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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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酒盛りの場

「んで?どうした?ラジアン」


 部屋に入ってきたラジアンに目的を問う。


「えへへ〜、カルカトス……お酒、好き?」


「お酒?まぁ……好きだな、うん、好きだ」


 前は忘れる為に飲みに行ったとはいえ、嫌いな訳じゃなく、むしろ好きだ。


「ならさ、飲まない?」


「お、いいな」


 同僚に正式になったが、まだ少しラジアン達への負い目はある……故に言われたことはある程度は聞くつもりでいる。


「ディスターヴともあえるよ」


 ディスターヴ……ちょっと待ってくれ、今思い出すから。


 そういう意味を込めて手を前に出す。


「あれ?ディスターヴ嫌い?」


「!思い出した!参謀!」


「あぁ、忘れてたのね……」


「それじゃ、珍味持っていっとくか」


「お!前に言ってたこと覚えてたんだ、やるねえ〜」


「どーも、それじゃ案内してくれよ」


「いいよーっても、すぐそこの仕事場にお酒持ってきただけなんだけどね」


「じゃあ、飲むのは幹部たちだけ?」


「だね、あと一応ミリアちゃんとナルヴァーの2人の右腕も参加してるね」


「へぇ、強いの?」


「ま、強いよ」


 『私たちには及ばないけどね』とも言いたいらしい。


「そういえばあのリングつけてないんだな」


 砂埃を立ち上げたあのとんでもなく重そうなリングだ


「あぁ、あれね、あれは訓練用、師匠が私にくれたんだー」


「へー、師匠」


 どんな人だろうか……きっととんでもない剣豪なのだろうな。


「そういうこと、カルカトスは相変わらずその仮面とローブ好きだよね」


「ん?あぁ、まぁこれはな、大事なやつだから」


「そう、物持ちいい人、私好きだよ」


「そっか、ありがと」


 てくてくと歩いて、短い距離の時間を潰す。


「お、来ましたかー!先輩方〜」


 ミリアが手を振る。

その横にミリアとは違ってピシッとした堅苦しいスーツの吸血鬼の男が……おてんば娘のミリアにはあってるかもな。


「2人とも、席に案内します」


 ミリア達ときっとついさっきまで他愛のない話をしていたであろうナルヴァーがいつの間にか立ち上がって、席の方へ掌を向ける。


 ナルヴァーの付き人らしい人は男の黒竜……うん、さっきの吸血鬼と同じく、真面目そうで、2人揃って強そうだ。


 案内された席は窓から外の夜景を一望できる席で、逆さのワイングラスが2つと、横にあるワインが、特等席であると示してくれる。


「ありがとう……ナルヴァー、ミリアもだけどまたゆっくりと話をしような」


「お呼びされれば何時でも」


「あ!私もいいですよ〜!」


 気持ちのいい返事に頷き、椅子を引き、ラジアンに先に座ってもらう。


「おぉ、紳士だねぇ」


「ま、ルールみたいなもんだろ」


「あはっ、かもね」


 さて、ラジアンに座ってもらってなんだが、俺はまだ座らずに当たりを軽く見回す。


「……私のことをお探しかな?カルカトス」


「!……あなたがディスターヴさんですか?」


 毒々しい紫色の髪、彼の持つワインの様に赤い瞳、年老いても容姿の変化がない魔族のはずなのに、年老いた老獪さと言うものを肌で感じる。


「いかにも……顔を見せるのは初めてかな?」


「?以前にどこかで?」


「あの時私とカルカトスが戦うちょっと前ぐらいに3人いたでしょ?魔王ちゃんと私と、あと一人がディスターヴ」


「!な、なるほどです」


「……以前よりもいい目をしていますね、濁ってはいますが、あの時ほどじゃない」


「はは、どうも……これ、良かったらどうぞ」


 アイテムボックスからジャノタンを取り出して渡す。


「アイテムボックスですか、鮮度が保証されるのは嬉しいですね」


 ニコニコとした柔和な笑みでそれを受け取ってくれる。


「老人との会話はそこら辺にして、ラジアンと飲んできなさい、女性を待たせるものじゃありません」


「は、はい」


 なんというか、終始ペースを握られた……掴みどころのないところがあるなぁ、あの人こそ幻霧っぽいけどな。


「……ごめん、待たせた、さ、飲もう」


 そう言いながら席に座ると、ワインを入れてくれる人が。


「ん、ナルヴァーのところの……」


「ガルダン君だね、ありがと」


 ガルダンというらしい。


「覚えていただいて恐縮です……お注ぎします」


 そう言ってワインを注ぐ。

そのすきに、ミリアの所の人がツマミを持ってきてくれる……チーズか?


「こちら、チーズです、どうぞご一緒に」


「ありがと、スカルバン君」


「どういたしまして」


 ナルヴァーとミリアの2人は雑談中らしい。

ミリアは楽しそうで、ナルヴァーは相変わらず仏頂面だが、楽しそうでもある。


「私もお邪魔してもいいですかー?」


 魔王様の声が響く。

一体この中の誰が断れようものか、満場一致でOKだ。


 ディスターヴさんの隣に行き、楽しそうに話をしている。

しかし、ジャノタンの方には警戒色強めである。


「それじゃ、カルカトス……乾杯といこっか」


 アロマキャンドルの柔らかい光に照らされ、ワイングラスが赤く反射する。


「あぁ」


「……カルカトスが来てくれたことに乾杯」


「……乾杯」


 チンっと控えめな音がなる。

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