ヒトダスケドラゴン【サクラ】
「ありがと!お姉ちゃん!」
「うむ、人間の子供は脆弱だからな、あまりここらへ立ち入るんじゃないぞ?」
「はーい!」
「ぜいじゃくってなぁに?」
「ハハハ……ほら帰った帰った」
ライトが子供たちの背中を軽く押しながら家へ送っていく。
「ライト、その子たち頼んだぜ!
こんな依頼俺とサクラで十分だ!」
ラングの奴が親指を立てて私を差し置いて指示を出す。
「いいのか?サクラ」
「あぁ、構わん、私も同じ結論に至るだろうからな」
「そっか……なら、行ってくるよ
ほら、君たちおいで、お兄さんに着いておいで」
「やだー!お姉ちゃんがいい!」
「……だとよ、サクラ」
ニヤッと笑いながらこちらを向くラング。
「……ちっ、変われライト」
「舌打ちするなよ……ほら、お姉ちゃんだよー」
そう言うと、子供たちは私の足元に群がる。
「早く行こ〜!」
「う、うむ!」
「こっちは任せろー」
ラングもライトも十分信頼している2人だ。
「こっちこっち〜!」
私よりも小さい子供たちに手を引かれ、私よりも歩幅が短く足の遅い子供たちが私の前を行く。
そしてそれに大人しく着いていく私。
「お姉ちゃんそのでっけぇ剣なに!?」
「危ないから触るな!?指が飛ぶぞ!?」
そう言われながらも物怖じせずに剣に顔を寄せている。
まぁ、この剣はなかなかにかっこいいからな……
そんなこんなで話を続けていると、村に着いた。
彼女達の親からは大いに感謝され、思わず頬が緩むのが分かった。
「ありがとうございます……サクラさん」
「!知っているのか?」
「はい、新聞で……迷宮の件で知りました」
「……なるほどな……」
そう、親の人たちと話していると子供たちが私の足元にやってきて服の裾を軽く引っ張る。
「どうした?」
「これ!腕につけてあげる!」
紐……にしてはカラフルな紐を片手にそう言った。
「ど、どうすればいいんだ?」
「右手貸して!」
右手を彼女の前に差し出す。
手首の辺りに軽く、しかし外れないように強く結ばれる。
「これは……?」
「『ミサンガ』って言うの!その紐が切れた時にね!お願いごとが叶うんだって!」
「ほほう?」
赤とオレンジ色を混ぜたようなその紐を、まじまじと見つめる。
「おまじないようなものなんです、子供たちったら夢中で」
「……悪くないな、私も願いを込めるとしようかな」
「!何をお願いするんだ!?」
「それは言えないな、そういうのは言ったら叶わなくなるって言うしな」
「そ、そうなの!?」
「あぁ、私の生まれたところではそう言われてたな」
これは本当だ。
だから、心の中で願いを込める。
『………………………』
「ねぇおねぇちゃん!遊んで!」
「む!……し、仕方がないな……」
鬼ごっこやかくれんぼ、本を読み聞かせたり……懐かしいな、こんな生活。
人間としての平和な暮らしも悪くな……私は何を言っているんだ……
その後、子供たちと別れる時に酷く悲しまれたものだから『また来る』と約束してしまった。
指切りげんまんしたんだからな……守らなくては。
「済まない、遅くなった」
「おう!こっちは終わったから帰ろうぜ」
「あぁ」
帰りの馬車で話していると、ミサンガに気付いたライトが声をかけてくる。
「そういえばその腕の紐は何?」
「貰ったんだ」
「それつけてたら竜になれなくない?」
「……あ」




