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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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シア宅にて【アイビー】

「……さて、それじゃ、お手伝い頼もっかな?」


 カルさんは約束を優先してくれた。

ちょっと悲しいけどシアさんと一緒に入れるのなら、それはそれでとっても嬉しいことだ。


「はい!なんでも言ってください」


 やる気、元気ともに十分。

とは言え、私の容姿がこの教会という神聖な場所に果たしてあっているのだろうか?


 なんてことを考えながら自分の両手を見つめる。


「……自分の容姿、気になるの?」


 ドキリとした。大当たり。


「……えぇ、まぁ」


 そういうと、私の頭をポンポンと叩きながら


「大丈夫、この教会はシーアス様を信仰しているの、自由で、誰でも等しく愛されるわよ……むしろ、可愛いアイビーちゃんなら贔屓されるかもね」


 安心させたいのだろう、そう言う。

しかし、誰でも等しく愛されるという言葉に嘘を感じない。

そして、私を可愛いと言ってくれているのも。

上辺だけでなく、心の奥から話してくれている。


「ありがとうございます、なら、頑張れます」


「それじゃ、私と一緒にお掃除しよっか」


 むしろ掃除しかすることがないのだろう。

普通の人は神を愛している。

だが、だからと言って、毎日祈りに来るわけじゃない。


 家族を愛している人が毎日『愛している』と伝えることは気恥しいが難しいことじゃない。

神に毎日愛を捧げることは、簡単だけど、みんながする訳じゃない。

みんな仕事がある、みんな休みがある。


 故に、教会はきっと暇なのだろう。

既にピカピカの地面や長椅子を見れば、手のつける必要が無いことなんて一目瞭然だ。


 それても、毎日の日課は変わらないようで、奥からほうきを2本持ってくる。


 見様見真似で入口付近をはいて、持ってきた雑巾で拭いて、時間にしてほんの数時間でこの広い教会がピカピカになった。


「ありがとう、いつもよりも早く終わっちゃった」


 そんなことはないと思う、きっと私のためにそう言ってくれている。

優しい人だと思う、今更だけども。


「……おぉ、今日も早くからすまないね」


 神父さんがやってきた。

私のことは聞いているらしく、目を細めて


「いらっしゃい、アイビーちゃんだね」


「はい、お世話になります」


「あぁ、よろしく頼むよ、シアさんと仲良くね」


 そうとだけ言うと、私の返事は分かりきっているからか、そのまま奥の方へ去っていった。


「あそこで何を?」


「書類整理とかね、ほかにも自治体やボランティア、後は……まぁ、色々やってるのよ、それの整理や、配布する紙の作成とか」


 暇になった、やることが何一つとしてないのだ。


「……シアさん?」


「んー?」


「……この後何するんでしょうか?」


「何もしないよ……誰かが助けを求めに来たら、それを待つの」


「自分から助けには行かないんですか?騎士団とかなら怪我人は沢山います」


 仮想現実での実践訓練は魔族の文化としてよく思わないものが多く、魔族側としても仲間同士で殺し合うような形になるため基本的には使われていない。


 故に実戦形式の訓練では怪我人は尽きない。


「自分から助けに行ける人の事を『英雄』って言うんだよ

英雄なんですぐに生まれたりしない……滅多にない」


「カルさんは英雄でしょうか?」


 そう、素朴な疑問をぶつけると、口の端を曲げながら、唸る。


「……うーん……アイビーちゃんはどう思う?」


 今度は私に帰ってきた。

唸ることなく、即答できる。


「私の中では英雄です」


「なら、そうなんだよ、カルくんは凄く強いひとなんだ、生誕祭っていう大会で好成績を残して、破竹の勢いで突き進む期待の新人、前人未踏の迷宮を、その中の過去の英雄たちを1人、彼だけが全員と接触している。

そんな彼は未来の英雄として期待されている……受けおりなんだけどもね」


 少し恥ずかしそうにはにかむシアさん。

その言葉は週刊冒険者に書かれていた言葉と殆ど同じだ。


「……カルさんは、私を迷宮に連れて行ってくれますか?」


 そういうとギョッとした顔、予想だにしなかったのだろう。


「迷宮かぁ……アイビーちゃんが求めるなら、もしかしたらいいって言うかもしれない、かなぁ?

ただ、迷宮って世界の色んなところにあるし、冒険者は、多分どの仕事よりも死者が多いんだ、それでもついて行きたい?」


「私のせいでカルさんの邪魔になるようなことは絶対にしたりしません……そういえば、連れていってくれるかどうかも分かりません」


「それでも一緒に行きたい……一緒にいたいの?」


「はい、だから私は強くなりたいんです……今よりも、カルさんよりも」


 我ながら過ぎた願いだと自覚はある。

しかしながら、それを叶えること自体は酷く()()()そう思えた。


「アイビーちゃんがカルくんよりも強くか……頑張れば行けるのかなぁ?」


 『多分無理だ』と顔に書かれているが、無視して


「そうしたいです」


 と、言い張った。

幸い、時間は山ほどある。それをどう使うかだ。

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