ニューマイホーム
「……良し……よし!足りてる!足りてるぞ!」
1102万6832フォル、間違いなくある!
俺たちは今、41から50層のモンスターを狩りまくり、数週間、ついに目当ての家を一括で買えるレベルの金を手にできた。
「……いやぁ、本当に良かった」
この物件、家のサイズに比べて非常に安いのだ。
その理由は墓場のすぐ後ろにあることが原因らしい。
「縁起悪いな……ま、これでいいだろ」
そういう風にここを決めた。
「っしゃ!んじゃ今から家の中身にいこう!いいだろう!?リーダー!」
「あぁ!つーか俺も早く行きたい!行くぞお前ら!」
ディンも嬉しそうな顔で着いてくる。
「うん!下見通りのいい家だ!だが前よりも輝いて見える!」
「俺たちのものだからな!当たり前だ!」
「ここがあのカルカトスパーティーの本拠地となるのね」
「あぁ!早く楽しみだ!鍵を!早く!」
「あぁ!ほら!お前が開けろ!デクター!」
デクターは今回のお金稼ぎにおいて非常に大きな活躍を何度もした。
中ボスに勝てたのも彼女のおかげと言って差し支えない。
最近のデクターの伸び具合には目を見張るものがある。
ガチャリといい音がなり、そして、開かれた。
「っおおぉ!!玄関!玄関があるぞ!宿には無いものだ!」
「ジャンパー!靴を脱げ!汚す気か!?」
「っと!まずいまずい!」
「……それじゃ!各自!自由に探索!15分後に庭に集合!それではお前ら!またなっ!」
そう言って俺はキッチンに消える。
「おぉ!下見通りの最新式キッチン!」
水と火の魔石を使用し、水、お湯、コンロの火、冷蔵庫それら全てに魂を吹き込む。
氷の魔石は数が少なく、それゆえ高価なため冷凍庫はない。
「にしてもいいキッチンだなぁ……!」
「後ろ失礼するぞ!」
デクターが背後を走り抜ける。
「……あ、そうか、ここの隣はシャワールームか」
キッチンを跨がないといけないが、それにはしっかりと理由があるのだ。
魔石にもちろん寿命がある。
その寿命が切れたりすると変えの魔石が必要になる。
その際、この家はキッチンと風呂場の魔石を1つずつ交換するだけで事足りる……ざっくり言うと2分の1になる。
こういう機能美は大好きだ。
このキッチンからはだだっ広いリビングが覗けるな。
備え付けのテレビに少しホコリが被っているのが気になるが、それはまた掃除の時に考えるとしよう。
玄関に入ってすぐ、正面には階段、その階段を左にズレるとトイレ。
玄関の左右のドアが両方ともリビングに繋がっている。
凹の様な形をしたリビングでキッチン、シャワールームと繋がっている。
「リーダー!大変だ!!」
言葉は緊迫としているし、声も真剣だが、目は子供のように光り輝いている。
俺も同じような目で、イタズラっぽい顔で反応する。
「どうした!?デクター!」
「凄いんだ!シャワールームじゃない!おふろ!おふろがある!」
「よくぞ気づいた!その通り!この家は風呂がある!」
頭を撫でくりまわしながらそう答える。
「素晴らしいぞ!リーダー!お湯が出る!温度調節も楽々だ!
家とはこうも素晴らしいものだったのか!!?」
「いいや違う!俺たちが血と汗と涙を流して手に入れた家が!そこらの家と同じなわけがないだろう!
この家は俺が度重なる下見を得て、その果てにここにしたのだ!」
「おおぉ!!流石だリーダー!やはり私たちのリーダーはカルカトスしかいない!」
心酔した顔でそう叫ぶ。
「よし!2階行くぞ!デクター!!」
「もちろんだ!!行こう!!」
肩を組んで2階へ上がる。
家を手にしたら人間こんなふうになるんでしょうか?




