旅立ちの日
「……それじゃ、行ってきます、皆」
「僕も行ってくるよ……じゃあね、皆」
各々皆と挨拶を交わし、そして、約5年ぶり……ネルカートの街のタイルを踏む。
「さて、まずはどこに行くんだ?冒険者登録に行くのか?」
『いきなりそれだと……ほら、周りのみんなの目線を見てよ』
周りの視線は俺に釘付けだった……もちろん、悪い意味でだ。
時に奇っ怪なものを見る目で、恐れて、物珍しそうにもしていた。
「確かにね……なら、どこに?」
『防具屋かな?冒険者の中には素性を隠すために、仮面やローブをつけている人も少なくは無いからね』
差別の存在する中、そういった冒険者は少なくは無い。
上位の冒険者にも、探せば両手の指では数え切れないほどにはいるものだ。
それに、顔を隠せれば、素顔での奇襲、視線を隠すなど、普通に使えることもある。
「……なら、まずは街の地図を見ようか」
大きな板に
『命栄える国 ネルカート』
と書かれていた
その下にはこの国を上から見下ろした大きな地図。
そして、ネルカートの最大の特徴は……これだ。
「……あった、『大迷宮』!」
つい最近……本当につい最近突如現れた『大迷宮』
俺が森を出ようと思った理由は……これだ。
英雄は皆、何かしらの偉業をなしとげている。
それは魔王、ドラゴン討伐、誰かを、どこかの国を救った。
街を守り抜いたり、ただただ強いもの……そして『迷宮を初めて攻略したもの』。
その全ては名誉や、敬意か、はたまた労いの1つなのか、前例を見ない物を成し遂げたもの、それを人は『英雄』と称える。
「……嬉しそうだな、声に出てるぞ」
『そ、そうだな……少しばかり興奮していたようだよ
さぁ、防具屋に行こ!』
「そうだな」
ニヤニヤしながら見てくるリョク。
【防具屋 パック】
街ゆく人々に『おすすめの防具屋は?』そう聞くと、初心者から熟練のものまでが口を揃えてこう言う。
『防具が買いたいならパックに行きな』
質問したものが初心者なら、手を引いて連れていってくれるだろう。
それほどまでに、この店は人気だ。
万年森にいた俺ですら知っている事だ。
青い看板の【防具屋 パック】に入るその直前、横にある赤い看板の【武器屋 ハック】に、少し目を向けた後、店内に入る。
ドアが『チリンチリーン』と景気のいい音を鳴らしながら中に入れば……冒険者らしき様子のものがいっぱいいた。
それと同時に、腹の底に響くような
「いらっしゃい!」の声を聞く
今までの2人とは違い、本当に冒険者ですから、こう言う話もあります。




