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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
アレとコレの間
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好敵手宅にてニュースを【サクラ】

 オレンジを1つ口に頬張り飲み込む。


「……うむ、悪くないな」


 現在カルカトス宅。

仲間の墓参りの後、カルカトスの家にお邪魔している。


 あんな大雨の中、傘もさしていなかったのは泣いているのを隠していたから。


「きっとあの人間は気づいていないだろうな」


 あいつはそこまで頭の回るヤツじゃないからな……私と違って。


 冷蔵庫から、キンッキンに冷えた水を1杯いただく。


「っくぅー!美味い!冷たい水なんて川にしかないと思っていた!」


 魔法で出る水も冷たいってほどでもないし……宿やめて家買おっかな、少し羨ましい。


「あっつ!?!?」


 今頃風呂に入ったのか。

あいつも私と同じくベトベトに肌に張り付いた服を脱ぐのに手こずったのだろう。


 そういえば実家の癖で洗濯機にぶち込んでしまったが……まぁいいか、大量に服も入ってたし、後で回すつもりなんだな。


「ってめぇ!!!なんつー温度でやってんだ!?」


 そもそも温度に上限がないのが悪い。

調子に乗って楽しくなって思いっきり捻るとまさか沸騰した水が出てくるとは……指先がヒリヒリするがお水様々だ。


「はっ!軟弱者が!」


 私の口癖なのだろうか?

というか流石に人の姿をしている以上、指先までは竜じゃないからなぁ。


 ニュース番組を見る……11時30分はこんなニュースばっかり。


 どっかの貴族が殺された……ふむふむ……人間と魔族の共生に強く反対する文と、犯人は自害……


「続いては、現在話題沸騰中、ネルカートの迷宮で、五十層を守る守護者の討伐に成功したというお話です」


「おっ?」


 少し身体を前に出し、画面を見る。


「では、バンクさん、お話を聞かせてください」


「むっ!?」


 なぜあの男が呼ばれて私やカルカトスが呼ばれないんだ!?


「はい……まぁ、今回の討伐作戦……パーティーメンバー皆無事なのは俺のパーティーだけでしたからね……カルカトスにはこれ以上大変な思いはさせられませんよ」


「……わ、私の声が……聞こえているのか!?」


 むしろ心を読まれたのか?

だが、確かにそれはその通りだ。

思い返せばもしも『ニュースの際にお話を聞かせてください』などと今言われたら、死んだ仲間のことを自分で話さなければならないわけだから激高していたかもしれない。


「そうですね、バンクさん以外のパーティーは多かれ少なかれ、亡くなった方もいらっしゃいますからね」


「なんだその言い方は!」


「そういう言い方は良くないと思います。

数字としては1や2ですが、その1、2はパーティーメンバーの皆の中ではかけがえのないものなんですから」


「っと……し、失礼しました」


「おぉ!!いいぞ人間!バンク!」


 こいつは良い奴だ!


「それで……話をしましょうか。

まず、今回の1番の功労者は、やはりカルカトスでしょうね」


「やはりですか」


「はい、この討伐隊の結成、そして、俺達は1度は五十層から下に落とされましたが、やはり彼のパーティーメンバーの1人が助けてくれました。

そして、五十層の守護者……『五十層の守護者(フィフスガーディアン)』を討ち取ったのもやはり彼ですからね」


「……ですが、確かカルカトスさんは……その」


「……はい、仲間を全員亡くしました……今回1番悲しい思いをしたのも彼でしょう。

あんなにもまだ若いのに、彼らは彼にとって兄や姉の様なものでありながら、きっと彼が共に生きていく上で平等に接していたのは、あってまもないですが理解しました」


「……ジャンパーさん、デクターさん、ディンさんの3名。

皆さんいずれも生誕祭で仲間になり、皆さん犯罪者でしたね」


「……ですね」


「そういった経緯があってか、今回の五十層の守護者の件はかなり厳しい意見が多いとのことはご存知ですか?」


「……はい、もちろん……」


 そういうと、編集で

『調子に乗ったルーキーの末路』

『結局1番被害出てるし、リーダーの資格ないんじゃね?』

『犯罪者の人と一緒にいるんだし、いつかバチが当たると思ってました』


 と言ったことを言っている人たちの文がいくつか出てくる。


「っ!!こっいっつらぁ!!」


 拳を強く握る。

コップが割れないように、横に置いて、拳を作る。


「他にもガルスター卿の事件は、以前一悶着あったデクターさんをパーティーに加えていたカルカトスパーティーの犯行説さえ出ていますね」


「らしいですね、彼にアリバイがあることを祈るばかりですよ。

どんなものであれ、俺は彼の味方をしますから」


「カルカトスさんとご一緒に守護者をとうば……」


 ブツンとテレビを消す。


「……人間……あいつも大変なんだな」


 インターホンが鳴った。

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