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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄トハ、覚悟ト勇気ニ溢レル者ダ
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次弾奏演

「み、見せるって!?どうやって!?」


 ライトさんが、そう聞いてくる。

俺のすることに興味があるらしく、サーラーも精霊も動きを止めている。


「見せてくれたまえ

この世界の中でも、有数、数限られた最高級の才能、精霊を視覚可能という、その世界からのとびきりのプレゼントをどう、分けようと言うのか!?」


 そんなにハードルをあげないでくれよ。


「みんなこっちに来てくれ」


 アイビーは別にいいんだけどね……


「フロウ、前に精霊を見せてあげるって言ってたの覚えてる?」


「……あ、うん、前言ってたね、サジェントスの花畑で」


 覚えていてくれたか。


「あれは……しくじれば失明の危険もある、それに、俺一人につき1人しか見せることは出来ない……それでもいいなら、やる」


 そういうと、誰かがたじろぐ……当たり前だ、目は失いたくな……


「なら、私が受け持つ」


「っな!?話聞いてたか!?」


「あぁ、何だ?ビビらせたかったのか?」


 声の主はたとえ目が見えてなくても分かる。


「……いいんだな?サクラ」


「名前で呼ばれるの気持ち悪いな、カルカトス」


 そう言われると、背中がゾワッと来た……ヒィ……


「……バカドラ、やるぞ、ちょっと気持ち悪いけど」


「何を今更……やってみろ人間」


 そういうと、顔をこちらにやる。

……あぁ、ハウルのあのあれを見ていたから何となく察しているのか?


「話が早いな……行くぞ」


 瞼に手を合わせる。

触手を伸ばして、目の中を弄る。

手の甲に瞳を作り出して、そこと繋ぐ。

俺とこいつの才能を繋ぐんだ。


「っぅえ……っあえ……」


 気持ち悪そうに、体を震わせる。


「……できたはず……見えるか!?」


 心臓がバクバクなる……失敗していないといいんだけど……それにあくまで机上論、目を繋げても精霊見えるかな……?


「……!あ……あぁ!見えるぞ!……あれが精霊か!!サジェントスの絵で見たものよりも……うん!いいぞ!人間!見える!」


 俺が目隠しをしているような形になる、その状態で軽く跳ねて喜ぶ。


「……ええっと……それでどうやって戦おうと言うんだい?」


 サーラーが驚いてはいるが……と言った顔で見てくる。


「……バカドラ動いてみろ?」


「ん!?……あぁ、わかった」


 横に軽く歩くと、俺の腕が表面の皮だけが伸びる。

まるで皮むきされたリンゴのように、ピロピロと、彼女の後を着いていく。


「うわっ!?気持ち悪!?グロテスクだな!?おい!?」


 引いているが……黙ってろ。


「他のみんなは、サーラーの方をお願いします!俺とこいつとアイビーで頑張って精霊を倒したらまた向かいます!」


「あ、あぁ、わかった!」


 ラングがチラチラとバカドラと俺を繋ぐ皮を見ながら武器を持つ。


「了解しました……次は私にお願いしますね!?」


 キラキラしている目で見てくるフロウ。

よくそんな顔できるな君は……


 ほかの2人も頷き、離れる。


「さぁ!行くぞサーラー!!」


「あぁ!面白い!かかってこい!」


 あの精霊は……光の玉……人のような形じゃなくて……サーラーそっくりだ。


 魔法を放ってくる。

俺は篭手で弾き、バカドラも同じように腕の甲殻で弾く。

アイビーも、剣で受け流し、もう前に進んでいる。


「っん?」


 ガクンと、膝を着いてしまった。


「何してるんだ!?ニンゲッ……っん?」


 あいつも膝を着いている……馬鹿にしてるのかな?


「アイビー?」


「っん?」


 あいつも膝を着いている……あ、今になってわかったわ。

振動で体が痺れて上手く動けない……攻撃自体が、芯まで響く


「これやばくね?」


「あぁーーーぶぅぅーーないっ!!!」


 剣を振るうフロウの姿が見える。

突如起こる暴風は俺たちを吹き飛ばすほどに激しく、それでいて優しく着地させてくれた。


「ありがとう!助かった!!」


「あの攻撃は避けないといけないんだな!?精霊厄介だ!」


「つ、次は失敗しません!!」


 よし、決意新たに戦おう!


 その瞬間、音楽が……弦楽合奏がより強く主張を始める。

聞こえてくる……つまりそれこそがアウトなのだ。


「アイビー!そっちは自分で対処してくれ!すまん!」


 そう言って《悪夢魔術(ナイトメアマジック)》で掌を伸ばし、サクラの両耳に蓋をする。

そして、そこから声を出して会話をできるようにする。


「聞こえるか?」


「ひゃわっ!?な、なんだ!?耳元でいきなり囁くな!?」


 なんつー声出してんだ……なら叫べってのか?


「音を聞くのは良くない、俺がサポートする」


 そう言いながら自分の耳にも、蓋をする。

耳の内側をより強く突起させて塞いでみせる。


 しかし、それがすぐに無駄だと悟る。

腹の底に、物理的に響くその音。

激しい重低音が内蔵を強く揺さぶってきた。


「ップ……!?」


 口の中に鉄の味が突然湧き上がる……吐血……!?

アイビーがマズイ、内蔵に呪いがかかっていたはず……それにプラスでこんなのが来れば……!?


「アイビー!?」


 案の定倒れている。

耳も目も口も鼻も、どこを見ても滝のように流れ血の海ができ上がる。


「っ!マズイィ!」


 下手すればナルヴァーなんて比にならない程にマズイぞ!?

俺の口の端からも血が流れているしバカドラも鼻血を、1番近いフロウさんは膝を着いている。剣を支えに何とかと言ったところだ。


 しかし、精霊たちも動けていない……動け!俺がアイビーを助けないと!!


「アイビー!」


「人間!?……っクソがァ!!」


「はははっ!次弾奏演開始!激しく行くよオォ!」

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