ダンスとワインのアインワイン
「……おぉ、ここか、なんか見た事あると思ったらこれだけ目立つ色してるからか」
アインワインの看板を下げ、気品溢れる方々が見える。
「行こっか……なんか緊張するね」
「たしかにな……」
扉を開くと、ネルカートの雰囲気は消え、別の世界に迷い込んだような錯覚に陥る。
「みんな踊ってるね……」
「踊ったことないんだよな……」
椅子に座ってワインを飲む……チビチビ飲むのはなんか変な気分だ。
フロウは誰かに誘われてそこで一緒に踊っている。
「私色々なことやってたから、こういうのも踊れるのよ」
そういって、手を取り、踊る……辺りを見回すと、剣を片手に舞う者もいた。
あれなら俺も出来るかもしれないな。
立ち上がり、少し前に進み、舞子の女性の動きを目に焼きつける。
何度も目があったが、その目は常に様々な人に配られている。
だが、俺の目が他の人たちとは違うのに気付いたのかある程度踊ると、剣の持ち手をこちらに向け、ピタリと止まる。
スポットライトが俺に当たる。
ニコッと微笑み
「どうですか?あなたの舞を見せてくださいな」
無言で剣を受け取り鞘から抜き……剣を見る。
「いい剣ですね……独特の反りがあって……」
「ふふっ、今はあなたが主役よ」
そういって、ワインレッドのドレスの女性はステージから降りていった。
目線は俺に向いている……
「魔法は?」
「どうぞ?」
なら、やれそうだ。
剣を振り、炎を僅かに纏わせる。
おおっと声が上がる。
グルグルと剣を回し、ピタリと止めて踊り出す。
動きは彼女の動きをトレースしたものを踊り……後半に行くにつれ、我流へと移る。
体を水にし、人の身では不可能な踊りをしてみせる。
体から花を大量に咲かせ、地面に舞い落ちるまでに全て焼き切る。
それも全て優美な動きで。
最後に剣をなげ、パチンと指を鳴らし炎を消し、自然落下する剣を鞘で受止め、持ち手を女性の方へ向けピタリと止めた。
歓声や拍手が上がる。
思った以上に盛り上がり、酔いからか、高揚感がやってくる。
「お見事、流石はカルカトスね」
「!知ってましたか」
「大会見たからね、もちろん知ってるよ」
そう言って剣を受け取り、また踊り始める。
テーブル席に行き、お酒を頼もうとすると、横からワインが滑ってきた。
「いい動きだったじゃないの、あたしの奢りさ、受け取りな」
赤い髪の活発そうな印象を受ける獣人の女性が奢ってくれた。
「ありがとうございます、いただきます」
その後はダンスに結局参加はできなかったが、楽しい時間を過ごした。
会計の時になって、初めてあの獣人がこの店の人だとわかった。




