自室紹介
「んで、できたな!お前ら!」
リビングに、買いたてフカフカのソファーに体を沈めるやつが俺を含めて5人になった。
ピカピカのテレビに反射して、満足気な顔が5つ見える。
「なら、くじを引こうか!」
ここで初めてみんなの顔を見る。いい顔だ。
そのくじで、部屋紹介の順番を決める。
「お、俺が1番か……」
順番は、カルカトス、デクター、フレイ、ディン、ジャンパーとなった。
「んじゃ、俺の部屋を紹介しましょうか!」
部屋の扉に下げてあるカルカトス、現在起きてますの看板を揺らしながら扉を開く。
この看板は皆買っている。
「はぁー、いい部屋じゃん」
黒を基調とした部屋で、布団を畳んで綺麗に部屋の端に置いている。
畳み方は何回もデクターと練習したから完璧だ。
カーテンは深い紺の色。
以前買った服やアクセサリーは1箇所にかけてあり、剣やローブなんかの冒険道具は1箇所に固めている。
他には小さな本棚と、近くの椅子と魔宝具のランタン。
英雄譚が沢山ある。
何よりもこの部屋最大の特徴は輝石を飾っている。
透明のガラスケース。俺以外は開けないし、凄く硬いのはナイトラインで検証済み、打撃、斬撃、魔法攻撃、全てへの体制を高める代わりに、所有者は簡単に開けるという縛りを儲けている。
ハウルも、ここにいる。
「次は私だな!」
デクター、起きてるぞ!の看板を激しく揺らしながら扉が開く。
「綺麗な部屋……デクターらしいわね」
そのディンの言葉にニヤニヤしてる。
とても日当たりのいい部屋で、彼女らしい部屋だ。
光が入ってきて、どこか神々しい。
白いカーテンは開け放たれている。
魔剣が反射してさらに拍車をかける。
布団は俺と同じように端に綺麗に畳んである。
俺よりもこういう点は綺麗なのだ。
男勝りなデクターが女の子なんだなぁと思わせてくれるのは、棚の中いっぱいの服。
「こんな服似合うはずないのにな、母さんが私に作ってくれるんだ……こんなヒラヒラ、騎士には似合わないっつーの」
苦そうな顔で、イタズラ小僧のように笑う。
まんざらでもない、と言ったところか。
「似合うと思うけどな」
その言葉はあえて口には出さないでおこう。
「次は私の部屋ですね!」
ハシゴを登る、そのハシゴにかかっているフレイ、起きてますの看板を横目に登る。
「おぉ、屋根裏って感じ」
ハンモック、ランタン、椅子、本、キャンプっぽいけど、いい部屋だと思う。
なんか落ち着く。
カーテンは落ち着きのある赤。
他に目に入るものはあまりないな。
ディンの部屋は、看板にディン、起床済みと書かれたもので、その戸を開く。
「本多いな!?」
書斎みたいな部屋だ。
灰色のカーテンがかかっており、椅子はレバーを引けばガクンと背もたれが倒れる仕様らしい。
椅子を倒した時にディンが珍しくはしゃいでいたのは鮮明に覚えている。
本棚の本は哲学や学術的なものばかりでとても理解できない世界の話だ。
「こんなに難しい本よく読むな」
「読んでみたら案外面白いものよ、また、かしましょうか?」
「ま、今度頼むよ」
その中の1冊『人間らしいとは』という本が目に入る。
今度借りる時はこの本かな。
ジャンパーの部屋はなんて言うか……古い部屋。
「アンティーク調の物が多いな」
椅子や、手配書、黒いカーテンにウイスキー。
「隠れ家っぽいだろ?」
なるほど確かに。
「他の手配書にナイフでも刺してあったらなおさらな」
そう言って笑い合う。
「なんだ!?ノックの回数は決まっているのか!?」
ノリノリで問いかけるデクター。
「あぁ!もちのろんさ!『ココン コン ココン』の、リズムさ」
デクターは何か驚いた顔をしている様だ。
「いいじゃない、そういう遊び心も大切よね」
ディンがそう笑う。
ちなみにキッチンは調味料や小麦粉や肉や野菜等など。
バスルームは男性用と女性用でシャンプーが別だったり、下着入れの場所がバラバラだったり、まぁ、なんせ配慮されている。
「それじゃ……今日は祝杯をあげようか」
酒を机の真ん中に置き、肉や野菜を盛り付け、並べ、椅子にみな座る。
「それじゃ、食べようか」
ガコンとジョッキが当たる音をジャンパーとデクターが響かせる。
チン……と静かに鳴らすのは俺とディン。
フレイさんはジュースを飲むみたいで、ディンと俺と一緒に乾杯する。




