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黒髪赤目の忌み子は英雄を目指しダンジョンの最奥を目指す  作者: 春アントール
英雄とは、誰よりも優しくてカッコイイ人だろう
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魅力に満ちた吸血鬼【カルカトス】

「……さぁ!!お次の勝負は!魔王軍四天王が一人!『純愛のミリア』!!

対するは!大躍進!カルカトス!!!」


「初めまして、カルカトス君?」


 紫色の髪は、むしろ輝き、赤い目は私を強く見つめる。

品定め……とは少し違う?


 だが、何よりも困ること……それは、彼女の服装がとてつもなく際どいことだ。


 まことに男ウケは抜群だろう……あれだ、悩殺ってやつだな。


「……はい、そうですよ」


「ふふっ、目をそらさないっ!」


 グイッと頭を捕まれ、正面を向けさせられる。


 すごい力だ……この細い腕に、こんな腕力が……?


「っ!……な、なんですかっ!?」


 彼女の顔が近い……美しい女性の顔が、息がかかりそうなぐらい近くにあれば、男ならば絶対に平常心は保てない。


「いやぁー、今のところ戦った相手の血、吸って来たけど余り美味しくなくてね……君からは随分といい匂いがする………楽しみにしてるよっ?」


 耳元で期待の言葉を囁かれる。


 耳に当たる吐息がくすぐったく心地いい。


「さぁ、やりましょう?ルールはデスマッチ……一対一ならこれが一番わかりやすいでしょ?」


「……えぇ、構いませんよ」


 だが、さすがにこんなに綺麗な女性を全力で殴り飛ばせるほどろくでなしでは無い……頑張ろう。


「賭けは……ま、いいわよね」


「そうですね……やりましょう」


「それではっ!試合開始っ!!」


「……あら、意外ね?そっちから攻めてこないんだ?」


「まぁ、そうですね……」


「なら、私から行こっかなぁ〜?」


 吸血鬼……戦う前から、調べ尽くしている。

もう1人の竜についてもだ。


 対策はほぼほぼ完璧と言えるだろうな。


 その油断のなさが、私に動揺を生ませた。


「せーの………っふーー!!」


「んなっ!?」


 爪をのばし、腕の当たりをかき切る。


「あなたのために今まで隠してたからね……先輩はあなたに負けたみたいだし?」


 誰のことだ!?


 そう言葉を発する前に、その掻き傷のある腕を振るい、血を巻き散らかす。


 意味不明の言動が私に混乱を生み、僅かなフリーズ……飛び散る血を避けることは出来ない。


「……かかったわね『私と貴方を結ぶ運命の赤い糸』『ないのなら作ればいい』『愛する人を離したくない』『愛してる』《血の追跡者(ブラッドストーカー)》」


「……こ、固有スキル……!?」


「そ……あ、いいこと教えてあげる……私の固有スキル、発動条件はね『私があなたに血をつけて』『あなたも私に血をつける』ことよ」


「俺の血?……いつ?」


「さぁね?それよりもさ、私のちょっとしたお願いいいかな?」


「……なんですか?」


 こっちは固有スキルの発動のせいで気が気でないのに。


「仮面、外してくれない?」


「……は?……いや、いいけど」


「ありがと!……ふへへっ……いい顔……これで私のコレクションが増える……へへっ」


 なんか変な笑い方をするな……?


「止めてごめんね?やろっか……カルカトス君?」


 そう言うと、距離を詰め、私の目の前に現れる。


「!ははっ!よく反応したね!」


 両の手を掴み合い、少しの腕力勝負が始まる。


「恋人繋ぎなんて照れちゃうね?」


「恥ずかしいこと言わないでもらいたい」


 顔がまた近づく。


 そのまま、更に近づき、顔の横を避け、首元へ顔は進む。


「あっ!?」


 忘れていた……このバカ野郎!

吸血鬼、その最大の特徴はその名の通り『吸血』


「いただきます」


 ズプッと彼女の歯が首元に沈む。


 ヌルッとした温かいもの……彼女の舌が、溢れ出る私の血を舐めとる。


「んっ!?んんっ!!!」


 よく分からない声を上げている。


 と思いきや、いつの間にか『カメラ』を持ち出していた。


「……っ!はぁ……はぁ!……はぁ!!」


 息が上がる、心臓の鼓動が破裂しそうな程に大きくなる。

顔に血が上り赤く上気する。


 吸血鬼は、吸血の際、牙から傷口に流し込む麻痺毒。

そして、吸血の際に血を飲んだ事で、唾液に……その、所謂……媚薬成分が含まれる。

あと、傷が塞がりにくくなる。


 パシャパシャと、シャッター音が私の思考に水を差す。


「……へへっ、やったぁ……その顔……もーらいっ」


 満足気な声と、収まらない勢いの吸血。


 話を戻そう


 なぜそんな成分が含まれるか。

心臓の鼓動を早め、体の血の周りを加速させるためだ。


 だが、この成分は……吸血する本人にも影響される。


「……っはぁ……あぁ……美味しい……初めて食べる味……もう……1口……!」


 そして、この快楽に抗うのは、吸血鬼も、人も、不可能に近い。


 故に強く、必殺の一手とも言える。


「……もっと……もっとぉ……」


 いつの間にか、私は押し倒されていたようだ。

地面がすぐ隣に見える。


 あと、色々反応している。

身体に触れる和らい感触と、甘い匂いとそれに混ざる血の匂い。

背徳的で抗いがたいその魅惑に逆らったり出来ない……したくない。


「……美味しい……あぁ……ははっ……」


 刺さった牙がずるりと抜け、そのまま隣の地面に崩れ落ちた。


 首元を抑え、痺れる体にムチを打ち、立ち上がるのは俺だけだ。


 彼女は……幸せそうな顔で寝ている。


「えぇーーー!?ちょ!?ミリアちゃん!?」


 ラジアンも驚いているようだ。


「ら、ラジアンさん、出来れば解説を」


「あ、はい、簡単に言うと……嬉しくて、嬉しすぎて気絶しましたね」


「……はぁ!?」


「……いや、ほんとうに申し訳ない……カルカトス選手の血が美味しいみたいで……その……美味しいものを食べたら、言葉が出ない、そんな感動におちいるでしょう?」


「あ、はい」


「それの強化版……そのままに身を委ねて、お腹いっぱい、私寝る、そんな感じでしょうかね?」


「……な、なるほど……まぁ、僕としてはこの生誕祭で不埒な行為が行われるのを見なくて済んだのは幸福か不幸か……なんでもありません、勝者、カルカトス選手です」


 拍手は今まででいちばん少ない……私も、観客も、呆れた顔になっている。


 仮面をつけ直し、誰にも見られていないことを確認して、私は会場の真ん中で少し残念がる。


「……生殺しじゃないか……………!」


 誰にも聞こえないボリュームで、そう小さく叫ぶ。


 収まらない動悸、昂る気持ち、独り歩きするこの快楽。


 そして、心の底には『もっと血を吸って欲しい』というよこしまな思いさえある。


「………複雑だ」


 まぁ、勝ちは勝ちだ。

そう言い聞かせ、その日は試合も見ずに高まる思いを抑えようとした

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