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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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日常的な

「……お風呂、入ろっか」


「……わ、分かりません……」


 お腹いっぱい、といった様子で椅子に座り、こちら向く。

あの量を食べ切るとは……どこにしまってあるのだろうか?


 じーっと見ていると「?」と言った顔をする。


「まぁ、風呂の入り方は、俺が教えるよ……服……あぁ、俺目隠しするよ」


 そう言って、タオルを持ってきて、目を隠す。


「そこの扉の先にあるさ」


 見えないながらに、最後に見た明るい世界を思い出し、指を指し、そのほうへ歩く。


「そ、そっち行きますね!」


 椅子を引いた音と、トテトテとよってくる音。戸を開く音。


「そこで服を脱いで、そこの箱の中に入れる。

俺がまた明日洗濯しておくとして、お風呂についての説明だ」


 衣擦れの音と、バサッと音がしたあと、彼女よりも先に、風呂に入り、ズボンを太ももの辺りまであげておく。


「いいか?……はいったかな?」


「は、はひっ」


 まぁ、見られてはいないとはいえ、全裸だし、恥じる気持ちも分かる。裏返ってるぞ、アイビー。


「まずここを捻ると、水が出る」


「おぉ!ませき!?」


「そうだな、そして、この赤と青のマークがある所を捻る。

赤の方へ捻ると熱く、青の方へ捻ると冷たくなる、どっちも上限がないから、気をつけて捻るように」


「はい」


「次に身体を綺麗にするもの達だ。

そこの茶色の頭をした奴が、シャンプー、頭の汚れを落としてくれる。

そこの隣の薄茶色がリンス、シャンプーの後に使うと、髪がサラサラになる……らしい

そこの石鹸とかは、近くにかかっているタオルを使って、泡立ててくれ」


「はい」


「それじゃ、頭は俺が洗うから、後頭部を俺の手の辺りにやってくれ」


 浴槽の中に入り、頭の位置を固定できるようにして、待っていると、椅子が動いた音が響き、手に髪の毛が当たる。


「よし、それじゃ、頭洗うからな」


 捻り、暖かいお湯を出す。

ちょうどいいぐらいの温度だ。


「それじゃ、行くよ?」


「は、はいっ」


 頭にお湯をかけると、ピクっと反応し、すぐにこわばりは無くなり、リラックスしてくれているようだ。

息を吐く音も聞こえてくる。


 頭を軽く洗い、シャンプーを手につけて、泡立てたあと、髪をあらいだす。


 最初はあまり泡立たなかったが、女性と俺では髪の長さが違うから仕方ない。


「目、染みてないか?」


「はい、大丈夫です」


 それは良かった。

その後、お湯で流し、リンスをして、髪質はまぁよくなった。


「サラサラです……凄い」


「アイビーは髪の毛長いからな、風になびくようになれば映えるだろうな」


「……頑張ります!」


「お、おう」


 次に身体の洗い方。

これは俺はタオルを持っているていで、同じ動きをしてもらって、シャワーの使い方にも慣れてもらう。


「よし、それじゃ、あとは身体を拭いておしまいだ」


 身体を拭いてもらったあと、ドライヤーを軽くして上げる。


「これも暖かい……」


 風と火の魔法具、これもまぁ便利だ。


「……家族って物理的にも暖かいからな」


 1人で悲しく夜を、冷たい地面の上で過ごさなくていい。


「下着はこの棚の中から好きなやつを、服はアイビー大きいから、俺のになってすまないが、これを着てくれ」


 流石に自分の服の配置はほとんど覚えている。

お気に入りの服となれば尚更だ。


 俺の体にも大きいシャツを貸し、スボンはまだ少し暑いから短いものを。


「……服きた?」


「……はい、着終わりました」


「そっか、なら目隠し外すね」


 そうして外すと、頬を少し朱に染めたアイビーが居た。


「それじゃ、寝室まで案内するね」


 屋根裏部屋に行こうとすると、アイビーの足が一瞬止まった。


「……どうした?」


「あれ、なんですか?」


 ソファーを見て、そういった


「ソファー……大きくてふかふかの椅子とでも言うべきかな?」


 彼女の顔を見ると、座りたいのだろう。


「水を持ってくるから少し座って待っててくれ

お風呂から上がったあとは水分補給もしっかりね」


 そう、教育的なこともいいながら、アイビーを座らせる。

ギシッと楽しげな音を立てながらソファーに誰かが座った音が聞こえた。


 冷蔵庫から、結露した水瓶を取りだし、コップに注ぎ持っていく。


「冷たいよ」


 そう言って、手渡すと、僅かに驚き目を開き、そして喉を鳴らしながら水を飲む。


「……お、美味しいです!」


「ははっ、良かったよ……ソファー気に入った?」


「はい!ふかふかでいいですね!」


「だろう?これは『仲間と選んだんだ』…………?」


 あ、そうだった、仲間と選んでいたんだった。


「へぇ、そうだったんですか……」


 彼女は思ったよりも感がいいのか察しがいいのか、少し申し訳なさそうな顔をして、コップを置いた。


「私、部屋は大丈夫です……その代わりに、良かったらここにいさせてください」


 リビングで寝たいのだろうか?ソファーは俺に少し小さいように、彼女にも小さいはず。


 足を外に出さないと収まりきらないそのサイズに、彼女は居心地の良さを感じたのだろうか?


 いつかのフレイは『猫って狭いところが好きなんですよー』と酔った勢いに言っていた気がする。


 猫……いや、猫ではないな。


「そこでいいなら、そこにしたらいいよ……屋根裏部屋が良かったらいつでも言って」


「はい!」


「それじゃ、もう寝よう……今何時だ……」


時計は3時30分を示しているな。


「寝るまでここにいるよ、ゆっくり休めよ」


 ソファーの横の床に座り込むと、寝転がった彼女と目線が合う。


「……カルさん」


「なあに?」


「ありがとうございます」


「……水臭いこと言うなよ……もう俺たちは『家族』なんだから」


 頭を撫でてやると、目を細め、そしてそのまま眠りについた。


 足音を立てずに俺も風呂に入り、服を着替え、明日の朝のために洗濯物を、物干し竿にかけ、洗濯機に服を入れて、洗い物も済まして、自分の部屋からタオルケットを1枚持ってきて、彼女の横で眠りについた。

【文明】


 ネルカート及び、現在のこの世界は1万年前に比べるとかなり進歩している。

魔法具の応用や、より優れた世界からの来訪者たちの助言の元、一般的なものから、高級品まで、取り揃えてある。


 火薬も発見されており、時折見かけることにはなるが、やはり魔法の下位互換として見られがちである。


 嗜好品は潤沢に存在し、一般人でも十分に手が届くほどに普及している。


 だがしかし、どこか文明の歩みは制限されている気もする。

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