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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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羽化

「……無の魔力の抽出……」


 掌を広げ、ただ見つめる。

手汗と同じ要領でじんわりと出て来てくれないかと思っている。


 無の魔力の推進力は自然の力そのもの、自然魔法は自然を擬似的に再現したものとするなら、無の魔力はただの空気。


 それを捉えて動かせというのだ、難しい。

物理的に空気を読もうとしているのだ。


 何かきっかけを……自然そのもの……そう、カラルド・ボルテは大災害……『概念』なんだ。


「……世界との境界線を希薄に……自然と1つに……?ちょっと待てよ……これって……!!!?」


「り、リーダー?」


「アン!アンだ!間違いない!カルラド・ボルテのヒントはアンなんだ!あっはははっ!まさかヒントがこんな所に転がっていたなんて!!?」


「り、リーダー!?アンって誰よ!?大丈夫!?」


「あぁ!バッチリさ!過去最高急に最高のコンディション!あはははっ!なんだろうか!?トラウマに指がかかって!ほんの少し触り方を間違えたらそのダムがきっと決壊するだろう!だが!それでもここにしかヒントはないって絶対に言いきれる!!」


「……できるの?」


「あぁ!できる!今こそ!今だからできる!さぁ脱出の準備を進めよう!ディン!」


「え、えぇ!善は急げ、構わないわ!」


 俺のそのハイテンションに引きずられ、共にハイになるディン。


「『あの日の君は虚ろな幻影』!『今宵目指すは生ける厄災』!『概念が空を舞い世界を崩す』!『仰天動地も天変地異も生ぬるい』!『そうそれこそが』!《悪夢魔術(ナイトメアマジック)》〈胎動する世界(カルラド・ボルテ)〉」


 翼部はオリジナルの黒翼を、背中にはディンを載せる鳥かごを。


 黒く、そして体は傘のように尖り、風を全て受け流す。


「さぁ!きっと飛べるさ!今なら!」


「す、凄い……本当にできてる」


「まだ動かしてないけどね!」


 おずおずと背中に乗り込み、ディンが俺の体に触れる。


「『世界があなたを訪ねても』『あなたは居留守を続けるの』『世界は見つけられない』『永劫輪廻の輪の外へ』《絶無魔法(ゼロ・マジック)》〈世界への非存在証明(ゼロサイン)〉」


 真の意味で世界との関係性は絶たれた。


「世界の厄災が世界から消えたわけか」


「ほんの数分、世界平和ね」


 そんなくだらないことを語り合いながら、魔力を圧縮し続ける。


「こんなに魔力はいらないんだろうね」


「お試しよ、さ、飛びましょう」


「あぁ、飛ぼう」


 俺の得た新たな翼。

吹き出た魔力は羽化した俺の初めの産声。


 引き裂くような、おぞましい音は、時期に消えた。

音が消えたのではない『音を追い越した』のだ。

そう直感的に理解していた。


 五十層の天井を突き破り、視界の端に見えたフレイに脳を割くことすら惜しい程のこの速度で、何層も突き破り、そして止まる。


「……で、出来た……!」


「凄い!本当に行けた……!それじゃ私は……ちょっと寝る……か……ら」


 ガクッと倒れたのが背中を伝って聞こえてくる。


「お疲れ様、ディン……帰ろう……デクターが待っている」


 背負い直し、迷宮の階段にギルドカードをかざし、帰る。


「……さよなら、ジャンパー」


 48層から地上へ帰還する。

アンの事を思い出したのは本当の偶然でした。

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