新しい手足
「お疲れ様、強くなったね、2人とも
上から見させてもらってたよ、ラジアンの願いを叶えながら、私の目的も達成出来てうれしいよ」
魔王様が、嬉しそうに笑う。
と言っても、それは想像よりも二回りほど幼い少女だ。
「その、目的というのは?」
「君には新しい『手足』を与えようと思って、それに値するか値踏みさせて貰ったわけだね」
「て、手足?」
腕の当たりをほぼ無意識に触れる。
「……カルカトス……パーツ変えるみたいなことじゃないからね?」
ラジアンは知っているみたいだ。
「ラジアンに教えてもらうといいでしょう……説明して貰えますか?」
片目を瞑り、そういった。
「おまかせあれ!」
笑顔のままにこちらに振り向き、どこからか赤いふちのメガネを取りだし、説明をしてくれる。
「まぁ、ざっくり言うとね、自分専属の『軍』を手にするわけだ」
「軍?」
「そう、魔界の強者を四天王という更に上のものが統括するの、そのリーダーたる四天王によるけど、まぁ、第一に魔王様への絶対服従、次に私たち四天王への服従、3から下は個人個人で様々なルールを決めれるわけね」
「参考までにラジアンはどうしてるか教えてくれないか?」
「いいよ?『3つ 私と戦い勝利した暁には四天王の座を明け渡す』」
「な、なんでそんなルールを?」
「ん?あぁ、ただただ強い人と戦いたいからなんだけど……まぁ、自分の実力差さえも測れないやつは叩きのめして更生させるって言うのもあるかな?
昨日の敵は今日の友、その理論が根本にある感じ」
賢いラジアンはそれ以外にも色々意味がありそうだ。
「なるほど、お互い全力だからこその高め合いか」
「そ、私もカルカトスとぐらいしか全力でやれないからね……エンブラーさんは乗り気じゃないし、魔王ちゃんは戦ってくれないし、2人は……ちょっと弱いし?」
ナルヴァーとミリアの2人のことを言っているのだろうが……あの2人も戦った感じでは強かったぞ?
「ま、個人で勝つのが戦争じゃないからね」
「……その言い方だと、近々戦争があるとも受け取れるぞ?」
そういうと、少し残念そうな顔と、とても嬉しそうな顔が共存する表情で
「かもね?」
「私としては無いに超したことはありませんが……歴史はいつも繰り返すのです、その周期が、たまたま私たちに巡り合わせただけかも知れません」
「……俺はもちろん、魔族として、戦います」
「……うん、お願いするよ、四天王、幻霧」
「幻霧くーん!よろしくー!」
「……なら、ラジアンは?」
「……私は……横暴」
少し恥ずかしそうにそう言う
「……あぁ、たしかにな」
すごくしっくりした……けど、ムッとした顔で
「ちょ!?私これあんまり好きじゃないけど!?」
そう言っている……俺はいいと思うけどなぁ
「じゃあ、俺も幻霧っぽくないじゃん?」
「……私のイメージで勝手に着けたからなぁ……じゃあ、カルカトスは自分で決める?」
「あ、それでもいいんだ?」
「うん、ミリアちゃんは『純愛』ナルヴァー君は『音撃』参謀は『混乱』って感じ、私が横暴だから……まぁ、おさまり良い奴で」
おお、アバウトすぎて困るぜ……
悪夢はなんとなく違うし……何がいいだろうか……
顎に手をやり唸っている俺を見兼ねて
「まぁ、思いついたらいつでも言ってください」
と、気を利かしてくれる魔王様。
「あ、はい、すいません」
「謝ることはありません……むしろ謝るべきは私の方です、あなたにはいわゆる余り物しか当たらないんですよ」
「余り物?」
「はい、優秀な人材から引き抜かれるのは当たり前です、まぁ、魔界連合種族はその全てが高いステータスを持っていますが……強いけど性格に難アリな人達はやはり取られずらい傾向にあるらしく、その中でもはぐれた方々がそこにいます」
「……問題児集団ってことですか」
「……そういう事ね、それじゃ、早速あなたにお客さんよ」
「客?」
そう、俺から視線を外し、後ろに目をやる魔王様につられて後ろを振り向く。
「……初めまして、お初目にかかります……私、ダークエルフの『カーリャ シェーン』と申します……」
厳かな口調、鋭い視線に、精一杯の敬意を感じる。
「あぁ、初めまして、俺はカルカトス、おそらく君の上司になるものだ
こんな所で緊張するだろう、場所を変えようか
ラジアン、いい所あるかな?」
「……急に調子変わったね、正面出て、3個目の角にある喫茶店がおすすめかな?」
「サンキュ」
「……気をつけてね」
「ん?あぁ、行ってきます
それじゃ、行こうかカーリャ」
「はっ……」
【魔界連合種族】
魔王側の種のこと。
ダークエルフ、吸血鬼、鬼、邪竜、無論魔族もだ。
 




