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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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五十層 聖域

「……ぷはっ、50層、ここが折り返し地点……!」


 傷をポーションで癒しながら、50層へ足を踏み入れる。


 50層は星空とは打って変わって、神聖な雰囲気を感じた。


 真っ白の壁や地面、だが、所々に星空が見えるのは、やはりここも41層の延長線上であると思わせる。


「……あれ?守護者は……?」


 いや、まだ現れていないだけなのかもしれない……少し気がはやっているな。


「……ふふふっ、そんなに期待されると出ない訳には行きませんね」


 金色の髪、青色の瞳、白いローブに、金糸の装飾の施されたものを着る女性。


 綺麗で、透き通るような声を俺に、優しく笑顔でかける。

なんて言うか、一言で言うなら、ものすごくいい人だと思う。


 いいひとオーラが凄いのだ。

普通の人なら、悪い所の1つあってもおかしくないはずなのに、完全にないのだ。


「……あなたが……?」


「はい、私が、この名級の五十層の守護者を務めております『フレア メイ テンス』と申します」


「フレア様……!!??」


 剣聖の次は初代聖女……!?


 本当にどうなっているんだ?この迷宮は!?


 本来なら疑えるはずなのに、俺の本能がそれを拒否する。


「ご存知でしたか、ふふふっ、私どんな風にして語り継がれてますか?」


「え?いや、それはなんて言うか……その、すごく色々なことをしていたみたいですからなんて言うべきか……?」


「!あらあら!そうなんですか、でしたら私も少しその本読んでみたいですねぇ」


「へ?いやいやいや!?ダメですよ!?そんなことしたら地上は大騒ぎどころじゃないですよ!?」


「流石にダメですか……なら、あなたは私の願いを叶えてくれるのですよね?」


「へ?あ、はいそのつもりですよ」


「『アライト ワクレフト』『クロン ウェイパー』『マイン ウェイパー』『ミラン ダリン』皆さん、最高の形とは言えなくても、確かに幸せそうにこの世を去りました」


「は、はい」


「そして、私の願いはたった一つ」


 聖女様の、ただ一つの願いとはなんだろう?


「それは……その……」


 言い淀むところに、少しヒヤリとしたものを背筋に感じたが、彼女の、恥ずかしそうな顔を見るに、そんなヒヤリとした物は、ある種の高揚感に変わった。


 こんなにも美しい人が頬を朱に染める、それを見ることが出来たことに、何故か喜んでいる。


 恋……では無いのだろう。

ただただ、美しい人を見て、一人の人間として喜んでいるだけだ。


「『人助け』を……もっとしたくて」


 その、ある種素っ頓狂とも言える、この殺伐とした迷宮には、あまりにも不似合いな、日々命をかけている、余裕のない冒険者達には、到底思いつかない『願い』


 それを見て、出た言葉は


「もちろん、手伝わせてください……生前も、死後もあなたのその存在だけで何万人も救われていると思いますけどね」


 実際に『この身体の元』は彼女に出会えて、今までの誰に出会った時よりも喜んでいる。


 それだけに、この高揚感は俺をも包み込む。


「そんな聖女様のする人助けに助力できるだなんて……凄く光栄です」


「ありがとうございます……そうですね……まずは、私の存在だけで救われた、そんなふうに言ってましたよね?」


「はい、そうですね」


「……なら、まずはその方々を見てみたいです……1万年前と、世界はどんなに違うのか、気になってますし」


「……分かりました、なら、せめてそのローブで顔を隠してください、それだけで大きく変わります」


 1万年前の彼女の声を知っているのは今の世ではきっと俺だけだろうから、顔を隠せばまずバレはしないだろう。


「あとは、極力聖魔法は使わないように……もちろん、願いのために使うのなら、絶対に止めたりはしませんよ」


「はい、あなたが私を思ってくれている気持ちは十分にわかってますよ」


 そう、たしなめるように微笑むと、歩き、俺の目の前にまでやってきてこういった。


「上へ行きませんか?私にかけている時間は、あまりないでしょう?

できるなら早く私を処理して、最深部へ潜っていただきたいんですけどね」


「そ、そんなことは思ってませんよ!?」


「そうですか……でも私は死人、死人の願いなんて、あまりにも贅沢すぎますよ」


「……あなたはそんな贅沢が許されるぐらいのことを今までの人生で築き上げてきたんですよ、だから、そんな心配はいりませんよ」


「……そうですね……そうですね!聖女である私がこんなになよなよしていちゃダメですよね……!

ありがとうございます、それでは行きましょう……!」


「はい、案内なら、俺に任せてくださいね」


 四十層を目指して、聖女と歩く

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