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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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いつも通りの日々へ

「んで、結局誰殺しに行ってたんだ?」


「……シュプ フング……逃げられたけど」


「!魔法生物学の第一人者?」


「なんでも知ってるな、ディン、その通りだ。

俺はあの男に作られたキメラさ、だから殺して、自由を手にしたかった」


 空っぽの手のひらで何もない宙を握りつぶす。


 宿の自室に帰ってきて、椅子に座り空を眺める。


「『俺は摘み取るもの』『終末論を綴るもの』『悪夢となり飲み込む』……か」


 作られたセリフと与えられた力をあたかも自分のように振るい続けてきた。


「《限界突破(リミットブレイク)》は、本当の俺だ、与えられたものじゃない、押し付けられてもいない。

俺という存在そのものなんだ」


 それが今の俺の心の拠り所。


「……はぁ」


 メモを取りだし、そこに今日のことを書き込む。

今まで何千と続けてきた《悪夢魔術(ナイトメアマジック)》の実験記録。


「やはり人型……いつも使っている慣れ親しんだ体なら、複製や増殖に、大した消費はないな。

それに対して、ドラゴンや、スライムなんかの慣れていない身体に関してはまだまだ課題が多い。

時間がかかるし、不完全だ。竜の鱗はもっと固いんだ」


 メモを新しくとる。

このメモは俺の核だ。

視覚を盗み見られるのは腹が立つが、正直このことをわかっても俺以外に《悪夢魔術》を扱えるものはいない……存在させない。


「……よし、それじゃ、今度の課題だな」


 『性転換』『違う人間への変装』『捕食した生物のデータ化』この3つに丸をつけて椅子から立ち上がる。


 女性らしい丸みを帯びた身体。

胸は少し膨らませ、髪も少し伸ばす。

男性らしい点は極限まで、どこまでも女性のものに変えていく。


「できた」


 そう言った俺の声は女性らしいハイトーンボイスだった。


「まるで別人だな……んんっ、まるで別人ね」


 話し方をより寄せると本当に女性のようだ。


 自分のことを人じゃないと理解してから、異性に欲情することが無くなったのは、俺自体にその生物の両性別のデータが存在していることが原因だろう。


 そして、俺がこんなキメラになった最大の理由、それは他生物の吸収。


 点滴や注射、実物の食事、あの手術を受けた日からひたすらに食い続けた。


 そして、体内で分解、能力のデータ化、他生物の力を自分のものにする。


 それが《悪夢魔術》


「……何を、食うべきなのだろうか」


 今、食べられるものの中で一番有益そうな生き物は……


 少し考えた後、自分の腕に強く噛み付いた。

ブチブチとちぎれる音、ぼたぼたと滴り落ちる音。


 焼けるような痛み、口の中に広がる生臭さと鉄の匂い。

咀嚼し、飲み込む。


「……明日から、お金稼ぎ再開だな」

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