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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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2人の帰宅

「……って言うわけで、コテンパンにして捕まえました」


「さ、流石はカルカトスさんとしか言いようのない戦績ですね」


 綺麗な顔、整った鼻にバランスのいいパーツたち。

男の人なのに綺麗だと思えるこの人は騎士団長『ホープ』さん。


 歳の方は43、その割には若く見えるし、その歳にしては騎士団長とはすごいものだ。


「それで……また明日来たらいい感じですか?」


「あ、はいそうですね、詳しい話はまた明日に……もう夜も遅いですからね」


「こんな真夜中まで仕事だなんて大変ですね……」


「ははっ、今日は私が番に当たってましたから……トホホ」


「噂によると奥さんもいるんですってね」


「えぇ!期待の娘もいますとも!きっと明日にでも私を追い抜いて強くなるんでしょうなぁ」


「気が早いですね……」


 16か17歳ぐらいになる娘さんがいるのは有名な話だ。


 少し、雑談をして、笑い合い、敷地の外まで一緒に歩いてでる。

その俺たちの1歩後ろをテクテク着いてくるあの女の子。


「あの子は確か被害者の子でしたっけ?」


「ええ……最も、あの3人よりは強そうですが」


 あの瞬足がそのまま蹴りになれば恐ろしい。


「やはりそう思いますか、私としてもそのレベルはあると思います」


「まぁ、こっちの方で保護するんで、お気になさらず」


「うん、信頼してるから多くは言わないよ、任せた」


『また明日』と言い、家へ帰っていく。



「……君、名前は?」


「……『アイビー』です……さっきはありがとうございました……」


「そっか、アイビー……下の名前は無いの?」


 そう聞くとこくりと頷く。


「そっか……へへっ、実は俺も」


 驚いたような顔でこちらを見るが、その顔を見ずに前を向いて歩き続ける。


「前はあったみたいだけど、今は色々あってなくてさ……あぁ、俺はカルカトス……長いし『カル』でいいよ」


「『カルさん』前はあったってどういうことですか?」


「カルさん……ええっと、なんて言うかなぁ……色々あったとしか言えないな」


「カルさんそんなに強いのに、名前を無くしたんですね」


「名前は捨てたんだよ、いらなくなったから

でもフルネームには憧れる……ファミリーネームって言うのかな?」


 アイビーは無言でじっと歩いている俺を見つめる。


「『アクナイト』どうかな?」


「アクナイト……いいと思います」


「だろ?『カルカトス アクナイト』と『アイビー アクナイト』」


「わっ、私もですか!?」


「ん?嫌か?」


「そ、それって私たち家族ってことですか!?」


「みたいなもんだよ、俺たちそっくりだし、ローブと仮面買いに行く?」


 少し恥ずかしいほどにウキウキだ、足が軽い……


「……そういうことなら……また」


「そうか、じゃあまたね」


 家の前に着く。


「立派なお家ですね」


「確かにね、俺もそう思う」


 どこか他人事の俺の言葉に疑問符を浮かべるアイビー。


「さ、中に入ろう……おかえり、アイビー」


「たっ、ただいまっ」


 あぁ、嬉しいなぁ、新しい音がこの家の中を駆け巡る。

聞いたことの無い音を奏でてくれる。


「部屋は……2人の部屋か、屋根裏、どっちがいい?」


「!や、屋根裏!屋根裏部屋で!」


「ははっ、了解」


 少し恥じらったように、下を向いているが、ニヤケているのが顔の端から見て取れる。


「……おそいけど、何か食べる?」


「は、はい!」


 まだまだお腹は減っているようだ……腕によりをかけるとしようか。


 余った食材や、貰った肉を使って、料理を作る。

好みは知らないから、俺の好きな物を並べる。


「……興味あるの?アイビー」


 キッチンに顔をチラチラと覗きこませるアイビーに何度か目が合って、そう切り出してみる。


「へっ?あ、は、はい!」


「そう、ならこっちにおいで」


「はい!!」


 俺と同じぐらいの身長の彼女が子供のようにピョコピョコ跳ねて寄ってくるのは違和感満載だ。


 というか身長高いな……これはデクターの服じゃなくて、俺の服を貸すことにしようか。


 ボサボサの髪も、後で風呂に入れようか。

この長い髪も、しっかりと手入れをすればさらさらになるのかな?

手を洗っている彼女の横顔を見ながら考えている。


「いいか?包丁の扱いには気をつけろ……いちばん有名なのは『猫の手』だ」


 第2関節を曲げて『ニャンニャン』と言った調子で見せると、彼女も真似をして、俺にみせてくる。


「そうだ、ちょっとだけやってみようか」


 彼女を前に立たせ、包丁を握らせる。

彼女の手の甲に触れ、後ろからアイビーを操る。


 骨ばった身体に触れながら、ゆっくりと包丁を滑らせる。


「……うん、上手だ、よくできてる」


 そう褒めると彼女はニコニコと笑ってくれた。

この子は笑えばやはり可愛らしい。


「それじゃ、このお皿を持って行ってくれ」


「はい!」


 ニコニコのまま、テーブルに運ぶ、足取りはしっかりとしている。


「スープはOK……よし、残りは俺が持っていくよ」


 大きなお皿に乗せて、少し重いものを感じながら、彼女の目の前に置く。


 大きな大きな肉!


「さぁ、召し上がれ」


「!……い、いいんですか……?」


 そう脅えたように聞く。

フッと笑いながら、頭を撫で、答える。


「家族だからな」


 その言葉を聞いて、彼女はフォークをやっと握ってくれた。

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