冒険者試験 第1回戦
試合が始まると同時に、白いドーム状の何かが舞台を包む。
『……あれって何か知ってる?リョク』
「あれは……あぁ、あれは『実戦型安全訓練魔法具』だよ、あの中で死んでも、あのドームの外に転送されるだけなんだ」
『なるほど……確かに、安全に実戦形式の戦いが出来るわけね』
「そういう事……お、あの子やるなぁ」
リョクがそう言ったので戦いに目を戻す。
あの獣人の彼の戦い方は……突進と、そこから避けた所に拳を振るうと言う、シンプルな戦い方だ。
黒魔法使いの彼女は……魔道具の杖を『棒術』のように扱い、彼の範囲外から上手く攻撃をしている。
黒魔法も、何度もかけているようで、足が遅くなったり、効果は様々だ……
「……疲れてきてるな」
「両方とも、だね」
「……だね」
何度突進しても当たらない、何度棒で突き、叩いても倒れない。
彼らの相性は、最悪だろう。
だが、戦いには終わりが来るものだ。
最後は、足がもつれ、そして、その隙を付いてはね飛ばした彼の勝利だ。
「……そこまで、勝者、ラングさん」
あの獣人の彼の名前は『ラング』と言うのか……
その声を聞いて、ラングさんは、嬉しそうな顔をしたあと
「うおぉぉぉ!」
と雄叫びを上げ、勝利を噛み締めている。
黒魔法使いの彼女の方は……少し悔しそうな顔をしている。
「お嬢ちゃん!あんた名前は!?」
「……グエルよ……ラング、あなた強かったわ……」
「いやー!俺も焦ったよ!黒魔法使いがあんなに動けるなんてな!!」
「師匠からの教え……いざという時に動けないようじゃダメだって」
「なるほどな!まぁ、ありがとう!いい勝負だった!」
「……こちらこそ」
2人が握手を交わす、会場の人達が拍手をする。
俺もそのひとりだ……竜の彼女は腕を組んでいるだけだ。
「お次は、64番と66番の勝負です」
わかってはいたが、俺と、この竜の女の子が戦うようだ。
とりあえず、いい勝負にしたいものだ……滅多に戦えないしね。
「頑張れ、カル」
『ありがと、リョク』
応援してくれるリョクに礼を言い、手を差し出す。
「よろしく、お願いします」
「……ふんっ」
その手は取られることなく……背中を向けて行ってしまった。
その手で剣を握り、構える。
「……なんだ?あの構え」
そんな声がどこからか聞こえた気がした。
剣の先を斜め下に向け、手首は首元まで持ってくる……これが一番、自分に合う。
それを見た彼女は少し訝しげな顔をして……大剣を大きく上へ構える。
「第2回戦、開始です」
あのドームの魔法具はランバート作です。




