入る。


「っふー……暖かい……っじゃねぇ!?」


 おっと失礼柄にも無い言葉遣いを……じゃなくて!?


「いつも通りすぎでしょ!?」


 いやまぁたしかにいつも通りを願いましたけども!?

ここまでいつも通りだとなんて言うか……え?私騙されてますか!?


「どうした!?アイビー!?」


 バンっとドアを開けるカルさん。


「おぉっふ、なんでもないですよ〜、ちょっと傷が開いて〜」


「?き、傷か?……まぁ、そうか、気をつけろよ、酷くなったらすぐに言えよー」


「あ、はーい、ありがとうございます」


 さっきとは打って変わって静かにドアを閉める。


「……うぅん……」


 頭の中で3つほど可能性を考える。

1.あのカルさんは私が知っている『カルカトス ナイトメア』じゃなくて『カルカトス アクナイト』という別人。


2.シンプルに騙されてる。


3.あれ実は夢、壮大な夢を一夜見ていただけ。


 一つ一つ、考えついたそばから自分が否定する。


 1、これは違う。

私の知ってるカルカトスらしく、『悪夢魔術(ナイトメアマジック)』を使える。

それに、すごく強い、顔写真通りだし、間違いない。


 2、やはりこれも違う。

騙す……って何を?ってなるからなぁ……違う気がします。


 3、これが一番近しいけど……


「……私の内臓、再生してるからなぁ……」


 頭はコリが、脳みそとかの頭を……彼の元々の体の脳を組み込まれている。

ただの頭脳なのに、組み替える際に存在する数多のパターンから1発で正解を弾きだす頭脳。


 胴体はクリンゲが、ただの胴体なのに、あまりにも固い。


 腕や脚はアル……アルマトゥーラが、ただの腕や脚なのに軟らかくしなり、鉄のように固い。


 そして、それら体の一部を組み込まれただけだと言うのに、皆の『才能』や『存在』が、カルカトス1人の、それもただのパーツ1つに塗りつぶされて書き換えられる。


 バスタオルに顔を突っ込み、水滴をふきとる。

歯を磨く……前までは血が歯茎からぼたぼたと出てきていた。


 私の身体はあんまりにも虚弱()()()

『身体に合わなかった』そんな生易しい表現じゃない、拒絶反応とか、そこら辺の話だ。


「……これで私もただの女の子……か」


 しかし、鏡に映っている私の顔は自虐気味に笑っている。

もっと普通に笑えばいいのにな……


「……ん、上がったか、それじゃ俺も風呂入ってくるよ、机の上に輝石なら置いてるよ」


 指さした先にあるあの石が目に入る。

あぁ、夢じゃないな……つまりあれを見て、カルさんはあの調子なのだろう。


「……カルさん」


 ベランダでタオルと下着を探しているカルさんに声をかける。


「んー?」


 こっちをのっそりと振り返る。


「お風呂上がったら、お話があります……大事なお話があります」


「……ん、わかった、()()()()()()()()?……?」


 その確認とも取れる言葉、それを言っている自分に疑問符を立てるカルさん。


「ど、どうしました?」


「い、いや?なんか……違和感が……いや、まぁいい……」


「えぇ?……ま、まぁ、それで私はいいですよ、お願いしますね」


「あぁ、わかった、覚悟してから風呂から出てくるよ」


 何の話なのかは完璧に察してる返答だ。

あぁ、やっぱり気が付いてて何も聞かなかったんですね。

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