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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄トハ、覚悟ト勇気ニ溢レル者ダ
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開演

「人間!」


 バカドラの声……


 ふらつく頭を抑えながら、前を向く。

刃が迫る……頭の光源が伸びてそれが刃となり、胴に滑る。


「っおぉ!!」


 全力で前転する。

頭の中に、小人が俺の脳をお構い無しに蹴ってくるような不快感。


「……ちっ!」


 矢がバスバスと、また外れる。

耳を閉じて、距離を取ろうとする。


 そんな俺を見逃す訳もなく、今度は線でなく面で捉えようと、光の槌が迫る。


「っドラぁ!!」


 ラングが横から飛び出し、それを受け流す。

器用なやつだ、こういうところで役に立つ縁の下の力持ち。


 耳を塞いでも、全く良くならない……どころか加速的に不味い状況は生み出されていく。


「カルさん!!」


 不安げなアイビーと目が合う。

こんな情けないところは見せてられないな……!


 息を『スゥッ』と音が鳴るほどに吸う。

あぁ、なるほど、だから息を『スウ』というのかと、納得をしながら、まとめた言葉を吐き出す。


「ソラァ!光魔法で強化と援護ォ!主にライトを!

フロウゥ!魔法を使って中距離戦闘!

ライトォ!遠距離からの弓での攻撃を!

ラングゥ!全力で隙を突け!外すことを恐れるなァ!

アイビィ!深入りは禁物!敵をよく見て上手く立ち回れ!

そして………」


 一人一人の間に息を吸い、音に負けないように全力で呼びかける。


「私は『どうすればいい』!!??」


 あのバカドラが……『サクラ』が俺に指示を仰いでくる。

俺が離脱したせいで1人前線を務めているサクラは、それでも俺の言葉を待っている。


 今までで1番深く息を吸い、大声で、


「『サクラ グランドォ』!!

お前は!抑えていろ!俺が!お前を完璧に援護する!!」


 人型なのは合わせやすいし、大きくないから被害も小さい。

なんてありがたいんだ、人型でいてくれてありがとう。


「!?!っな!?……わかった!『カルカトス』!!」


 名前で呼び返される。

俺が名前を呼んだことに強く驚いて、そして彼女も俺を認めてくれた。


「良い友情ですねぇ!」


 俺たちのこれを友情と評する……やめて欲しいところだ


 そして、サーラーはそう声をかけながらも、攻撃は止まるところを知らない。


「『光魔法』《対魔防壁(アンチマジックバリア)〉!」


 ありがたい白魔法。

強化魔法をライトさんに、そして俺たちに戻る平衡感覚。


「喰らえっ!」


 矢をつがえ、何本もの矢を連続して放つ。

守護者に当たる直前で叩き落とされた。


「甘いですねぇ」


「それはあなたの方よっ!!」


 そう言って、聖剣で一突き……当てるのではなく、からの空気を穿つ。


 聖剣に魔法が篭もっているのか、聖剣に魔法を込めたのか、どちらか定かでないし、そんなことができるのかもわからない。


 分かるのは、今彼女が剣からはなった魔法は無詠唱のレベルを超えている。

風を突き一振のランスにも近いその風塊を、またも光の玉が弾く。


 どこを見ているのかも分からないのが厄介だ。


「まだ、届かせませんよ!」


「おぉあ!!」


「はあぁっ!」


 ラングとサクラの2人のコンビ攻撃。

そして、その2人の影からアイビーが飛び出す。


「っ!これはっ!」


 またも光が邪魔をしようとするが、3度も許してなるものか!


「『神速』!」


 力を貸してくれなんて自分勝手なことを言ってごめんなさい師匠!


 距離を、固有スキルと併用してあっという間にゼロにしてその光を切り裂く……まではできない!?

なんという反射神経、既で手を引っ込めた!?


「……だが!!」


 3人の攻撃は!あたるっ!


 その予想は当たった。

3人の攻撃も上手く当たった。

強く吹き飛ばされ、少し、勝機が見えた。


「やったか……!?」


 ラングが『手応えあり』と声を上げる。


「まだだっ!五線譜が消えていない!」


 サクラの言葉に首を向けて道を見るも、まだ閉まっている。

つまり……まだだ、あの反射神経に次いで耐久力も持ち合わせているのか……!?


「ンンー、イイねぇイイチームだ!」


 そう言って、立ち上る砂煙が、震えた。

そして空気が強く揺れる。


「音とは振動だ……私の魔法は、固有スキルは振動を操れる」


 ガコンとデモンストレーションと言わんばかりに岩を粉にする。

ゴクリと固唾を飲む。


「そして、君たちの内、どれだけの英雄が対応できるかナァ!?」


 興奮しているらしい。

怒りでなく、喜びに振るえているのが声からわかる。


 砂煙を突き抜け、3つの『精霊』が飛び出す。


「あ、あれは!?」


 そう言葉を続けようとすると、続きを代わりに言ってくれる誰かが。


「精霊!?」


 その言葉に驚いて、俺は声の主……アイビーの方を向いたそして、他の人たちは俺とアイビーを交互に、アイビーは精霊たちを目でしっかりと追っている。


「せ、精霊ですか!?っていうか2人とも見えてるの!?」


 ソラさんが驚いている。


「ホホゥ!?2人も見えるというのか!?」


 ずっと疑問だった。

サーラーって、何のキメラなのか。

このキメラしか出ない50〜60層の中、あの4体は何のキメラなのかわかってなかった。


「……精霊のキメラか!?」


「!ンンー、そんなところサ、楽器や炎や本や動物、それらを愛してしまった精霊はいつか1つになってしまった……そして、それらは英雄を鼓舞し、魔法として助け、知恵を貸し、時に癒しを、時に腹の足しに」


 吟遊詩人の様に音楽に合わせて語り出す。

不快感はなく、高揚感さえ感じる。


「我々は!我々サーラーは!間違いなく勇者を愛している!そして!英雄の助けとなることを何よりも求めている!」


「そして、2人しか見えないこの状況をどうするか……って事だな!?」


 ラングがこちらを向く。


「……いや、やってみせる。皆に、精霊を見せてやる!」


 意を決して、口を開き、そう言った。

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