不穏な影
「意外と楽勝だな」
「一体一だと普通にきついかもな……」
なんて話をしながら暗き森を歩き続けていると全員が、同時に足を止めた。
「……なぁ、リーダー……いや、皆……気づいたよな……?」
ジャンパーが恐る恐る聞いてくる。
「お前もか……俺もだ」
「私もだ……やっぱりだよな……」
「気配が違う……とんでもないのが来る……?」
「大量発生の原因でしょうか……?」
全員が顔を見合わせる。
今の段階、距離はかなり離れているが……1つ、わかることがある。
『一体一だと絶対に負ける』
ミランには悪いが……同じかそれ以上に強い……パワーバランスがおかしすぎる。
「……どーするよ、やる?手に負えるかわかんねぇよ?」
「……1度引いてギルドでレイド形式を取るのもありだ……」
マジで強い……ゴールド以上が最低限の死者を出さないレベルだと思う。
この距離で俺たちは威圧されて立ち往生しているのだから。
恐らく、この5人で勝てないことは無い……正確にはフレイさん、聖女の力を借りれば恐らく勝てる……相手がアンデットならばの話だが。
「確証も無く戦いに行くのは不利すぎる……ジャンパー……少し危険なこと頼んでもいいか?」
「……斥候だろ……任せろリーダー、俺はそのためにいるんだ」
そういうと、1人森の中に消えていった。
「……よろしいのですか?」
「あぁ、あいつにはいつもキツく当たってるが……1番信頼している、あいつならやってくれるって確信がある」
そんな話をしていると、ジャンパーが血相を変えて走ってくる。
「すまん!見つかった!無茶する!」
「仕方ない……!」
覚悟を決めて剣を抜くと
「バカっ!?戦うなっ!」
ジャンパーが柄にもなく真剣な声を出した。
そう言った瞬間、ジャンパーが刃を収め魔法を使う。
「《一時撤退》!!」
森の外に視点が切り替わり、移動する。
「ジャンパー……お前がやったのか!?」
「……あぁ、まぁな」
「何と入れ替わった!?誰をあの化け物の前に飛ばした!?」
こいつの固有スキルは一定以上の魔力を持つ対象物と入れ替わる能力。
つまり、ここにいた誰かと入れ替わったのだ……!
だが、ジャンパーは平気そうな顔でこういった
「安心しろ!俺が、俺たちが入れ替わったのはこれだよ」
そう言って石を取り出す……迷宮探索を生業にしている俺は毎日見る物だ。
「ま、魔石……?それは第5階級……まさか」
「そのまさかだ……昨日のうちに試しておいてよかったぜ、俺と入れ替えるには第5階級、ディンとデクターは第6階級……そして、困ったことにリーダーは第2階級、そっちのお嬢さんはどういうことか……第1階級、魔力の密度や質、それら全てが俺やリーダーをはるかに凌駕するわけだ……全員まとめ飛ばしただけで俺はもうヘトヘトだ」
「だから今日はあんまり魔法使ってなかったんだな!合点がいったぞ!」
デクターがそう笑っている。
ディンは表情が曇っている。
「……ジャンパーのスキルが同等か、それに近い実力がないと入れ替えられないと言うのなら……リーダーはともかく……フレイ……あなたは何者なの?」
「か、カルカトスさん……」
聖女様が助けを求めている。
「……この際だ、ちょうどいい、隠しておいて悪かった……この人は聖女、フレイ メイ テンスその人だ……そして」
「五十層の守護者でもあります」
「……ははっ、やっぱりとんでもねぇ……」
力なく両手を広げて地面に倒れ込む。
「んなっ!?聖女さまぁ!?」
目を見開き、大声をあげる。
「い、以前の迷宮探索の時に、道理てわかるわけだわ……聖女様なら、勇者と出会うことなんて可能だし、ましてや同じ時代に生きていたならそれは必然……本当にあのアイテムボックスは本物なんだ……」
ディンは以前の迷宮探索の時に違和感を感じていたみたいだ、流石にあれだけボロを出していたこともあって気づかれてたか。
「でも、とりあえず先に、さっきの不穏な気配について、ギルドに報告しに行きましょう……!」
「あぁ、それは俺も全面的に賛成だ……ありゃまずいわ……めっちゃ強そうなデュラハンがいてさ、体に変な赤い模様があったんだよな」
「赤い模様……心当たりないなぁ」
マスターの新しい化け物かと思ったが、赤い模様に心当たりは無いなぁ。
「私も知らない……」
「あ!わたしもしらない!」
「……不気味ですね」
不穏な影が森に落ちる
誤字報告、来ていてなんだか少し嬉しいのは何故でしょうか。
わざとやってる訳じゃないけど、教えて貰えただけで物凄い感謝!
最大限の、感謝!




