冒険者試験 第2回戦
「……どうした?来ないのか?人間!」
両手剣を上に構えてる竜に突っ込めるわけが無い……
「……なら、戦い方を変えますよ」
背中に背負っていた……と言ってもローブで隠れているが、弓を取り出す。
「お、僕の弓の出番か」
弓を持ち、魔力を流す……緑色の矢が生まれる。
「……魔法具……?しかも弓?」
怪しんでいる様子で何よりだ。
「喰らえ!」
矢を撃つ……その矢を剣を横に向ける事で守りきる。
「……軽いな……っ!?」
そう言ってこちらへ向き直るが……もう俺は移動をしている。
ちょうど大剣の見えない部分、下方向から剣を抜き、切り上げる。
こんな感じの死角を突く戦い方、それが俺の戦い方だ。
だが、後ろに飛んでいき、それに合わせて尻尾を凪いできた。
屈んで上手く避ける……ブオンと風音が頭上で鳴る。
「……なかなか、やるようだな、人間」
「……まぁ、そうですかね?」
もう一度、さっきと同じ構えをする。
「貴様が飛び道具を使うのなら、私も使わせてもらう」
大きく息を吸い、何かを貯めている……いや、竜がこの行動からすることといえば1つしかない。
「《竜の吐息》!」
「やっぱりかっ!」
俺を簡単に包み込むような火炎を口から放つ……
「……ほう……まだ、やれていないか」
「……あっぶねぇ……ローブが焼けるところだった」
実際には、端が少し焼けてはいるが、顔の部分は残っている。
「……お前のその剣……ただのロングソードにしては随分と上等だな……その構えから……何をする気だ?」
もう一度、構えを戻す。
「……来たら分かりますよ」
「それもそうだな……なら、喰らうがいい、純血の竜族の猛激を」
その瞬間、彼女が凄まじい速度で飛んできた。
ただの踏み込みだけでなく、尻尾と、羽根でさらにブーストをさせて飛んでくる……が
「目で追えない速度じゃない!」
俺は目や耳みたいな五感と、直感の第六感は野生を上回ると師匠に褒めてもらったことがある。
感のままに、攻撃を避ける。
あの大剣をまるで片手剣か何かのように軽々く振る。
時折伸びるあの尻尾も厄介だ。
だが、俺は弓や剣以外にも、槍、斧、そして、五体に至る様々なものを磨き続けてきた。
剣を地面に刺し、手放し、深く踏み込む。
「何をする気だ!?」
「……喰らってからのお楽しみだ!」
あの構えから出来ることはあるのだが……この攻撃力の前だと少し、いや、かなり成功率が低い。
「……ぬおりゃあ!」
「っぐぁ!?」
腕を掴み、足払いをして宙にうかす。
そのまま、下に落ちてくる勢いに合わせ、地面に強く叩きつける。
「……竜族を舐めるなぁ!」
後頭部に良い一撃が入ったと思ったが……まだまだピンピンしている。
「……耐久が並じゃないな……!」
「どうするんだ?カル」
「斬る!それに限る」
「いや、これで終わりだ!」
そう彼女が言うと……少し、世界が歪んだように見えた。
そして、目の前には赤い竜……おとぎ話の中の生物が、目の前に立ち、俺を睨む。
「……スケールが違いすぎるだろ……!」
そのまま、手も足も出ずにやられてしまった。




