不穏な影【ラジアン】
「……まおうちゃーん!おっはー!」
今日も今日とてお仕事、私達、四天王や参謀は今や大忙し……その理由は人間たちと仲良くすることを決めたから。
「はい、おはようございます、ラジアン……おや、そちらのお方は……」
「おはようございます、魔王様、本日は私もお邪魔します
人間たちとの平和な世界へのご助力、何卒、私にも手伝わせてください」
エンブラー、私の中では一応ライバル視している1人……まぁ、彼は戦いを好まないが故に四天王になってくれなかったけど、仕事はよく手伝ってくれる。
魔界の貴族一の協調性、平和主義者、実力者。
「……おはようございます、ラジアン様、紅茶をどうぞ
エンブラー様も、少々お待ちください、紅茶の方を入れてきましょう」
「お!気が利くね〜、昨日言ってた茶葉がコレかぁ……ありがと、ナルヴァー」
「あぁ、頼むよ、砂糖は2杯で」
「はっ」
仰々しく戻り、仕事を再開し始める私の後輩ナルヴァー。
「あ、せんぱーい、いい匂いしますね……紅茶ですか!なら私の作ってきたマフィンをどうぞ!きっと美味しいですよー」
変な癖のある私の後輩、ミリアちゃんがチョコチップの入った美味しそうなマフィンを渡す。
「わー!ありがと!美味しくいただくよー!」
さて、渡された書類に目を通すとしますか。
娯楽島の話は結構面白そうだが、名前すらまだ決まっていないのか……でも、この調子で行けばそう遠くはない時期に出来そうだなぁ。
こっちのは……ほーほー
元々危険なモンスターが多発するせいで人が住むことが難しかった土地を、私たちと協力して、生活可能な土地とする……か。
共存の街、第2号って感じで行く気なのかな……うん、いいと思う。
こっちも色々不足してるし、他国との交流はきっとためになるはずだし。
魔界にだっていいものは沢山あるからね。
「ラジアン、口にチョコついてますよ」
「ん?あ、本当だ、ありがとー!まおうちゃん」
「はい、どういたしまして……あぁ、真面目に読んでると思ったらその書類ですか」
「うん!いい話だよね、共存の街、沢山あった方が楽しそうでいいなぁって」
「ふふっ、ラジアンは、人と戦うことに反対派なんですね」
「うーん……そう言われるとそうじゃないなぁ。
強い人と戦いたいんだ〜、それ以外の人と戦うつもりは無いよ」
「根からのバトルマニアですね」
「あなたもいつか倒すからね」
「望むところです」
ニコッとエンブラーがほほ笑みかける……なんだろう、このいなされてる感じは。
「それと……あ、これこれ、これも気になってたんですよね」
「ん?これは?」
「ギルドから国への報告書、ここにも1つ送られてきたんです。
内容は……暗き森で体に不思議な模様のあるデュラハンを発見したとの報告。
心当たりや、対処法がないか、出来ればそちらの方でも考えて欲しいって所かな……発見者はカルカトスパーティー」
「!カル……!」
「へぇー!せんぱいが?」
「流石は僕たちの先輩ですね、普通に仕事してる」
まぁ、きっとまだ、記憶とか戻ってないんだろうな……
「変なデュラハンか……まだ倒せてないのかな?」
「どうやらそのようで、勝てないと判断し、帰ってきたそうですよ、最低でもゴールドランクは必要って書いてますね……まぁ、これは発見者の彼のパーティーメンバー、ジャンパーと、あと、リーダーのカルカトスが言っていたそうです」
「……ん?カルって、ランク何だっけ?今」
「シルバーランクって書いてますよ……下から二番目ですね」
「えぇ……大会出たり、迷宮攻略してるのに、あんまりなんだね」
「昔、僕が勉強した限りですと、迷宮で名をあげることはあまりランクアップに貢献しないみたいですよ。
それこそ大会に出たりして、地上で名をあげることに意味があるみたいです」
「へぇ!物知りだね〜、私はそこら辺あんまり興味なかったからなぁ……そっか、力よりも貢献度か……」
なんだか悲しいな、たまに、本当に強い人が、正当な評価を貰えないのか……
「そのデュラハン、実物を見ないことには分かりませんね……」
「あ、なら私捕まえてきましょうか?私多分生け捕りできるよ!……ん?デュラハンを生け捕り……なんか違う?」
「確かにどう言うのが正解なんでしょうね……ま、いいでしょう、この1件はラジアン、あなたに任せましょう、最悪殺しても構いません、実物の回収をお願いします」
「はーい!」
多分会話も可能だろうし、楽な仕事貰えたかな。
ラジアンが出ていったのを見て、魔王は報告書にこう書いた。
『5月21日、得意個体のデュラハンの捕獲に四天王が1人ラジアンを派遣。
捕獲命令遂行後に進捗や原因を報告する。』
「ラジアンさん、元気ですね」
「えぇ、彼女はあれぐらい元気じゃないと……きっともっと強くなりますから、前向いてもらわないと」
「ですね、きっと強くなりますよ……私やあなた以上にね」




