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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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8月のとある雨の日【ラジアン】

「……ありがとうございます……助かりました……!」


 私はとある一人の女性に頭を深々と下げる。


「ははっ!いいってことよ!それより、君みたいな若者はこんな陰気臭いところに居ないで外へ行きな!」


 中にいるのは第1級危険人物、名を『カルラ』。

100年間、ここに閉じ込められているのだ。


 理由は全盛期の大量虐殺。

死刑にしようにも死なないという逸話がある。


「私をどうやって治したんですか?」


「んー?私の固有スキルはね、なんでも出来るんだよ〜、それで治したのよ」


「あんなに強い聖魔法を?」


「うん、代わりに代償を払ってもらったよ、その酷い聖魔法を治すに値する代償を」


「なっ!?それってなんですか……!?」


 何かを失っている……そして、何を失っているのかに気づけないのが怖い。


「ズバリ!『恋心』さ!」


「……はい?」


「いやぁー!いい歳した青春を謳歌する少女から恋心を奪うだなんて私も酷い女だよ!」


「え?ちょっとどういうことですか!?」


「あー心配しないでくれたまえ、君があの魔法を自力で敗れるぐらい強くなったら、恋心も帰ってくるよ〜」


「ええっと……つまりどういうことですか?」


「うんとね……あの魔法は今の君を蝕みいつか殺していた。

それを治すため、恋の心を代償に治してあげた。

失ったものを取り戻すには、そもそも失う原因を無くせばいい。

君の体の中にはまだ、聖魔法が残っている。

それを克服した時が、君の完全復活さ!頑張れ!」


 鉄格子を握り、中を見ても暗闇に溶けていて見えない。


「あなたは……何者なんですか!?」


「私?私はカルラ、ただの魔族だよ」


 その言葉には、自己紹介でありながら『もう帰れ』という意味が篭っているように感じた。


「……もう、帰ります」


「そうかい、頑張っておくれよ〜」


「また来ます」


「物好きだねぇ〜」


 地下牢から地上へ繋がる階段を上り、魔王ちゃんの所へ向かう。


「ねぇ、ディブロちゃん」


「なんですか?ラジアン」


 最近も書類整理をしているのは変わらないが、手を止めてこちらを向いてくれる。


「あの檻、何でできてるの?カルラさん?あの人を閉じ込めておけるなんてすごいね!」


 そう言うと口に含んだ紅茶を吹き出し、少し咳き込んだ後、答える。


「……ごほっ……カルラ……あの方を閉じ込めていられるわけないでしょ……あの人は出れるのに出てないだけですよ」


「えー?なんで?」


「それが彼女なりの償い方だからです」


「何をしての償いなんですか?」


「私もこの目で見たわけじゃありませんが、教科書通りの大量虐殺ですよ、人間との戦争中、街1つとそこにいた全ての命を丸ごと消し飛ばした……にわかには信じ難いですけどね」


「ひえー、その時代の人間が不憫でならないや」


「ふふっ、そうですね、それよりも早く仕事してください」


「っぐ……は、はーい」


 そう言いながらも外をじっと眺めて仕事に手が付かない。


「ネルカートはあっちかな……」


 彼は何をしているんだろうか?

生誕祭で見た彼は強かったけど不安定。

初めてあった彼は弱かったけど安定。


 とことん変な人だ。


「手、止まってますよ」


「あ、はい」

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