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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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地上部隊と合流

「……!カっ、カルカトス君!」


 ……誰かの声が聞こえる……この声は確か……


「……アーガンさん」


「……勝ったんだね、五十層のその守護者に」


「……はい、こいつのおかげで……勝てましたよ」


「……途中、謎の光に覆われて、この下のキメラや僕達が傷を癒すことが出来なくなってね」


 ……あの光はそんな地下まで及んでいたのか。


「……その……こっちの方も全員無事というわけじゃないんだ……」


 ドクンと心臓が跳ね上がった。

同時に体もビクンと無意識に跳ねた。


「……それって……」


「……あぁ、数名……命を落とした」


 その話を聞いた瞬間、ラングとサクラも立ち上がり、こちらへ歩いてくる。


「……それは……誰のことだ……人間?」


 相変わらず高圧的な態度でアーガンさんに詰め寄る。


 既に再生した両腕で地面に手をつけて立ち上がる。


「……まず……サクラパーティのナプラさん

距離を詰めてきた敵に対して爆破を繰り返し、巻き込まれ……傷を治せなくって……ダメだった」


「……ナプラが……か?」


 呆然としたラングさんが立ち尽くしている。

ナプラ……矢を爆破させたあの人か……


「……済まない……僕が着いていながら情けない限りだ……!」


「……それで?他にもいるんだろう……?」


「……あぁ……次にフロウパーティのラン君とクロフ君

2人とも出血多量で……亡くなった」


「……これで3人……」


「あと、グリーズパーティーのワイマさん、フルーナさん。

調教済みの動物まとめて……だ。」


「……5人……」


「……バンクさんの所は犠牲者なし」


 ホッと胸を撫で下ろす。

あとは消去法で……きっとアーガンさんのフメテアパーティー……


「……うちのパーティーからは……テイル……

テイルも……失血死……傷を……治せなかった……!」


 アーガンさんが泣いている……少しして……鼻をすすりながら立ち上がり口を開く。


 これで終わってくれ……そう強く願い、次口が開くのを待った。


「……そして……『カルカトスパーティー』」


「……ヒュッ!?」


 息を鋭く吸う音が響く……

……まさか……嘘だろ……きっと無事だ……バンクさんと同じ感じだ。


「……ディンさん……『死亡』死因は同じく失血死……」


「………っ……うぅ」


「……か、カル……」


「……人間……」


「……ごめんなさい……!ごめんなさい……!」


 謝罪の声が五十層に響く。

ふと顔を上げるとみんな上がってきていた……そう……『遺体になったみんなも含めて』


 涙を流しながらグエルさんがこちらへ走ってきて、両手をつけ頭を下げ、深く謝る……誤っている相手は……俺だ


「……へ?な、なんで……なんでグエルさんが謝るんだ……!?なんでなんだよ!?」


「……私がミスをしたばっかりに……師匠が……私を……かばってぇ……師匠が……!!」


「……っううぅ……うああああぁあああ!!」


 慟哭。

握りしめるのは愛しき人の眼帯。


 ひとしきり悲しみを味わい、まだ苦しいけど上へ帰る。


 グエルさんがディンを。俺はデクターを。サクラがナプラさんを。フロウがランさんを。ソラさんがクロフさんを。グリーズさんはワイマーを。フェルズさんがワイマーさんを。ファクトさんがメリッサさんを。それぞれがパーティーメンバーを胸に地上へ帰還した。


 後にこの功績は大きく評価され、多大な報酬とそれと同時にこのニュースはネルカート中どころか世界中に広まり、大量の熟練冒険者たちがこの世を去ったことを悲しむ人達で溢れた。


 俺以外は犯罪者としてしか有名でなかった彼ら3人も等しく安息を祈られた。


「…………」


 今、俺がいるのは家だ。

黙っていれば黙っている分だけ静かな……異常事態だ。


 皆の部屋に行き、遺品整理を始める……どれをあいつらのところに送ってやろうか。


 各自の部屋で見つけた日記を持ち、リビングのスカスカのソファーに体を沈め、淡いロウソクの光で照らしながら読み進める。

さすがにルーレットで決めたとはいえ酷すぎませんか……?

冗談であった『カルカトス闇落ち計画』全然冗談じゃなくなってきて怖い……神は乗り越えられない試練を与えないと言いますがこれはちときつくないですか?

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