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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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戦闘訓練【ジャンパー】

「……んで、急に呼び出してどうしたよ?……デクター」


 俺は今呼び出され、ギルドの修練場にやってきている……場所で何となく察しがつくが、一応質問する。


「ジャンパー、私と勝負して欲しい」


「んー、わかんね、何故だ?」


「私は、今のパーティーの中では恐らく1番弱い……実力不足を感じてる、だから、2番目に強いお前と戦って、もっと強くなりたい!」


「……実力不足……か」


 デクターの噂は俺の耳にも届いている。

世界初、魔剣を2本持つ女剣士がいると。

人一倍正義感が強く、努力家で、熱血で……人一倍差別に苦しんでいると。


 そんな彼女は全くもって弱くはない、俺の同業者も、彼女の隊に捕まったことは何度もある。


 言っていないが、何度か見かけたこともある。

あの時のこいつは鬼気迫るものがあったと同時に、焦っていた。


 そんなこいつが弱い……?リーダーのパーティーのレベルが高すぎるだけだ……


 だが、確かにこいつは俺よりも弱いからな……


「簡単にいうぞ、搦手をもっと使え、お前はフェイント以外脳がないせいで、すごく戦いやすい……悪い意味でな」


「だが!それは……それは騎士道に反する!」


「戦場で相手が騎士道を守るか!?俺は元盗賊だ、だから断言しよう!お前みたいな騎士と正々堂々やり合う馬鹿はいねぇ!」


「っ!……でも!私は!騎士として強くなりたいんだ!!」


 それは意地か、覚悟か……いかんせん曲げることはできなさそうだ。


「じゃあ、正面から俺をねじふせてみろ、それが出来れば……盗賊の、俺レベルなら倒せるわけだ」


「!!……感謝するぞ!ジャンパァー!」


 二本同時に抜き、そのまま斬りかかってくる。

デクターの馬鹿力に真っ向なら勝てるやつはそういない……恐らくリーダーも小細工しないと無理だ。


「小細工全開で行きましょうかね」


 俺は魔法の才能がない。

本当にない。あるのは固有スキル……それと、魔法の代わりに洗練された俺の歴戦のスキル達だけだ。


 魔石を8個ばら撒き、場を整える。

そして、固有スキルを発動させる。


 8分の1……それも、既に引き返せはしない、背後の魔石に入れ替わる。


「……デクター……これで詰みだ」


 首に刃を当て、勝利宣言をする。


「……っ……くっ!」


「真っ向勝負を挑むのは全然構わない、お前の腕力や、実力、修練具合はある程度わかっているつもりだ……特に物理的な力なら、おそらくパーティー1のものだ」


「……わかってるさ!腕力だけじゃ!勝てないことなんて!とうの昔に!知っているんだ……!」


「お前は剣聖じゃない、剣1本でなんでも出来るわけじゃないん……」


「そんなこと私が1番わかっている!!!」


 食い気味に俺にそう言葉をぶつける。


「っ……す、すまない……ただでさえ手伝ってくれているのに怒鳴り散らすなんて……申し訳ないことをした……すまない」


「お前は剣聖になりたいのか?」


「へっ?」


「どうなんだ?」


「……な、なりたい……」


 その言葉の後ろには『でも絶対になれない』とでも言いたげな暗い顔をしているデクターがいた。


「お前は、くだらない文言が嫌いなんだろ?」


「……そうだ、あーだこーだ言って理由を並べて、私を否定して……私を見てくれない……だから、嫌いだ」


「どうして皆そんな風にお前を言うんだろうな?」


「……私が嫌いだからだろう、女のくせに、国宝とも言える魔剣に、2本も認められて、それが気に入らないんだろう……それがあまり強くないなんて話なら尚更だ」


「俺は違うと思うな」


「……何がだ?」


「きっと、みんなお前のことが羨ましいんだ」


「……は?」


 心底わからないと言った顔で見てくる。


「お前と地位が同じかそれ以下の奴らは、自分にはない魔剣に認められる才能と、お前のそのひたむきな姿を恐れて、羨ましがって、詰る部分が女だからという理由しか見つからないんだ。

お前よりも位が上のやつらは、いつお前に抜かれるかヒヤヒヤして、でも女のお前に怯えている姿なんて見せられないから去勢をはって、グラグラのままで立ってるだけだ」


 少なくとも、俺が見た限りでは、そう見えた。


「……そ、そんな訳ないだろ!?」


「俺はそんなお前が好きだぞ?

他の奴らがそう思っていても、でも、それでも、俺はお前が好きだ」


「………は?……は、はぁぁあ!?!?」


「だから、俺はお前を手伝うよ、さぁ、こい」

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