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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄?そんなのどうでもいいです
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41層 輝く迷宮

「……おぉ、本当にできた……便利だなぁ」


 ダンジョンの石版に言われた通りカードをかざすとあっという間に四十層の広間に出た。


 あの夢のような不思議な空間は消え、迷宮らしい石レンガでできた無骨な、それでいてだだっ広いだけの空間が代わりにあった。


 階段を道なりにくだり、新たな階層へ足を運ぶ。


「……おぉ……!」


 迷宮……と言うよりも夜空?

暗くて真っ黒の床には星のようにカラフルな光が転々と存在している。


 天井にも、満点の星空が広がっている。


 地面の星の上に立ってもその地面の星が影に塗りつぶされないところを見るに、上の星が反射しているという訳では無さそうだ。


 この地面の星の入った石は何なのだろう?また図書館で調べてみようか?


 迷宮から帰ったあとのことを考えながらテクテクと奥へ進む。


 もちろん、最大の注意を払いながら、そして速度はしっかりと出す。


 ちんたらしてると抜かれてしまっていたからこそ、取り返さなくてはという1種の焦りが胸の中にはあった。


 いつからだろうか?『迷宮から帰ったあと』を迷宮の中で考えだしたのは。


 初めのうちは、ただ1歩進むのすら怖かった。


 この後のことよりも今現在に十割頭の中を取られていた。


 それが、何故だろうか?未曾有の、未知の、前人未到の、この四十一層、なぜだか、あの日の1歩を踏み出す時よりも随分と軽く足がすすむ。


 一層の方がきっと何倍も楽なのに。


 それはきっと経験のおかげ、自分よりも何倍も強い人たちに打ち勝ってきたという、その結果からなるよくいえば自信、悪くいえば慢心がこの足を進めさせる燃料となる。


「……きたきた……初めて見る!」


 小さな……と言っても全長1.5mは優にあるトカゲだ。

シルエットは知っているトカゲと大差ないが……その見た目だ。


 よく目を凝らさなければきっと見逃していただろう。

そうと思えるほどの黒くて、星のような光を柔らかにこのトカゲは発していた。


 こういう完璧と言えるレベルの擬態を見るといつも思うことがある。


「君たちはどうやってその姿になったんだい?」


 自分の姿を自分で見ることなんてほとんど出来ない。


 なのに、周りの背景に完璧に溶け込める位置でピタリと止まり、待ち続ける。


 きっと第三者の介入があったのだろうと、いつもそう思っている。


 初めての、このミランから貰った剣の試し相手だ。


 元々俺が持っていた黒い剣と、ミランの剣の二刀流で構える。


 その、文字通り宝石をはめ込んだ目はこちらをギョロりと捉えると、間髪入れずに飛びかかってくる。


 が、幸いあまり早くはない。

しっかりと目でとらえ、ギリギリで避けて身体に刃を滑らせた。


 黒い剣、そしてミランの剣で切りつける。


 一瞬黒剣が引っかかったが、ミランの剣はいとも容易く引き裂いた。


 トカゲは真っ二つになって光の粒になる。


 凄く硬いはずなのに手応えすら感じなかったぞ?


 黒い剣は立派な名剣だ、名前は確か『赫黒剣かくこくけんナイトライン』


 ミランの剣はきっとこの赫黒剣よりも優秀だろう……が、しかし、名前はない。


「……ミランでいいかな?」


 そう、剣に名前をつけようとすると、なんとも不機嫌そうな気配を剣から感じた。


「い、嫌なのか……?じゃあ!ハウルは!?」


 満足そうだ。

ミランを彷彿とさせる和やかで陽気な気配を感じた。


 二つ名は……赫黒剣の対だから『蒼銀剣そうぎんけん


『蒼銀剣 ハウル』と『赫黒剣 ナイトライン』


 勿体ないぐらいの名剣二振りを手に持っている……この剣に恥じないぐらいに強くならなければ……!


 ナイトライン君とミランが急かしてきてる気がする……気のせいだよね?


 ナイトライン……君の名前からしてクールな奴だってのは信じてるからな!


 そんな意味のわからないことを言いながら四十二層へ階段を下っていく。


 モンスターが異常に少ないな?

【赫黒剣 ナイトライン】


 名鍛冶師、ハックの力作のひとつ。

闇夜に一閃赫の線の走る黒剣。

この剣は後に〈魔剣〉の名を冠する。


【蒼銀剣 ハウル】


 四十層の守護者、ミラン ダリンの輝石が、剣の中に染み込み、生まれた世界で唯一の事例の剣。

〈魔剣〉と言うよりも、剣聖そのものの一振故に、どちらかといえば〈聖剣〉だろう。

不明な点も多く、まだまだ謎である。

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