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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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我が愛弟子【ディン】

「……師匠!?」


「……え?」


 街をふらついていると、声をかけられた。

私をそう呼んでくれるのはあの子だけ……


「……!グエル……!!」


「やっぱり師匠だ……!」


 黒いローブを羽織った彼女は私の愛弟子、たった1人の一番弟子。


「お元気でしたか?出所した時にお迎えに上がれず申し訳ありません……」


「いいのよ、あなたはもう独立した1人の魔法使いなの、捕まったのは私の責任なんだし、あなたが気に病むことはないわ」


「……はい」


「それでいいのよ……あなた、顔つきが随分と変わったわね、凛々しくなって、可愛いあなたの瞳は今も変わらないのね」


 首元に手を回し、抱き寄せる。


「し、ししょー!?」


「あなたが元気そうでなによりだわ……この後暇かしら?」


「はい!今日は休みですから」


「そう、なら、少しゆっくりしましょうか」


 公園のベンチに座り、話し合う。


「結局あの後カルカトスさんのパーティーに入ったんですね」


「えぇ、大会であなたの戦いを見ていたわ、体術の方も怠らずに、魔法の腕も上がっている……素晴らしいわ」


「ありがとうございます……師匠も凄かったです、相変わらず状況判断力がずば抜けています」


「ふふっ、あなたもいつかなれるわよ、魔女の名を名乗るにふさわしい魔法使いに」


「そうでしょうか?私が師匠みたいになれるなんてとても想像ができません」


「そうかしら?私はあなたが魔女と呼ばれる姿が容易に想像できるわ、ちょうど黒魔法の魔女の席は空いてるんだし」


「私が……いや、まだまだ足りません、もっと強くなって、そこで初めて私は師匠と並んで立ちます」


「そう、嬉しいことを言ってくれるわね、その時を楽しみにしているわ」


「はい!待っていてくださいね!」


 しかし、私の弟子も、あのバンクパーティーの一員か……感慨深いものがある。


 この子は本当に強い子、いつか私よりも強くなってくれるはず……だから、あの日この子を拾ったのよ。


「最近、新しく来た勇者の話をよく聞きます」


「そうね、新聞も週間冒険者も皆こぞって『カノ ユウジ』に魅せられてるわ」


「バンクさんも、最近は地上での活動を中心にしているんです」


「へぇ、そうなの、あなたもなのね」


「はい、今度魔族の人達と一緒に住むことが出来ない土地の開拓にも手伝いに行くつもりなんです」


「へぇ!そんな事もするんだ」


「えぇ……私達はあの日、迷宮でアライト ワクレフトに出会いました……彼を見て、私たちの魔族へのイメージは大きく変わりました……」


「うん……」


 続きを待つ。


「当たり前のことでした……『人間』って1口に言っても、全然違う……考え方も容姿も、何もかもが十人十色」


「そうね」


「それは魔族も同じだったんですよ……エルフや獣人のことは理解できていても……できた気でいられても『魔族』って言葉から続く負のイメージにつられて、個人を見ようとしなかった……」


「………」


「だから、私達は魔族との和平に協力的なんです……やっぱり平和な方がいいじゃないですか?」


「そうね、難しい話だわ……でも、そんな慈善活動を続けているあなたの名前が、そのまま魔女になってくれれば……魔女のイメージも払拭されるのかしら?」


「……そ、それって」


「魔女の名の未来をあなたに託せるかしら?」


「っ……今の私には……重いですけど……いつか……必ず」


「……そう、ありがとうね……あなたの師匠で良かったわ」


「師匠は今でも師匠ですよ」


「!……ふふっ、ありがとうね」

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