好敵手宅 調査
「……インターホン……ど、どうすればいいんだ……!?」
ここの家主は私ではない!むしろ私は関係ない存在!
『ピンポーン』「ひっ!……あわわわ、どうすれば!?」
覗き穴からよく見ると1人いる……鎧……あの竜の紋章はネルカートの騎士団だな。
『何故ここに?』その答えはつい先刻バンクが言っていたでは無いか。
『ピンポーン』
また鳴った。
今はおそらくアリバイがあるかないかの調査、そこまでピリピリしていないと踏んで、私が出ようか。
ガチャりと扉を開く。
私を見て少し驚いた様子だ。
完全に今の私の姿は腑抜けているからな……こんな可愛らしい服私に似合うのだろうか?
「さ、サクラさん?え、えぇっと……」
「ここはあの人間の家で間違いないが?」
「で、ですよね?な、なぜ?」
「墓参りをしてな、身体を冷やしたから風呂を少し借りたのだ、それの何が問題ある?」
ギロっと睨みつける。
「い、いいえっ」
よし、押し切った。
これで会話の主導権は私が頂いた。
「して?何用だ?」
「あ、え、ええっと……ここにお住まいのカルカトス ナイトメアさんに7月16日〜20日の間に何をなされていたのか聞きに来ました」
「急ぎか?」
「へ?あ、はい……まぁ」
「しばし待て、鎧は脱げよ、傷が付くやもしれん
傘はそこに立てかけておけ、中を濡らすなよ」
「へ?は、はい」
傘はさしてきているようだ。
「おい!人間!お前に客人だ!」
「んん!?なんだって!?」
「……だーかーらー!おまたせしているお客がいるぞっ!」
キッチンから勢いよく開く。
声の距離からもう上がっているのはわかっている。
扉を開き、伝えることにする。
「客?ちょっとまってて」
そこには上裸で顔を真っ白にしながら鏡を見ているカルカトフが居た。
「っっ!!お、お、お、おま、おままえ、お前ぇ!?どんな格好でおるんだ!?」
「ん?顔を洗ってるのが変か?」
半裸で洗面台の前で髭をそっている。
意外といい身体をしているな……割れてるし、鋼のような肉体と言うやつか……湯けむりのせいでやたらと色っぽく見える。
「……ふんっ!」
自分を軽く殴る。
「とりあえず!早く!騎士が来てる!」
「……騎士?わかった」
急いで髭を剃り、すぐにやってくる。
「服を着ろ!!!」
「えー!?めんどくさい……」
渋々着てはくれた。
目のやり場に困るところだった。
「……して、連れてきたが」
「あ、はい、ありがとうございます。
ええっとカルカトスさん、7月16〜20日は何をなされてましたか?」
「え?そ、その日は……うぅんと」
今は7月26日、五十層攻略は25日。
10日前のことなどさすがの私で………も……ん?10日前?
「おい、人間、十日前は確かお前が帰ってきた日ではなかったか?」
「ん?……あぁ!確かに!そうそうあの時ギルドにいたよな!」
「あ、アリバイがあると?」
「はい!ちょうどその頃は俺の死亡説も出てましたし、何よりも迷宮の見張りをしている騎士が二人いました、あの人達なら知ってるかと」
「なるほど、ちなみに時刻はいつ頃か覚えていますか?」
「ええっと……ギルドが空いていたし、お昼かな、夕方よりも少し前」
「なるほどなるほど……ご協力感謝致します。
あと……お邪魔しました」
このバカ騎士!?何を言ってる!?
「へ?あ、お気になさらず」
「では、失礼します」
そうして雨の町の中消えていく。
「さて……と」
そう言うと服を脱ぎ始める。
「!?人間!?お前何を考えている!?」
さっきの騎士の一言もあって……流石に抵抗させて貰う。
「何って……服触ってみろ」
言われるがままに服をつまむ……冷たい……湿っている?
「濡れてる?」
「そ、洗濯サボってたせいで服がなくてさ……まさかびちょびちょになって帰ってくるとも思ってなかったし」
「もう1人お前のパーティーには男がいただろ?」
雨に濡れた仮面を体を吹いたタオルで吹いている手を止め、こちらを向く。
「あいつな、あいつ俺と服のサイズ違うくてさ。
ま、半裸ぐらい普通になれてるよ」
それは慣れてていいものなのか?人間から離れていないか?
……人間から離れると言えば……
「そういえば人間よ、前から気になっていたが聞いてもいいか?」
「ん?いいけど、なんだ?」
「お前の髪の毛はどういう原理なんだ?黒が白になったかと思えば今みたいな黒9、白1ぐらいの変な割合の髪色して……イメチェンで髪でも染めたか?」
「あぁ、これな……なんて言おうか……そういう人としか説明できないな……『龍の鱗はどうして硬いの?』って聞いてるようなもんだ」
「へぇ、人間ってそんな変な機能もあるんだな、ラングも髪の色変わるのだろうか……」
なんてカラーリングを変えたラングを何通りか考えていると
「あ……その……多分の他の人は髪の色変わらないよ
俺みたいなケースは世界で1人だけだから」
「へぇ!?レアなんだな!なんでなんだ!?」
そう聞くと、表情に影を落とした。
「俺が『人間じゃないから』さ」
声のトーンも落ちた?
それよりもその答え……そういえば人ではなかったか。
初めて会った時から人間と呼んでいたが、大会でこいつは確か……
「……『合成獣』だったか?」
「……そうだ……」
「人間呼びは気に触っていたか?」
「……いや、むしろちょっと嬉しかったかな」
これは意外な答えだ、嬉しい……?
「……ど、どういう事だ?」
「何……ただ、少なくとも……」
そう前置いて、今までに見た事のない顔で……きっとこんな顔を見せるのは私が初めてであろう顔でこういった。
「俺はお前の前では『人間』だ」
「……っと、あ、えっと……そうだな、お前は人間だ」
「へへっ……ありがとうな『ドラゴン』」
「……ふんっ、いちいち礼を言うな『人間』」
それにしてもさっきの顔はなんだったんだ?
喜びに満ち溢れていながら、何か悲しい顔をしていた。
 




