回想 フメテアパーティー【メリッサ】
「……はい、持って行ってねー」
料理を盛り付けた皿を持っていくように仲間たちに言う。
誰よりも早くファクトが、次にテイル、アーガンがアモラスの文を持って机へ行く。
アモラスは私のご飯を持って行ってくれる。
「さぁ、食べよっか」
みんなが揃ったのを見てからアーガンが食事を始める。
私達フメテアパーティーは仲のいいパーティーだ。
まぁ、仲が悪いパーティーは続いたりしないだろうけど。
「あ!ファクト!ゆで卵取らないでよ!」
サラダの上に盛り付けたゆで卵をファクトが取ったのを見て、テイルが伸ばしてきたスプーンを止めた。
「遅いのが悪いんだよ!」
「何を〜!?」
「俺のやつあげるから、な?テイル」
アーガンがその2人をたしなめるところも一緒だ。
理由は日によって変わるが、毎日この2人は飽きもせず何かにかけて争う。
仕事の日には、ギルドに行き、仕事をこなす。
カルカトス君のように迷宮探索が本職ではなく、護衛から討伐まで幅広くこなすのがフメテアパーティーだ。
私こと、テイルはヒーラー件前衛を努めさせてもらっている。
「ファクト!次の攻撃の後3番!」
1から5番まで存在するコンビネーションを告げる。
これは私とファクトのコンビネーションを見せる時。
「行くわよ!」
「おう!」
羽でファクトを押し飛ばし、玉のようにしてファクトを放つ。
追随してアーガンとアモラス、テイル。
私も後を追い、追撃要因として加わる。
3番は近距離速攻のコンビネーション。
いつもこの息のあったコンビネーションで切り抜けてきた。
でも、いつだって突然、悪いことってのは起きるものなんだ。
「ってわけだ、ど、どうしたらいいと思うかな?」
一通り説明を終えて同意や言葉を求めるリーダーアーガン。
何の話か?五十層の守護者との戦いに参加するかどうかというものだ。
「俺はやった方がいいと思うぜ!後輩にいいとこ見せねぇと!」
ファクトはそう意気込む。
「この駄犬と同じことを言うのは嫌ですが、私も賛成です。
それに、前人未到の迷宮、その守護者討伐に携わることが出来るだなんて、名誉なことではありませんか?」
たしかに名誉な事だね、テイル。
「私も同じ感じかなぁ?」
のんびりしてるけど、それもまた魅力さ、アモラス。
そして、私こと、メリットの言葉は決まっている。
「リーダーはどうしたいの?」
作戦会議の時は私はリーダーと呼ぶようにしている。
彼は自分の我を通そうとしない、だから聞き出してやりたい。
「うぅん……まぁ、すごく個人的なことを言うと、今回の討伐に成功させれば、きっと俺はプラチナに上がれる……だから、やりたいかな」
「じゃあ、やろう、私は手伝うよ」
そして、リーダーの意見に全面賛成する。
これでは我がないのはどちらか分からないな……
そして、この戦いで失ったのは、我がパーティーのテイル、大切な仲間だ。
彼女は何かと気が利いた。
仲間のほんの少しの異常に誰よりも早く気が付き、時に元気づけたり、相談に乗ってくれたり、そうしてくれていた。
そんな彼女がいなくなってしまったのだ。
いつも買う材料費は昨日に比べて1人分少ない。
でも、それで良くなってしまったというのだから、悲しいことこの上ない。
私たちは別に何も幼馴染というわけではない。
アモラスとアーガンの2人は幼い頃から仲が良かったらしいが、ほかの3人はそういう訳では無い。
しかしそれでも上手く、仲良く暮らせていた。
大したトラブルもなく、冒険者としての高みにも登り詰めて行っていた。
「……メリッサ、少しだけ、付き合ってくれないかな?」
「っえ?」
アーガンからの突然の提案。
『付き合ってくれ』という言葉に舞い上がりかけてしまったが、すぐにそういう意味ではないことに気がついた。
「忙しかったかな……?」
「えっ!?い、いいや?そんなことないわ、いいわ、付き合ってあげるわよ」
何となく、この場面で察してくれる人もいるだろう。
私は、アーガンという男に恋をしている。
理由は分からない。好きだから好きになってしまったとしか言えない。
「そうか?ありがとう、メリッサ」
弱っている彼と、とある酒場へ足を運ぶ。
前に……かなり前に、私はアモラスとアーガンから相談を受けた。
同じタイミングではなく、別々の日に、相談をされたことがある。
2人とも示し合わせたかのように同じことを聞いてきた。
「アモラスが好きなんだが」
「アーガンが好きなんだけど……」
神様ってやつは、なんて残酷なのかしら……
「……アーガン、それで?どうしてこんな時に私を呼んだのかしら?」
実らない恋とわかっていても、今ひとときを楽しみたい。




