折り返し地点
「……よし、荷物は持ったな?」
「はい!」
「頑張ってね、アイビーちゃん」
「はい!」
今日は迷宮に行く日。
久しぶりの迷宮で俺も少々気分が上がる。
「よし、じゃあ行くか」
俺のローブと仮面を渡し、俺はローブ抜きの普通の防具。
胸当てとか、まぁそこら辺。
アイビーの武器は剣を使うらしいから、ナイトラインを貸す。
このハウル……剣聖は俺以外には使えないらしい。
ラジアンから貰った篭手にも、持ち主を選ぶ特性があったなぁ。
「防具はいいのか?」
そういうと、いくつかだけ防具をデクターから借りて、装備する。
「よし、行こうか」
「行ってらっしゃい」
シアさんに見送られてギルドへ向かう。
アリーさんに俺とアイビーのギルドカードを見せると驚いた顔をしていたな。
迷宮の転移機能を利用して50層までとぶ。
激戦の跡を感じ、そして階段を下る。
キメラばっかりの五十一層。
全員俺を避けて言ってしまう。
これでは……もうすぐに五十九層へ到達できるのでは?
そう思っていながら、足早に、気をつけながら歩く。
そして、誰かの気配に気づく。
「……っ!?アイビー!!」
背後に突如迫る殺気。
この距離まで気持ちを抑えて接近してくる時点でかなりの実力者だが、そんなことを考えている暇はない。
狙いは背を向けているアイビー。守る他ない。
反射的に本能的に、アイビーを突き飛ばし、前に出る。
胸の辺りに感じる灼熱感。
胸を狙った……確実に命を狙った一閃。
幸い心臓とは逆の方を刺されたおかげで、右胸に穴が空くだけで済んだ。
「へっ?カルカトスさん!?」
顔を上げるとそこには1度見た顔が。
「……?ライム レルミーさん?」
勇者パーティーの前衛、なぜ奇襲を……あの日魔界に行く時に襲われた……まさか四天王だとバレた?
「っ!まけませ……キャッ!?」
6発の矢が同時に飛んでくる。
ライムさんの声で追撃を考慮した。
目を見開き、全てを頭の中に押え、一閃で払い飛ばす。
矢が明るく光目潰し、白くなった視界で抑えた姿は男の姿とそれを援護するようにさらに激しい光。
「っ!?カルカトスさん!?」
砂埃を上げながら急ブレーキをかけるカノさん。
援護射撃は見えないながらに全て叩き落とす。
「……あら?カルカトスさん……カノ様、外しましたね?」
「なんじゃ?カノでさえも読みを外すのか?」
「き、傷大丈夫ですか!?」
何か話しをしているが、ポーションを飲み、傷を治す。
「すいません、数日前に東の港町で魔族らしき影を見て……その様子がカルカトスさんそっくりで……でも二人いるわけじゃないですよね」
「……えぇ……あ、アイビー、警戒しなくていい、向こうの勘違いだ」
「……すいません、反応が遅れました」
「いいさ、ちょっと拍子抜けしてたところだし」
「戦うつもりはありませんよ!?ほんと、魔族がここに入り込んでいるんだと思って、それで討伐に来ただけなんです」
「……本当ですか、なら信じますよ、それじゃ俺たちはまた下に行くんで」
「仮面とローブ、あげたんですか?」
カノさんが問いかける。
「……まぁ、俺はそうするつもりです」
「……なるほど、顔を隠したいわけですか?」
「……どうなんだ?アイビー」
「……私はやっぱり少し嫌です」
「だそうだ、それではさようなら」
穴の空いた服を気にしながら階段を下る。
耳をすませば、聞こえてくる。
「しくじったな」
狙っていたのか、申し訳ないのか……如何せん、要警戒だな。
 




