剣魔法
「っつつっぅ!!流石だね!カル!」
「やっぱりお互い同じこと考えてたなァ!ハウルゥ!」
始まった瞬間、爆発するような勢いで肉迫、そして、ぶつかり合う。
「なら!まずは私と剣の勝負と行こう!」
美しい剣を光らせ、構えるとも構えないとも取れる独特な構えをとる。
「あぁ!望むところだ!」
俺も、同じような構えで、赤い剣に黒の刃、今の俺とは目の色を除けば真反対の剣を光らせ、構える。
気分は大会決勝戦。
だってこれで終わってもいいと思えるほどに充実した気分なんだ。
「っふぅー!やるねぇ!私の剣に対応出来てきている!」
「まだまだ本気じゃない癖にぃ!!」
「ははっ!本気を出させて見てよ!」
魔法を使えば、それは出来るかもしれないけど、剣をひたすらに振り続ける。
その非合理的な行動に、ミランは口を出さない。
理由は、俺もまた『剣士』だからだ。
「んっん〜!いい……!実にいい!最高とも言える!
私の剣をここまで止めて!ここまで再現出来ている!
素晴らしい!流石は私の生涯最初で最後の愛弟子!」
弟子になった覚えはないが、教わった覚えはある。
「なら!どうする!?ハウル!!」
「この剣戟を一生続けていたって飽きる気は無いけど……そんなことしてると私の未練は果たされて消えちゃいそうなのよ!
だから!私は1つ、切り札を使わせてもらうわ!
今の時代だと、詠唱が主流みたいだから、私もそれに合わせようかな!」
そう言って、俺を剣で弾き飛ばし、ひとつ時間の隙間が生まれた。
そして、剣を収め、鞘ごと顔の前に持ってきて、額に柄を当て、詠唱を始める。
「『我が剣は時代だ』『我が目にした英雄たちよ』『例えそれが古のものとあろうと』『今一度世界に想起させよ』《剣魔法》」
纏う雰囲気が変わった。
『無』だ。無を纏っている。
ディンの無属性とは違う……本当に、何もかもが無くなっただけだ。
更に続けて詠唱をする。
「『氷のように冷たくて』『だけどもとても優しかった』『遥古の氷魔法の王』『全てをすべし氷の魔王』《剣魔法》《氷魔王 ネーヴェ》!!」
「っつ!?なんだっ!?」
今までに見た魔法の中では非常に異質そのものだ。
巨大な氷山そのものが、俺めがけて倒れかかるような……
氷魔法、存在だけは知っていたが、見るのは初めてだ。
だが、ミランの様子がどこかおかしい
「っ!?何これっ!?寒っ!?冷たいぃ……!?こんな魔法使えるわけない……!!」
そういうと、直ぐに止まった。
「ど、どうした?」
「い、いやぁー……この魔法、こんなに危なかったんだ?
……いや違うか、ネーヴェさんがこの代償を払ってあの魔法を使っていただけかな?」
ネーヴェ!?ネーヴェ……『氷魔王』の?
あの魔王の魔法……なるほど道理で他の魔法と違うわけだ。
「ダメみたい、私にあの魔法は扱えない。
『その水は噴煙からも身を守り』『私の苦戦した者の1人』『異質で強いおかしな騎士』《剣魔法》《流騎士 アンカー》!」
今度は……水?
しかしその水に大した攻撃の意図は感じられない。
ただただ、剣から膨大な量の水が、とどめなく溢れ出るだけだ。
30層の守護者、マイン ウェイパーが大睡蓮魚を読んだ時に少し似ているが?
「いよしっ!今度こそ完璧!」
そういうと、俺に切りかかる。
「っ!?」
だが、最高速をだすその前に、突きで潰す……そう思い、直線に剣を振るう。
が、間違いを直ぐに理解する。
「んんー!いい反応といい反撃、素晴らしいよ、カル!」
仮面の向こうでいい笑顔をしながら、そう言っていることだろう。
剣は簡単に、剣から出る水に巻取られ、120点の受け流しに、さらに30点ほど水が手助けをしたせいだろう。
「……だけど、私には悪手だね」
「っ!」
浅く体を袈裟型に切り裂かれる。
「流石にこれじゃ、終わらないよね?」
剣からあふれでた水が、逆に緩和剤になったのか?
なんにせよ深手では無い、まだ動ける!
「終わらないさ、全然な!」
俺の切り札は切り際が大切だ。
浅い傷なら、このキメラの体のおかげで大したことは無い、時期に元に戻る。
「やっぱり君は最高だ!!」
嬉しそうな顔をしてくれる……!




