回るネルカートの街
「……へー、ここが1個目……こんなのあったんだ」
「えぇ!ここが『洋服屋』ミルミットよ!」
「来たことあるの?」
白をベースとした綺麗な店だ。
「いーや?私の仲間に教えてもらっただけよ、さ!入ろ」
手を引き、中に入る。
チリンチリンと音がなり、来店を知らせる。
「いらっしゃいませ〜」
糸目のエルフがこちらを向き、そう言った。
軽く頭を下げ、辺りを見る。
「……わっ、この服可愛い〜」
「へぇー、男の服もあるんだな……!」
オシャレに興味はなかったが、マスターの作った俺は楽しめている。
お互い試着したり、おすすめの服を当てて見てみたりしている。
「あ、その服かっこいいね!黒い髪によく合ってると思う……あー、でもなんか髪型が……うーん」
姿見を見てみると確かに、随分とかっこいい服だが……髪型がどうもあってない……?
そんな俺たちを見かねたのか、エルフの店員さんがやってきて
「ちょっと頭触ってもいいかな?」
「ん?あぁ、定員さん、どうぞ」
少ししゃがむ。
わしゃわしゃと髪の毛をいじる……
額の当たりがスースーする……鏡を見直す。
「お、オールバック……あ、でもあってるかも」
「ここに私のピアス付けて……あ、穴開けなくてもいいやつだからね〜」
わお、我ながらこんなにも不良感が出るものなのかとびっくりする程だが……うん、悪くない。
「アウトローな感じでかっこよくなったね、少年」
「はい、ありがとうございます、定員さん」
「どうぞごゆっくり〜」
そんな感じで去っていく店員さん。
「フロウ、どうかな?」
「うん!かっこいいね!私もそれ好き!髪型が怖いから知り合いじゃなかったらちょっと関わりずらいけどいいと思う!」
「それ褒めてる?」
笑い合う声が響く。
「この服とかどう?フロウ」
同じく黒い服で、肩と肘の当たりが露出している。
会えておへその辺が出るような服装だ。
「あぁ……すごくヒラヒラしてるね」
「あれ?こういうの苦手だった?」
「いや、なんか私には可愛すぎるかなって」
「そうか?俺は合うと思うけどな……?」
「……なら!着てみる!」
試着室に入り、少しした後に出てくる。
「どうかな?」
若干恥ずかしそうにおへその辺りを抑えながら出てくる。
その問いには親指を立ててこう答えた。
「すごくいい」
その答えに喜び、お互い1着ずつ買っていった。
会計の際「これ、ミットアインのクーポン」と、定員さんに渡された。
「ミットアイン……?」
「次に行くところだ、ラッキー」
スケジュールとちょうど噛み合ってくれているらしい。
「そうだね、ラッキーだ、行こうか」
「うん……でも、そろそろ髪型直してみたら?」
「っと、まだこの髪型だったか」
髪を弄り、元に戻しながら、街を歩く。
「……なんか……視線が多い……」
「ははっ、私たち有名人だからね」
ヒソヒソと、ちらちら見ながら何かを囁く人達。
その中の一人の少年がやってきた。
「フロウ様ですよね!?サイン、お願いしてもいいですか!?」
「いいよ、ちょっと待ってね……君、名前は?」
「!ダンです!」
「了解、ダンくん、どうぞ」
「!ありがとうございます!!」
「……いいなぁ……」
「ふふっ、きっといつか、サインを迫られるよ」
「……いや、風の勇者にサイン貰えていいなぁ……って」
「!ははっ、そういうこと?」
「また欲しいもんだな……今日はもらえなさそうだけど」
「……また、あげるよカルカトス『くん』」
俺もあの少年と変わらないわけか……
「そりゃどうも」




