カルカトス宅【シア】
インターホンを押し鳴らす。
「はーい」
ドアを開けて、聞き覚えのある声が聞こえてくる。
「どうも、今日はよろしく」
友達のカルカトスのお願いを聞き届け、今私は彼の家の前にいる。
靴を脱ぎ揃え、中へ入っていく。広い家だ。
「どうも〜」
アイビーちゃんがソファーの方で私を見つめる。
「こ、こんばんは!」
「はい、こんばんは〜」
可愛いなぁ本当に……そういえば髪も黒くて目も赤い……本当にカルくんのようだ。
どことなく顔が似てる……あぁ、なるほど兄妹だ。
「髪がかなり傷んでるね……切り方も無理やりって感じ……私がちょっと髪切りそろえてあげようか?」
「お、アイビーどうする?」
ぐつぐつといい匂いを漂わせながら何かを煮込むカルくん……匂いで何となくわかる。
「可愛くなりますか?」
「うん!それは間違いない!」
今でも可愛いんだから間違いなし!……質問も可愛いなぁ。
「よし!それじゃ、任せて!」
そう言って持ってきた紙袋を机に置き、アイビーちゃんに風呂場に案内してもらう。
「?その紙袋って?」
「?あぁ、これですか?これ『アイビー』ですよ」
カルくんは「?」と言った顔、アイビーちゃんも「?」
2人目を見合せ、紙袋を見たあと、カルくんはアイビーちゃんを見て、アイビーちゃんは手足をみている。
「?知らなかったんだ、アイビーって植物の名前なのよ」
「へぇ、花?」
「ま、そうだね、育てるのも簡単だし、良かったらどうかなーって」
「へぇ、ありがとうございます」
「いいのよ、あ!ちなみに花言葉はね!『永遠の愛』とか『不滅』『誠実』って言うのよ!」
「永遠……不滅……」
生命力が強く、育てやすい事もまた特徴だろうなぁ。
「それじゃ、行こっか」
「は、はい!お願いします!」
カルくんにも、わたしにもまだどこか緊張している感じだなぁ
髪を切りそろえ、その長い髪を整える。
「ほら、可愛くなった」
「!す、すごい!すごいです!」
そういうと褒められると、やった甲斐が有るというものだ。
カルくんには2度もプレゼントをもらった。
このヘアクリップと、以前の青いリボンのプレゼントボックスの中あった小さな鏡。
そんな彼には、もちろん、ただ、ものを貰ったから助けているという訳では無い。
友達だから、私が気に入っているから、様々な理由の中に、プレゼントのお礼も含まれている。
「し、シアさん」
「!なぁに?アイビーちゃん」
初めて彼女から話してくれた。
面と向かって目を合わせてはいないが、鏡越しにこちらを見て、話しかけてくれる。
「私、シアさんが来る前に、カルさんからシアさんのこと沢山聞きました」
「へぇ?ちょっと気になりますね」
「カルさんは、シアさんの事が大好きなんですよ!」
「はいぃ?」
突然の大告白……これ、カルくんは黙っててもらうように言わなかったのか……
「昔から助けて貰ってて、ずっと助けられて、一つ決めたことをやり通しているのがかっこよくて、自分のことを友達だって言ってくれるから、怖がらなくていいって私に言ってくれたんです。
だからきっとカルさんはシアさんが大好きなんですよ!」
あぁ、そういう意味か、全く可愛い表現をしてくれる。
「そういう意味なら、私もカルくんの事が大好きですよ、もちろんアイビーちゃんも大好きです」
ポンポンと頭を撫でる。
「……私も、シアさんの事、好きです」
きゃああ!!可愛い!
「……い、行こうか、リビングでカルくんが待ってるよ!」
撫でくりまわしたい衝動をギリギリで押さえつけ、ご飯を食べに行く。
「お、可愛くなったな、アイビー」
そう言われると、彼女は背伸びを繰り返し、喜びを表現している。
こうして見てみると、カルくんと同じぐらいの身長……あれ?私よりもはるかに大きい?
「ねぇ、カルくん、身長いくつ?」
「?180……ぐらいかな、いってたっけ?」
後半は自問自答だが、私の身長は157cmだ。
小さいことはわかっているが、にしても私とアイビーちゃんの身長差は頭1つ分程ある……
「……?シアさん?」
不思議そうな顔でこちらをのぞき込むアイビーちゃん……くそう!屈まないでください!惨めな気持ちになっちゃいます!
「くうぅ!今日の晩御飯はなんですか!?」
「お、怒ってる?」
「怒ってません!」
「……し、シチューです……」
シチューかぁ、私もたまに作る好きな料理のひとつだ。
パンとシチューと、サラダとお水。
「ほほう、カルくんはキノコ入れる派なんですね」
「シアさんは入れないの?あ、アイビー熱いから気をつけて」
さりげなく注意するところがお兄ちゃんらしい……シア流お兄ちゃんポイント3追加ですねこれは。
「私も入れる派です、母が違ったもので」
「へぇー、そうだったんですか」
ご飯の時は、アイビーちゃんは全く喋らなくなる。
食事に集中しているのだろう。
この私と座高が同じぐらいな所を見るに、足がかなり長いんだろうな……カルくんも、生誕祭で蹴り飛ばしまくってたし、足が長いのは彼にあってる。
「アイビーおかわりいるか?」
無言でコクコク笑顔で頷く。
「分かった……パン後何個ぐらい食べられそう?」
「にこぐらいです!」
可愛いなぁ、大きいのはこの食欲のおかげだろう。
微笑ましい限りだ……私はお腹いっぱいだから食器をキッチンに置きに行く。
カルくんはシチューを皿に盛っている。
それを心待ちにするアイビーちゃんが可愛い。
いいところだ、ここは
そういえばシアさん視点は初めてでしたね
 




