かけはしを壊すもの【ラジアン】
「……お、キタキタ……よし、それじゃ初めよっか……んんっ、はじめましてー、私が今回あなたたちと共にここを開拓していく1人、ラジアンです、四天王でーす」
辺にあるのはボランティアの人たちや冒険者たち、うん、みんないい面持ちだ。
いいスタートだった。
笑顔で珍味を喰らうディスターヴさんにドン引きしている人もいたが、それもまた愛嬌、皆笑いあって、大変な仕事も、細かい仕事も、たんたんとこなしていく。
木を切り倒し、地面を整地し、家を建てる土地を作ったり、うん、いい出来栄えだ。
間違いなく親睦は深まっている。
魔王ちゃんの願う手と手を取り合う平和な未来は近くに来ている。
あの例の暗殺事件があった後にもかかわらず、こんなにもの人数が参加してくれている。
行けるはずだ、このまま行ってくれれば。
「ラジアンさーん」
「ん?お、君はアモラスちゃんだね、覚えてるよ〜」
黒髪赤目の『魔人』魔族ならもっと高い地位にいたこと間違いなし……いや、魔人だからこそここまで来れたのかもしれない。
人間たちの中では最高峰の冒険者、カルカトスよりも上のランカー。
「どうしたんだい?」
「みんなで一緒に飲みましょー!ラジアンさんの面白い話も聞きたいなぁー?」
「ほほぉう?いいよ!!私のとっておきのすべらない話を披露しよう!」
カルカトスのことは伏せながら、皆との日々の中でもとびきり面白いものをチョイスする。
驚いたような顔、嬉しそうに笑う顔、ハラハラしていたりして、忙しい話。
「それでさぁ〜?そこで俺たちは後輩に呼ばれて魔族にあったんだァ、アライト ワクレフトさんって言ってな、共存の街の基盤を作った男だったんだ、優しくて、そして守護者としてとても強かった……全力を出されたら負けてたかもなァ」
バンクなる冒険者が赤い顔でそう話をしてくれる。
「あ!なら私からも!……カルカトス君って言ってねぇそのあなた達を呼んだ後輩くん、彼って髪が白かったり黒かったりして忙しいのよォ、そんな彼がさ、多分私たちに初めてすがおみせてくれたんだよー!」
呂律が怪しいアモラスちゃん。
「カルカトスかぁ……私も本気の本気で戦ってみたいなぁ」
あの時に比べたら何歩も近づかれている。
きっと楽しい勝負になるな。
そんな団欒が、突如として終わる。
爆発音、夜にしては嫌に明るい。
「どうも、こんばんは、私はネルカートの迷宮の守護者が1人『ユギュル サーラー』……アアー、まぁ、荒らしに来ました」
未開拓の森の中から、間違いなくやばいオーラを発するナニカが来た。
先のとがった変な仮面、車椅子に座り、膝の上で本を置き、読んでいる?
そしてその車椅子を押すのは手首しかない、しかし手だけでわかる綺麗な女性の手。
姿形こそ人っぽいが、本気で戦っているカルカトスに近い気配。
「……キメラ?」
口をついて私が言葉を漏らすと、驚いたような反応。図星か?
「ほほぅ、流石に目ざといな、まるでカラミスの様だ」
カラミス!?初代アズナスの持ち主……1万年前の守護者?まさか
「みんな、飲んでる場合じゃないみたいだよ!立って!」
そういうと、既に武器を構えている。流石だ。
「……まるでワクレフトさんを見ているようだな……ハハハ、この新たな時代の壁となるか、糧となるか、見極めねばな」
本が軽く浮あがる。
「『炎魔法』」「『水魔法』」「『風魔法』」「『闇魔法』」
四重にかさなる1つの声。
何故4つだけなのだろうか、その疑問はすぐに分かる。
そして、次に告げたのは、それらの最高位魔法と呼ばれるもの。
あぁ、自然魔法や白魔法は……アレだからなぁ
「〈大龍炎〉」
巨大な龍の形の炎。
「〈深海蛇〉」
先の見えないほどに長い水の蛇。
「〈嵐之鷲〉」
王のごとく君臨する風の鷲。
「〈闇夜黒猫〉」
龍、蛇、鷲、そしてポツンとクロネコ。
何がやばいって同時にこれを使うのが初めに、すごい。
それを扱える才能とMP量や魔力、練度がすごい。
そして無詠唱なのも凄い。
なのにこんなにもくっきりと表現できるのが凄い。
そして、まるで教科書のようにそのままだ。
そして、それよりもすごいものが1つ。
何がすごいって?それはね……
「《自由で横暴な決闘》魔法は禁止ね?」
そんなすごい魔法を一言でぜーんぶ消しちゃえる『私』
「っな!?」
その声は仲間からか、敵からか分からない……けど、もうこっちのフィールドにたたき落とした。
「……さて、ちょちょいのちょいと致しましょうか」
「……これは私の負けだな……」
魔法しか使えない、そういうと聞こえは悪いが、その魔法の練度が器用貧乏よりも遥かに良かったのだ。
「新しい世界の……糧か、私は」
「そうみたいよ」
ズバンと切り裂く。
やっぱり私は……私が四天王最強だよ。




